第10話 ポッキーゲーム

「みいちゃんポッ◯ーゲームしましょう」

「なん…だと…」


 おっといけない。あまりの衝撃にストロベリー化してしまったよ。


「シロ先輩。ポッ◯ーゲームがどんなゲームなのか理解してます?」

「理解してるわ。◯ッキーを両端からどんどん食べ進めるゲームでしょ?」


 そう言ってシロ先輩は胸の谷間からポ◯キーの箱を取り出す。


「さてみいちゃん。さっそくやりましょうか」


 ちょっと待って。いきなりすぎてまだ心の準備ができてないんですけど。


 …あれかな。シロ先輩自分からキスする勇気がないから、ゲームにかこつけてキスしちゃおうって算段かな。


 シロ先輩の卒業式の日に私がシロ先輩に告白されたのは記憶に新しい。


 返事はまだ保留のままだけど、その日からシロ先輩はさらに私をドロッドロに甘やかしてくるようになった。有り体に言えば私へのアプローチを増やし始めた。


 それに対抗してむっちゃんも私へ猛烈にアタックしてくるようになったから私の理性は毎日悲鳴をあげている。まあうれしくないと言ったら嘘になるんだけどね。


「みいちゃんまだ…?」


 シロ先輩がポッキーを口にくわえて私に突き出す。普段は聞けないシロ先輩の甘え声とキス顔のコンボに私はゲームを始める前から自分の敗北を悟った。


「じ、じゃあ失礼して」


 大丈夫。たとえこのゲームで口づけすることになったとしても、それはただの事故だ。そう、ただの事故……。


 私の考えが最低なのはわかってるけど、私はシロ先輩もむっちゃんも両方欲しい。ふたりとも失いたくない。だからもしむっちゃんに今回のことがバレたとしても、私は事故で押し通すつもりだ。


 そんなことを頭の中で考えつつ無我夢中でポッキーを食べ進めていく。


 シロ先輩の唇まであと数センチ…。


「やっぱりダメね」

「んぁっ?」


 私とシロ先輩の距離がゼロになろうとしたところでシロ先輩がポッキーから口を離した。


「シロ先輩どうして…?」

「だってフェアじゃないもの」


 そう言うやいなやシロ先輩はスマホを取り出しどこかに電話をかけ始めた。


「もしもし。今暇かしら? …ああ、もちろん一緒よ。そんなに大きな声を出さないでちょうだい。だからあなたを誘ってあげてるのよ。え、上から目線がムカつく? そんなのはどうでもいいから早く来なさい」


 それから約30分後にやって来たむっちゃんは汗だくで息を荒らげていた。


「ハァ、ハァ、疲れた……」

「あら。陸上部のエースが聞いて呆れるわね」

「うる…さい…なあ、もう。歩いて1時間の距離を全力ダッシュしてきたんだ。疲れない方がおかしい」

「お疲れ様。ほら、待っててあげるから早くシャワー浴びてきなさい」

「言われなくてもわかってるよ。みすずっちごめん。シャワー借りるね」

「あ、ちょっと待ちなさい」

「なに?」

「どうせなら3人で一緒に入りましょう」

「…ボク時々白美が何を考えてるのかわからなくなるよ。敵に塩を送ってどういうつもり?」

「別に。ただ私も汗が気持ち悪くなってきただけよ」

「この部屋クーラー効いてるのに?」

「……さあみいちゃん。こんなひねくれものなんて置いてシャワー浴びにいきましょ」

「あ、待て! ボクを置いていくな~」


 この後私たちは洗いっこして、それから3人で仲良くポッキーを食べさせあったのだった。…口ではなく手を使ってだけどね。


 私の中で結論が出るまでキスはお預けです。

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