第15話 シロ先輩のおうち訪問

「着いたわ。ここよ」

「ほわぁ」


 今日は初めてシロ先輩のおうちにやってきた。


 シロ先輩の実家は大手財閥の北条グループなだけあってさすがお金持ち。家の大きさが半端ない。私の貧困な語彙力では言い表せないけど私の「ほわぁ」という気の抜けた反応で察してほしい。


「おかえりなさいませ。美白様」


 私たちを出迎えたのは透き通った青色(あとで本人にコバルトブルーだと教えてもらった)をしたメイド服姿の女性。


「ただいまシリル。紹介するわね。こちらが――」

「うわーかわいい!」


 突然メイドさんに抱きしめられる私。


「シリル……?」

「ハッ! 申し訳ございません。想像以上のかわいらしさについ我を忘れてしまいました」


 この人大丈夫なのか?


「こほん。では改めまして。私は北条家のメイドを務めていますシリルと申します。年齢は美白様と同じ18。身長は……」

「ストップシリル。あなたどこまで自己紹介するつもりなの?」

「もちろん私のすべてです! あ、ちょっと訂正します。出身国以外のすべてです!」


 この人本当に大丈夫?(二度目)


「ごめんなさいね。みいちゃん。いつもはもっとしっかりしてるんだけど」

「ほんとですか?」

「これでもうちの優秀なメイドなのよ。私の専属に任せられるほどのね。でもまさかここでシリルの意外な一面を見ることになるとは思ってなかったわ」


 そう言ってシロ先輩はため息をつく。どうやらシリルさんが普段はしっかりしているというのは嘘ではないらしい。


「シリル。あなたの自己紹介はもういいから、みいちゃんを客間に案内してちょうだい」

「物足りないですが、お嬢様に言われてしまっては仕様がありませんね。ではみすず様、私についていらしてください」


 ☆☆☆


 客間でシリルさんが淹れてくれた紅茶(めっちゃ美味い)を飲んでいると、シロ先輩が私服姿でやってきた。


「みいちゃんお待たせ」

「シロせん――うわっかわいすぎかよ」


 思わず心の声が口からもれてしまった。でもそのくらいシロ先輩の私服姿は破壊力がある。


 ちなみに今のシロ先輩の格好は白のワンピースだ。艶やかなシロ先輩の長い黒髪が映えて、控えめに言って素晴らしい。


「どう? みいちゃんから見て今の私ヘンじゃないかしら?」

「全然ヘンじゃないです!」

「ありがとう。みいちゃんにそう言ってもらえるだけで嬉しさも万倍ね」

「あはは。それはさすがに大げさですよー」


 そんな風に会話しながら私は自然にソファーに腰かけたシロ先輩の股の間におさまる。


 うむ。今日もシロ先輩のおっぱいは絶好調だ。


 後頭部に感じるシロ先輩の感触を楽しんでいると、先ほどからずっと黙っていたシリルさんが口を開いた。


「…美白様とみすず様っていつもそんな感じなんですか?」

「そんな感じとは?」

「無礼を承知で申し上げますが、私から見て今のおふたりはただのバカップルにしか見えません」

「「えっ?」」

「まさかの自覚なし!?」


 いや、だってねえ。私とシロ先輩にとってはいつも通りだし。


「正面から抱き合っているわけじゃないからバカップルではないと思います」

「そうね」

「ふたりのバカップルのハードルが高い!?」


 シロ先輩と正面から抱き合う……ダメだ。想像するだけで顔から火が噴き出そう。


「美白様もみすず様も初心なのかそうでないのか……。ま、でも見ている分には楽しいからいいか。欲を言えば私も混ざりたいけど、しばらくは様子を見ることにしよう」

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