第1話
理紗は学校の机に突っ伏していた。
あまりにも早い起床だったので、どうせならと早めの登校をしたのである。
これも全部あの夢を見たせいでこうなっているのだけれど……。
そもそもどうしてあんな夢を見てしまったのか、心当りがないわけではなかった。
「どうして今更帰ってきたのよ……」
ポツリとそう呟き、昨日のことを思い出す。
昨日は始業式があり、高校二年に進級した初日だった。理紗の学校はクラス替えは存在せず、3年間同じクラスで学年だけが上がるシステムになっている。そのため学年が上がったからといって何か大きく変わることはなかった。だから理紗は普段と同じように学校に登校し始業式に出席した。しかし始業式が終わり教室に戻るといつもとは違ったことが起きたのであった。
なんと転校生がやって来たのである。
『はじめまして、
転校生の言葉だ。
高校で転校生が来たということでみんな驚いていたが理紗は違うことで一人驚いていた。
《
その名前は理紗の初恋の人と同じ名前だった。最初は理紗も同姓同名の別人? と、戸惑い疑ったがそんな疑いもすぐに晴れることとなる。
彼は自己紹介を終えると私の後ろの席に座り荷物を置くと、私の肩をトントンと叩いて一言こう言ったのだ。
『もしかして、りっちゃん?』
《りっちゃん》
それは理紗が昔、初恋の人に呼ばれていた愛称だ。だから理紗はそれを聞いた瞬間確信した。目の前にいる彼、月城悠馬は私の初恋の人だ、と。
ただ私はその時、回りにはクラスのみんながいることを思いだし『ひ……人違いじゃない?』とそっぽを向いて答えた。
恥ずかしくなったからである。
しかしそんな私を見て何故か彼はクスクスと笑って『そっか……ごめん』と言って席に座り直した。
その後彼は転校の手続きやら話があると、聞いてもないことを私に話してから教室を去っていた。
これが昨日起きた出来事である。
そもそも彼とは五年前に疎遠になって以来、一度も会ったことはなかった。しかし、そんな彼が昨日突然何の前触れもなくいきなり理紗の前に現れたのだ。
そんなの意識もするし、彼のことを考えてしまっても仕方がない。
あんな夢を見たのだって彼のせいだろう。
ただ理紗には気がかりなことがひとつあった。それは今の彼への自分の気持ちである。疎遠になってから五年間、ずっと彼のことを想い続けてきたかと聞かれればそんなことはなかった。理紗だって一人の人間であり、女の子だ。当然心変わりもするわけで今は別に好きな人がいた。しかし突然目の前に現れた彼を見て自分の気持ちが分からなくなってしまったのである。
「はぁ……」
思わずため息をつく。
それから理紗は彼のことを考えることをやめ、ボーッと窓の外を眺めていた。考えたら考えただけ自分の気持ちが分からなくなってしまうと思ったからである。
しかし、彼のことを考えるのをやめたからといって理紗のモヤモヤした気持ちは無くならなかった。
――私、どうしたらいいんだろう……
理紗は内心でそう呟いた。
そのときだった。
教室の扉が音を立て開いたのである。
理紗はいきなりのことだったためビクっと体を震わせた。
――ビックリした……急になに?
理紗は少し不機嫌になり教室の扉へと視線を向けた。そしてそこに立つ人物を見てさらに不機嫌になった。
ーーなんであんたがそこにいるのよ……
なんとそこには月城悠馬が立っていた。
転校生が初恋の人だった件 水管みく @suikan0409
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