第3話 マフラー
「うぅ、最近肌寒くなってきましたね」
「そうね」
私とシロ先輩は現在学校から帰宅中。
11月に入ってから急に寒さが増してきた。私は寒いのが苦手なので正直勘弁してほしい。
「なるほど。だからもうマフラーしてるのね」
「はい。さすがに早すぎますかね?」
ちなみに私がこの時期にマフラーをしてくると––
「あらあら。みすずちゃんは本当に寒がりね。by母」
「みすずっち。さすがに11月にマフラーはないよ……。by親友」
大体こんな反応が返ってくる。
だってしょうがないじゃん。寒いの苦手なんだもん。
「私は別にいいと思うわ。寒さの感じ方なんて人それぞれだろうし」
「ですよね!」
よかった。これでシロ先輩にまで否定されたら私ショックで寝込んでたかもしれない。
「でもちょっと悔しいわね」
「え、なにがですか?」
「だって私の手のぬくもりだけじゃみいちゃんを寒さから守れないってことでしょ?」
そう言ってつないだ手を持ち上げるシロ先輩。
「つないだ手を通してみいちゃんに私の生命エネルギーを送れればいいのだけどね」
「そんなことできるんですか?」
「ちょっとやってみるわね。むんっ」
シロ先輩が私の手をギュッと握りしめる。どうでもいいけどシロ先輩の「むんっ」かわいすぎかよ。
「どう?」
「あー。肌寒さは変わらないですけどなんだか体がポカポカしてきましたね」
もちろん嘘である。だけど心の方は実際にポカポカしてきたのでよしとしよう。
「そうだ。みいちゃん、マフラーを一旦首から外してそれから端っこの方を私に渡してくれる?」
「? ……はい」
言われたとおりにする。うっ寒っ。
「ありがとう。ここをこうしてこうして……こう。よし、できた」
シロ先輩がやったのは、ひとつのマフラーをふたりで使ういわゆるペアマフラーというやつだ。
マフラーの長さがふたりで使うには中途半端な長さだったため、お互いの体が密着する形になる。
「ふふ。11月のマフラーもなかなか乙ね」
これ11月とか関係ないんじゃあ…と言いかけたのをグッとこらえる。なんにせよ暖かいのは間違いない。体も。そして心も。
ちょっと早すぎるかもと不安だったけど、マフラーしてきて本当によかった。明日学校で親友に自慢しよーっと。
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