閑話 とあるカフェ店員の独白

 私の働いてるカフェ・catwalkはパフェが名物の喫茶店です。


 近くにはなんと名門女子高の星蘭学園があり、そのためそこの生徒もよくうちを利用してくれています。まあかくいう私も星蘭学園の生徒なんですけどね。


 私の通う学園には有名人がふたりいて、ひとり目は生徒会長の北条白美さん。


 彼女は日本有数の財閥である北条グループの令嬢で、頭脳明晰スポーツ万能、さらには女優さえ裸足で逃げ出すほどの美貌の持ち主と、もうすごすぎて嫉妬心すら起きません。


 そんな北条さんですが、彼女の唯一の欠点と言えるのが全く動かない表情筋です。


 よく言えばクールビューティー、悪く言えば無愛想。


 そのため(今思えば失礼な話ですが)私は北条さんのことを無機質な人形のように思ってました。と同時に畏れてもいました。


 憧れはするけどもどこか遠い存在。それが北条さんに対する星蘭学園の生徒全体の共通認識だったように思います。


 だった。そう、過去形です。今は違います。かつて私が畏れていた北条さんは、その実ただのかわいい女の子だったのです。


 そのことに気づかせてくれたのは、我が学園の有名人その2・猫山みすずさんです。


 明るい茶髪のショートカットで、猫耳を彷彿とさせる不思議な髪型をしたかわいい女の子。童顔かつ低身長なので(これまた失礼な話ですが)私はみすずさんを初めて見たとき小学生と勘違いしてしまいました。


 まあそれはさておき、どうして一見普通の女の子であるみすずさんが我が校で有名なのかというと――


「みいちゃんアーン」

「アーン」


 ふぉおおおおっ! これですよこれ!


 見てくださいよあの緩みきった顔を。一体無表情がデフォとはなんだったのか? 北条さんはみすずさんと一緒にいるときだけまるで別人のように表情筋が仕事をします。


 そう。どうしてみすずさんが有名なのか。それは彼女だけが北条さんの様々な表情を引き出せるからです。


 普段は全く変わらない表情が、みすずさんがその場にいるだけでコロコロ変わる。その様子を見て、変な言い方にはなりますが、私は初めて北条さんが自分と同じ人間であることを知りました。


「それにしても尊い……」


 先ほどはみすずさんを一見普通の女の子と言いましたが、はっきり言って彼女の顔面偏差値はかなり高いです。それこそ隣に北条さんの美貌があってもかすまないくらいには高い。


 つまり何が言いたいのかというと、クール系美女×ロリ美少女は最高です!


 …おや? 北条さんの手の動きが止まりましたね。一体どうしたのでしょうか?


 ってえぇええええええっ!? まさかの間接キッス!!?


 あまりの衝撃に一瞬時が止まりましたよ。お盆を落とさなかった私を誰か褒めてください。


 ガシャンガシャンという音がしたと思ったらどうやら周りのお客さんがスプーンやらなにやらを落としてしまったようです。


 そんな周囲の異常な様子もなんのその。気にせず見つめ合う北条さんとみすずさんに私は心の中でエールを送ったのでした。


 これからもどうぞお二人のイチャラブを私に見せてください。




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