転校生が初恋の人だった件
水管みく
プロローグ
フリルのついた可愛いエプロンをつけ、鼻歌を歌っている。
――あれ、料理? 私、確か布団で……それに……なんだか自分が自分じゃないみたい。
そのとき理紗はきっとこれは夢なのだと理解をした。
夢の中の理紗は、上機嫌に包丁を握り、キャベツを千切りにしていた。
そうしてそれをお皿へ盛り付け、フライパンの上でじゅうじゅうと音をたてるウインナーと目玉焼きを同じ皿に盛りリビングの食卓へと運ぶ。
どうやら朝ごはんの準備をしているらしい。
食卓には他にマグカップが二つにコーヒーが注がれて置かれていた。
――これは……どういう状況なの?
状況が読み込めない理紗は首を傾げる。
「おはよう、りっちゃん」
すると急に後ろから男性の声が聞こえ、誰かが理紗の背後に立つ。
――きゃっ!
理紗は内心で声をあげる。いきなり声をかけられビックリしたのもそうだが、今の格好を人に見られるのは恥ずかしいと思ったからだ。
――だってフリル……フリルのエプロンよ。
「おはよう、……くん」
しかし夢の中の理紗は平然と振り返って、笑顔を浮かべる。
そこで相手の顔を確認するも、口元から上の部分に白いモヤがかかっていて分からなかった。ただ口元をみるに笑顔で私を見つめている。
「今日はね、……くんのために腕をかけて作ったの、だから早く食べて」
夢の中の理紗はハートがつくような甘い声で囁き、椅子を引き男性を座らせる。
そうして男性を椅子に座らせると理紗は何故か対面ではなく隣に座った。
「……くん、あ~ん」
幸せそうな顔でウインナーを半分に切って男性の口元に運ぶ。
――ちょ、ちょっと!! 私なにそんな恥ずかしいことしてるの!?
理紗は両手で顔を覆った。
「どう? ……くん」
「うん。美味しいよ、りっちゃん」
顔を真っ赤にしている理紗のことは関係なしに夢はどんどん進んでいく。
そしてついには二人は向き合いチュッとキスをし始めたのである。
その光景を見ている理紗は耐え難いのか一人悶えていた。
――もぅ……勘弁して……
そのとき『ドンッ』という衝撃音とともに目が覚める。
「いっ……た……」
どうやらベッドから落ちたらしい。
理紗はゆっくりと体をお越し辺りを見渡す。するといつもの自分の部屋が目に入り、さっきのはやっぱり夢だったんだと再認識する。
――私、なんであんな夢見たんだろ?
「はぁ……」
理紗はこの時心当たりがあること思いだしため息をついた。
とりあえずベッドの上のスマホを手に取り時間を確認する。時間は5時ジャストを示していた。いつも起きる時間より2時間も早い時間である。
それから理紗はもう一度寝ようかとも考えたが、さすがにあんな夢を見た後だ、きっと眠れないだろうと思いスマホをベッドの横の机へと置いた。
「あいつ今日もくるのかな……」
独り言をそう呟きながら、机の上のヘアピンを取り、顔にかかる前髪をとめ、少し早めの支度をするのであった。
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