第6話 親友とテスト対決

「シロせんぱ~い」

「きゃっ」


 とある日の放課後。

 シロ先輩の姿を見るやいなや私はシロ先輩のおっぱいに飛び込んだ。


「みいちゃんどうしたの?」

「実は……」


 私はシロ先輩に説明した。親友と来週から始まる期末テストで勝負することになったこと。負けたら互いに勝者の言うことを聞くというルールで。


「なるほど。ちなみにその親友さんは頭はいいの?」

「毎回オール90点以上を取るくらいには……」


 対する私は平均よりちょっと上が関の山。90点以上なんて星蘭学園に入学してからは一度も取ったことがない。さすが名門女子高なだけあってテストのレベルが高いんだよね。


「……そ、その勝負やめておいた方がいいんじゃないかしら?」


 いつも私をだだ甘やかしするシロ先輩でさえこの反応ですよ。どれだけ私が無謀な挑戦をしようとしてるかがわかる。


「そもそもどうして勝負することになったの?」

「それは――」


 言えない。私がふともらした「シロ先輩と同じ大学に行きたいなー」という一言を聞いた親友が言った「え、みすずっちの成績じゃ無理でしょ(笑)」の言葉にカッチーンときて勝負することになったなんて。


 ちなみにシロ先輩の第一志望は日本最高峰の東方大学である。確かに親友の言葉は一理あるけどだからこそムカッ腹が立った。


「ま、まあ勝負のきっかけなんてどうでもいいじゃないですか。それよりシロ先輩、私に勉強を教えてください! 親友をギャフンと言わせたいんです!」


 星蘭学園トップのシロ先輩に一週間付きっきりで勉強を教えてもらえれば少しは勝算があるはず。


 そんな私の打算に満ちたお願いにシロ先輩はしばらく悩む様子を見せたが、最終的には了承してくれた。


 よし、これで親友に勝つる!


 しかしこのときの私は失念していた。名選手だからといって名コーチになれるとは限らないという非情な現実を。


 結論から言うと、シロ先輩は天才肌で人に物事を教えるのに全く向いていなかった。


「だからシロ先輩なかなか首を縦に振らなかったんですね……」

「本当にごめんなさい!」


 結局勉強は私ひとりですることに。でも勉強は教えられなかった代わりにシロ先輩がいろいろサポートしてくれたので、いつもよりは集中してテスト勉強できたように思う。


「…で、申し開きはあるかな? みすずっち」

「ありません」


 返却されたテスト用紙をヒラヒラさせて親友が私を煽る。


 うん、いつもより集中できたからといって、たった一週間じゃオール90以上の化け物には敵いませんよ。


「まあボクには勝てなかったけど、一応前回よりは成績上がってるじゃん。勉強がんばったんだね」


 そう言って親友が私の頭を撫でる。悔しいけど親友の撫でテクニックはシロ先輩に負けず劣らず一流だ。思わず頬が緩んでしまう。


「さて、じゃあボクが勝ったことだし何をお願いしようかなー」


 楽しそうにあーでもないこーでもないと考えを巡らせる親友。


 根は優しい彼女のことだから非道な命令はしないだろうけどやはり不安だ。


「…よし、決めた! みすずっちには今度の日曜日ボクとデートしてもらおう」

「え、そんなことでいいの? それならわざわざ勝者の権利なんて使わなくても…… 」

「だって最近のみすずっちは休日も北条先輩と一緒にいるじゃん。寂しかったんだから」


 とは言っても親友も休日は部活動で忙しくしてるのだからお互い様だと思うんだけど。


「今度の日曜は久々の部活動オフの日だからさ。たまには小中時代のようにふたりっきりで遊びたいなー。なんて」


 ボクっ娘系で基本的にサバサバしてる親友だけど、こういったいじらしい面をふとした拍子に見せるのは反則だと思う。

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