第18話 俺と魔王と勇者さん (11)

 すると、白い甲冑を着衣した女性が、「えっ、うそ? これって、乗り物なのですか?」と、逆に訊ねてきたから。「は、はい。そうですよ」と、俺は言葉を返した。


 でッ、言葉を言い終えると。もしかして、この女性は、俺に冗談を告げて揶揄っているのだろうか? と、思い始めたのだよ。


 だって今時……と言うか。この近代日本に住んでいて自動車を知らない人など、この平成の世にいないとは思うから……。


 と、言いたいところなのだが。白い甲冑を着衣した女性の様子を、俺は今も横目で『チラチラ』と見ているのだが。彼女は自身の顎に手を当て、俺の愛車のハイエースを注意深く興味津々に見ているのだよ。


 そんな彼女の様子を凝視すると、俺にウソをつき揶揄っているようには見えない。


 まあ、俺がこんなことを思っていると。


「鋼で動く乗り物ですか……。こんな物が動くなんて本当に凄いですね……」


 と、独り言のように、白い甲冑を着衣した女性は呟くから俺は、「はぁ~」と、だけ言葉を返した。


 すると、今度は彼女、「一体どんな魔法の呪文を唱えれば、この鋼の乗り物は動くのですか?」と、真剣な声で訊ねてきたから。俺も真剣な声で、「化石燃料です……」と、冗談を交えて答えたら。


「そ、そうですか。ありがとうございます……」


 と、俺にお礼の言葉をくれたまでは良かったが。直ぐに彼女は、「化石燃料~、化石燃料~。おおおっ! 化石燃料~!」と、両手を天高く掲げ、声を大にしながら叫び始めた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

俺と魔王さまと勇者さん かず斉入道 @kyukon

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ