第13話 シロ先輩の自己嫌悪

 ああ、私はなんてことをしてしまったのだろう。


 初めてのお泊り、それもみいちゃんのお義母様が気をきかせてせっかくふたりきりになれたのに、まさか暴走してしまうなんて。


 ちょっと腕をなでるだけのつもりだったのに、みいちゃんの柔肌に触れた瞬間歯止めがきかなくなった。もし途中で正気に戻らなければ私はみいちゃんを性的に食べてしまっていただろう。


 みいちゃんは私を嫌ってはいない…はずだ。そうだと信じたい。でも私たちはまだ先輩と後輩の間柄でしかない。だから欲望に身を任せて一線を越えるなんてもってのほか。どうせ超えるのなら、私とみいちゃんが両想いだとはっきりしてからにしたい。


「そう思ってたのに現実はこのざま。みいちゃんに嫌われたら私もう生きていけないわね」


 みいちゃんが風呂から上がってくるまで私は気が気でなかった。


 みいちゃんに軽蔑の目で見られたらどうしよう。「シロ先輩。私の半径1メートル以内に近づかないでください」なんて言われたら、私――


「シロ先輩お待たせしましたー」


 みいちゃんの湯上り姿もそそるわね…じゃなくて。


「ねえ、みいちゃん」

「なんですか?」

「さっきのこと、その、怒ってない?」


 私らしくない歯切れの悪い聞き方。だけどみいちゃんは気にした様子もなくあっけからんと答えた。


「さっきのこと? ああ、別に怒ってないですよ。びっくりはしましたけど」

「ほんと?」

「シロ先輩に触られるのは嫌じゃないですから」


 そう言ってみいちゃんは私の隣に腰かけた。どうやら怒ってないというのは本当のことらしい。みいちゃんの心の広さに感謝ね。


「あ、でもシロ先輩の気がすまないというのであれば、今度は私がシロ先輩をなでまわしましょうか?」

「えっ?」

「私実はさっきからシロ先輩の珠のお肌に触ってみたくて仕方なかったんですよね。うわ、シロ先輩のお肌すべすべだぁ」


 みいちゃんが私のむき出しの腕をなでなでする。なんだかみいちゃんの様子がおかしいわね。いつもはこんなことしないのに。


 それにしても肌を直接なでられるのってこんなにくすぐったいものなのね。でも嫌な気はしない。それどころか変な気分に――


「ちょっとみいちゃんストップ。これ以上はまずいわ」


 さっき反省したばかりなのに風呂の二の舞は避けたい。


「もういいんですか?」


 みいちゃんその上目遣いは反則よ!


 誘惑に負けそうになるも必死に理性を押し止める。


 こうなったら何か萎えるものを頭に浮かべましょう。お父様の顔…よし、萎えた。


 私は私の腕をなでていたみいちゃんの手を優しくつかみ、そっと下に降ろす。


「名残惜しそうな顔をしてもダメよ。お触りタイムはおしまい」

「えー」


 それから私とみいちゃんは寝落ちするまで語り合った。


 一緒におしゃべりして遊んで甘やかして。


 今はまだこのくらいの距離感で十分。でもいつか…高校を卒業して責任を取れるようになったら、そのときは……。

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