第3話

「てことがあったんだよ。どう思う?」


「吉名さんの目が心配だな。」


俺の話をゲームをやりながら興味なさそうに聞いている友人、高村洋一郎はそう言って今もゲームに夢中だ。


「いやそういうことじゃなくてさ!これってどうなっちゃうのかな俺と吉名」


「んー付き合っちゃうんじゃないの」


「だよな!やっぱそうなるよな〜!俺もそう思ってたんだよお」


高村と俺は今テスト勉強とゲーム、そして吉名のことを相談するために俺の部屋にいる。


吉名と帰ったあと自分でいろいろ考えていた。あれはそもそも告白だったのか、ただ言いたいだけだったのか、顔が好きなだけで付き合いたいとかは思っていないのかとか、考えすぎて自分ではどうしようもなくモヤモヤしていたので1番近い友人に相談しようと思い今の状況に至る。


「でもさ高村、あれって俺とどうこうなりたいとかじゃなくてただ顔が好きって言いたかっただけだっ


「それ、さっきも聞いたよ。同じこというけどそれは吉名さんに聞かないとわからないことだから聞けば。」


本当に塩対応だなこいつは。いっっつもこいつはあーはいはいそうですかみたいな顔で俺をあしらうんだよなあ。まあだから言いやすいってのもあるけど。


「聞けない。怖くて聞けない。だって

え?あれ湯原司くん的には告白だったんですか??すみませんそんなつもりは全然なかったんです。ただ顔好きでもっとそばで見てたいなと思って近づいただけで。別に湯原司くんと付き合いたいとは微塵も思ってませんでしたごめんなさい。

なんて言われたら俺ショックでショックで立ち直れないよ!」


「あーその被害妄想さっきも聞いたわー」


「あんな嬉しそうな顔して近づいてきてそりゃないよ!」


「じゃあ聞くけど湯原司は付き合いたいの?吉名さんのこと好きなわけ?」


「いやそれはまだ吉名のこと全然知らないし、そんなふうになるなんて想像できないけど...」


「吉名さんも同じなんじゃないの。だいたい顔好き以外に他意なかったら知りたいから友達になってなんて言わないでしょ普通。」


「じゃあ付き合いたいって思ってんのかよ。」


そう言うと高村はため息をつきゲームを止め俺の方に向き直った。なぜかげんなりした顔をしている。


「な、なんだよ。違うのかよ。」


「あのさ、湯原司は極端なんだよ。吉名さんは今湯原司の顔に好意を抱いてる、だけどそれだけ。」


「やっぱそれだけ?!」


「聞け」


「はい、、」


「吉名さんも湯原司と同じでまだ全然後のことなんか想像できてないんだよ。多分吉名さんは欲望むき出しで言ったわけじゃないと思う。単純にお前の顔が好きで一緒にいたいんだよ。それはもうお前に対する好意で、その中には付き合いたいっていう気持ちもあるかもしれない、でも本当にお前のこと知りたくてまずは友達になりたいと思ったんじゃないんですかね。人を好きになるってそんな簡単に結論なんか出ないんですよ湯原司くん。ましてや顔を好きになったんだから。」


「なるほど、、、さすがラブコメ大好き人間。言うことがなんか確かに感があるな。」


「まあラブコメはいろんな人のいろんな感情が混ざり合ってるから本当に勉強になるよ。あーラブコメ最高だわ」


とそう言いながら高村はさっきまでプレイしていたギャルゲーに戻っていった。

高村は映画、ドラマ、アニメ、ゲーム、漫画、小説、様々なジャンルのラブコメを網羅し、今もラブコメ要素満載のゲームに勤しんでいる。

無表情で感情豊かとは程遠いやつが唯一感情剥き出しになって楽しめるコンテンツがラブコメらしい。

現実ではなくフィクションによって得られた知識だと思うとなんとも言えないが言ってることはすごく納得がいく。


「たしかに付き合いたいとかそんな簡単なことじゃないよな、、お、俺を好きってだけなんだもんな。」


「顔をな」


そうだ。いろいろ考えたって仕方ない。まずは吉名と過ごす時間を増やしてお互いのことを知っていく。そうしたいって思ったのは俺も吉名も同じ気持ちなのだから。


、、、、ん?

もしこれでいろいろ知った結果あまりよろしくない俺を知ってしまったら?


「待ってくれたかむら〜!俺のこと知ってやっぱないわってこともあるってことだよな?」


「そうだな。お前の欲望剥き出しの下心がバレて全く無害じゃないことが分かったらそうなってもおかしくないな。」


「うわそれはつらい!どうしたらいいんだ俺!」


「普通に過ごしてて無害そうって思われてたんだから今まで通りでいいんじゃないの。」


「俺、今までどんな風に過ごしてた?!どうしよう吉名のこと意識してもうそんな雰囲気出せないかもしんない、、」


「顔から出てるから大丈夫だろ」


ピロン


そんなやりとりをしていると携帯からmoinの通知音が鳴った。

新着メッセージが来ている。見てみるとそれは今話し合われていた張本人、吉名みくからだった。


「よ、吉名からだ!」


「なんだ、ちゃっかり交換も済ませてんじゃん。どれどれ」


こんにちは^_^

初メッセージ失礼します!

明日言えば良い話なのですがせっかく交換したので何かやりとりしたくて!

あの、私も放課後のテスト勉強一緒にしてもいいですか?


「お〜早速お誘い来たね」


「うわ〜!来ちゃった来ちゃったどうしようなんて返そうたかむら〜!」


「女子かお前。一緒にやろうって返せば良いだろ普通に。」


「だ、だな!よし、、、一緒に、ヤろう、、、ってヤろうはだめだろ!」


「いやそれ誤字だろ。あーじゃあ勉強しようにしたら。」


「なるほど!えっと一緒に勉強しよう、、、、ちょっと待て。なんか、エロくないか?」


「もうなんでもいいよ。」


「おい高村俺は真剣に無害そうな返信にしようって考えてるのにどうしてそんなどうでもいいみたいな顔するんだ!」


「俺は今ゲームに夢中だから自分で考えて〜」


結局返信の内容は

こんにちは

初メッセージありがとう

いいよ 一緒に勉強しよう。


結局無難な一緒に勉強しようにして返信することにした。


「よかったじゃん放課後一緒に過ごせて」


「ま、まあな」


「照れんなよ気持ち悪い」


「はあ?!」


嫌われたくないのは好かれたいのか、好きだから嫌われたくないのか、まだそんなことを考える余裕なんてないからこんなちょっとしたことで悩んでしまう。

そんな悩む時間も少し楽しいのは吉名だからか、こういう機会に恵まれて浮かれてるだけなのか今はまだあまり考えなくてもいいだろう。ただこの浮ついた時間を味わえるだけ味わっていたいなと思うから。

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タイトル未定 ぶろさむん @akio57

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