転生

雲田和夫

転生

「あ、君内定ね。」


あっけなく内定が決まった。そうだろう。僕は成績も、ゼミの活動も、サークルもバッチリエントリーシートに記載した。自分が言うのもなんだが、文句なしの学生だろう。


「今日は渋谷で5時ね。」


彼女からの連絡だ。彼女といるのは幸せだ。楽しい。しかし、なんだろう。僕はもっといろんな女の子と付き合って、自分のスペックをフルに活かすべきじゃないだろうか。


友達からSNSにはたくさんの友達がいる。僕が発言すれば多くが従う。僕はもうオピニオンリーダーになりつつある。


そんなある日、僕は海外旅行から帰ってきたばかりだった。

そのせいだろうか。

僕は道路を渡るときに左右を見る順番を間違えた。


僕はトラックに轢かれた。


あっけなく僕は死んでしまった。


「死んでしまうとは情けない。」


え、妙な声が暗闇に響く。


「転生先は決まってる。内定済みだよ。」


え?


だんだん明るくなる。すると僕は、自分が何に転生したのか気づいた。


惑星だ。


それも、冥王星のような冷たい星だ。


宇宙空間はものすごく静かだ。僕はひたすら考えていた。なぜ、前世の記憶を持った惑星なんだろう。なんで、太陽みたいな恒星じゃなくて、惑星なの?地球なら生き物眺めて暇つぶしできるけど、僕はガスが凍り付いているだけ。時々ガスが噴出するだけ。ていうか、惑星って生き物ジャンルなのか?


彼女のことも考えたし、たくさんいた友達を一人残らず思い出した。そして、就職した会社で、何をしたかったのか考えていたが、やめた。


悠久の時を超えて、僕は恒星の爆発に呑まれ、死んだ。


僕の惑星としての務めは終わった。


リア充の惑星ってなんだろうな。冷たい星も悪くない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

転生 雲田和夫 @spiderbutterdog

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ