第7話 親友とデート(みすず視点)
テスト勝負に負けた私は親友と日曜に遊びに出かけることになった。
ついでにこの日はシロ先輩と会うことを禁止されてしまった。親友は「ボクとデートするときぐらい他の女のことは忘れてよ」と言ってたけど冗談……だよね?
まあシロ先輩と会えないのは残念だけど、久しぶりに親友と遊べるのが楽しみじゃないと言ったら嘘になる。この際割り切って思いっきり楽しむとしますか。
私は「よしっ」と気持ちを切り替えて待ち合わせの場所に向かう。そして到着。現在時刻は午前8時半。待ち合わせの時間は9時だからちょっと早く来すぎた――
「よっみすずっちおはよー」
「……おはよ」
親友はすでに待ち合わせの場所にいた。
「むっちゃん。どれくらい待った?」
「あはは。今来たところだよ」
絶対に嘘だ。なぜなら
私の親友こと
そんな彼女の親友である私はさぞかし女の子たちに敵視されてるかと思いきや、なぜか逆に可愛がられている。私のようなちんちくりんな女じゃ敵にすらならないってことか。
現に私が近づくと、親友に群がっていた女の子たちは微笑ましそうな表情で私の方を見て、親友から離れていった。
「フフフ。彼女たちにはみすずっちがいかにかわいいかしっかり
「なにやってるのさ」
どうやら私が敵視されていないのは親友のおかげらしい。
「ところでみすずっち。さっきは久しぶりにボクをむっちゃんって呼んでくれたよね?」
「あっ」
「ねぇみすずっち。高校に入学してから全くボクの名前を呼んでくれなくなったけど、やっぱり卒業式の日のことが関係してるの?」
私がむっちゃんを頑なに親友と呼ぶのには訳がある。
時は数ヵ月前に遡り、私は中学の卒業式の日にむっちゃんに告白された。「ボクはみすずっちが恋愛的な意味で好きだ。ボクと付き合ってほしい」とドストレートに好意を伝えられたときは驚いたし正直言って嬉しかった。
でも私は告白を断ってしまった。その罪悪感と、むっちゃんはあくまで親友でありそれ以上でもそれ以下でもないと自分に言い聞かせるため私はむっちゃんを親友と呼んでいる。
「…やっぱりそうだったんだね。こんなギクシャクした関係になるんだったらボクは想いを秘めておくべきだったのかな」
胸が痛い。キリキリする。
私がむっちゃんのことを名前で呼ばなくなったのは単なる私のエゴだ。それがこんなにもむっちゃんを傷つけていただなんて。全然気づかなかった。いや違う。私は現実から目を背けていたんだ。
意を決して私は口を開く。
「むっちゃん。私ね、むっちゃんに告白されたときは本当は嬉しかったんだよ」
「え……」
「想いには応えられなかったけど、むっちゃんの純粋な好意は私の胸を暖かくした」
「……」
「でも私はこの先むっちゃんとどう接していけばいいのかわからなくなって、それで……」
沈黙が続く。
やがてむっちゃんは私の手をとり、笑みを浮かべてこう言った。
「そっか。ボクはみすずっちに嫌われたわけじゃなかったんだね」
「私がむっちゃんを嫌いになれるはずがない」
「それが聞ければ十分だよ。さて、結構時間経っちゃったし早くデートに行こうよ」
「デート?」
「ボクにとってはそうなの! みすずっち的には友達と遊びに行く感覚なんだろうけど……」
「その、ごめん」
「謝らなくていいよ。あ、そうそう。言っておくけど、ボクはまだみすずっちのこと諦めてないからね」
「えっ?」
むっちゃんと仲直りできたのはいいけど、私今日彼女に攻略されるんじゃないだろうか。
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