20.エピローグ

― 約半年後の夜


レイラの両親、ケイン・アキラ・バードとナターシャ・ナタリー・シェフソフスキを乗せた旅客機は成田国際空港へ着陸しようと着陸態勢に入っていた。


「やっと会えるわね」


「ああ、やっとだ。彼女・・の遺言も伝えてやらないとだな」


空港近くの公園では桜が満開を迎えていて、外灯が優しく桜の花々を照らしている。



― 同じ夜


オーストラリアのシドニーにある高級住宅街。


エレガントな雰囲気の建物には似ても似つかない一人の女が入浴をしていた。


大理石で出来た大浴場では大音量のハードロックが流れていて、二十人は浸かれそうな大きな浴槽はモコモコに泡立っている。


鼻歌交じりで体を洗う女の容姿は奇抜なパンキッシュで、髪はショッキングピンクの色をしたショートカット。眉、鼻、耳、口の顔を始め、体の至るところにピアスをしている。細身だがメリハリのあるボディーで異性を喜ばせるには十分な体形だ。


肩にはフェニックスのタトゥーが入っている。


「・・・最低」

鼻歌を一度留めて女は一言そう呟くと、再び鼻歌を歌い出した。



― 同じ時刻


新宿で建設中の高層ビルにある鉄骨に腰をかけながら東京の夜景を眺めている女がいた。


髪色はアップルレッドで、腰ぐらいまでありそうな髪は夜風でサラサラと靡いている。


「・・・了解」

女が何かの指示に耳元を片手で押さえながら返事をした。


そして次の瞬間、女は腰をかけていた鉄骨に足をかけるとその足を蹴り上げ、目の前の膨大なスペースへ体を放り出した。


女は頭を下に降下して行く。


しかしその眼差しは活き活きとサファイアブルーのように青く輝いている。


このまま降下し続ければいとも容易くその体は目も当てられない悲惨な姿に変貌するだろう。


しかし女の口元はその降下を楽しんでいるかの様に緩んでいる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ソース・オブ・ライフ 蒼空院 叶舵 @mitsukashihakata

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ