第15話 走れ走れ走れ

親に泣かれ、警察が事情聴取だと、取り調べ室に連れていかれる。


だが、そんなことよりも、美愛の引っ越しは今日。いったいどうなってるんだと。カーミラの訴えが正しかった。


取り調べ室には二人の警官。今までどこで何をしたのか話してほしいと言われている。どう話していいかわからなくて、困っている。


そこで物音。行った警官中々戻ってこない。行こうとして、楓が飛び出してくる。次に臆人。


「いったいどうなって」

「話はあとだ。とにかくここを出るぞ」


警察署を抜け、走る。


「時空がずれてたんだ。今まで」

「時空が……」

「言ったよな。俺の父親は人間と仲がよかった。でも、こっちに人間を呼ぶことは滅多になかった。それはたぶん、こっちの時間があっちより早いんだつまり、あっちで半日経つとこっちでは三日経つんだよ」

「でも今までは」

「多分、カーミラのせいだ。あいつは時を司る魔女だ。その瘴気によって幸運にも時空が歪んで人間界と魔界が一緒になった」

「じゃあどうすれば」

「でもな、よく考えてみろ。もっと前は、人間と魔の往来は盛んだったんだ。なのに、時空がずれてたら盛んになるわけがない」

「なら、なにが」

「あのときと、今、変わったことがあるといえば、正規ゲートだ。正規のゲートをくぐらないと時空が歪むんだ。それで今は封印されてる」

「な、ならとりあえず今はそれを使って。すぐに帰ってくれば」

「時空の歪みは一定じゃない。十分が一年になる可能性がある。おまえは、そんな危険な場所に彼女を連れて行きたいか?」

「それは、できないよ」


あきらめるしかないのか……。


「諦めるにはまだ早い。おまえはすぐだったろうが。俺たちには2日あった。その間に、城の全員で封印を解こうとしている」

「間に合うの?」

「間に合うと信じて進め! 封印が間に合っても、会えなかったら本末転倒だ」


純は走った。一歩手前で、イルナが待っている。そしてこの指輪に願え。するとゲートは開かれる。


それを持って家へ。


そして美愛の家は、もぬけの殻だった。人の気配はない。


後から声がかかる。


「遅いよ、君。もう少しでタクシーに乗るところだったよ」


振り返ると美愛がいた。


「待っててくれたんですね」

「うん。きっと来てくれるだろうって思ってたから」

「では、行きましょう」

「え、どこに?」

「異世界に。大変だったんですから、ここまで来るの」

「まあ、なにせ君は私をほっぽって三日も失踪してたからね。きっと、とてつもなく壮大な冒険を繰り広げていたんだろうね」

「それが、そうでもないんですよ」


純が苦笑いをして、指輪に願いをこめる。


「僕たちを、異世界に連れて行ってください」


目の前が光る。きっと、ここをくぐればいいんだろう。


「奏多さん、あちらについたら話があるんだ」

「うん、私も。君に伝えなければいけないことがあるんだ」


二人は光の中に入る。


こうして、物語は終わった。



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