第2話

「それでなんで俺の隣で寝てたんだ?」


吉名とせっかくだし一緒に帰ろうということになり、その帰り道でさっき図書室で隣で寝ていた経緯について聞いてみた。


「借りていた本を返しに来たらたまたまそこに寝ている湯原司くんがいて、ついその寝顔を拝みたくて隣に座って見ていたらいつのまにか私も寝てしまっていたんです。」


「おいおい、人の寝顔をまじまじ見るなよ恥ずかしい」


大丈夫かな。いびきとかかいてなかったかな;;


「いやいや、湯原司くんの寝顔を拝める機会なんて教室以外そうそうないですし、間近で見れるタイミングを逃すなんて許されることじゃないです」


許すよ俺が。

教室で遠くから見てくれ恥ずかしいから。


「顔を好きになってくれたのはありがたいんだけどあんまり他の人に言わないでくれよ。吉名と他の人の目は全く別のものなんだから。まじで何言われるか分かったもんじゃないんだからな。」


イケメンだったら同意を得られるな話だが、俺の場合それは絶対にありえない。知らないところで被害を受けるのはさすがに辛い、、


「え!言っちゃいけなかったですか?」


「言っちゃったのかよおまえ!!」


「普通に言っちゃいましたよ〜本当に最高にドストライクの顔なんですから!でも変なのがみんな、あんた目大丈夫?とかコンタクト外れてる?とかなぜか心配されて、もっと視野を広げてみた方が良いって言われました。失礼ですよね!十分見た結果湯原氏くんだって思ったのに。みんなの方がもっと湯原司くんにピントを合わせて見て欲しいくらいです!」


うう!!胸が痛い!!確かに正しいがそんな風に言わなくたって!


「吉名、今後一切その話題は出すなよ。辛いから。」


「そうですか、、分かりました!いつか湯原司くんの顔の良さがわかる時が来たら言ってやりますよ!私の目に狂いはなかったって!」


そんな日は一生来ない。あんたの目は狂ってるよ。


「というか、吉名のストライクゾーンの位置がピンポイントすぎるんだよ。俳優とか見てもあんまり好きにならないのか?」


「んー好きな俳優さんは何人かいますけどそれは雲の上っていうかイケメンでストライクゾーンに入らないというか、」


おい、俺の顔好きとか言っといてちょっと失礼だなおまえ。


「それに私が好きなのは湯原司くんの顔ですから、他の人の顔なんて別になんだっていいんです。」


頬を赤らめて言ってくれる言葉は嬉しいけど素直に喜んでいいのか今だに分からん。


そんな話と世間話をしていたら駅に着いていた。吉名は俺とは反対の路線なのでここでお別れだ。


「今日はいろいろありがとうございました!一緒に帰れて嬉しかったです」


「こちらこそ。あーえっと、勇気出して言ってくれてありがとな。嬉しかったよ。」


そう言うと、吉名は一瞬固まって俺の方に勢いよく近づいてきた。


「うわ!なんだよ」


「私本当に勇気出してよかったです!これからいろんな湯原司くんの顔が見れますから!」


と言って満面の笑みで俺を見てくる。

俺は急に恥ずかしくなり目を逸らしてしまった。

これから吉名が俺のいろんな顔を見れるということは、俺も吉名のいろんな一面が見れるということになる。

顔だけど好意を向けられて舞い上がって、これからいろいろ楽しみだなと思ってしまっている俺のチョロさをなんとかしたい。

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