9-11
6日の夜、お風呂上りに雪見オチールを堪能したので、そろそろログインしましょう。
ログインしてから課金用メニューを表示しました。最後にこのページを見たのもかなり前な気がしますね。
えーと、妖精の枠追加を選んでと……。最後に確認を押して、購入完了です。すると、妖精のもう片方の枠を追加するためのアイテム、【鱗粉の花(戦闘用)】を手に入れました。極小の粒が大量に集まって出来ている花ですが、崩れないとは、凄いですね。
「ミカンー」
「どうしたのよ」
「これあげる」
「へぇ、随分と珍しいものを、ありがとう。ありがたくいただくわ」
ミカンが鱗粉の花を手にすると、崩れなかった形が崩れ、ミカンへと吸収されていきます。
これで妖精用のメニューが更新されたので、戦闘系スキルも使わせることが出来るようになりました。
「ミカン、描かれている魔法陣に対応したスキルをセットしておけば、見ただけで使えるようになる?」
「詳しく調べる必要はあるけれど、使えるようになるわよ。それと、私に使わせるのは、そのスキルの前提とかじゃなくて、そのスキルそのものにしなさい」
ふむふむ。空間接続は時空魔法なので、時空魔法を選ぶ必要があるということですね。戦闘の補助が目的なら、下位の空間魔法や、その前提の光や闇でもいいですが、今回は魔法の習得が目的なので、対応した魔法を選ばなければだめということらしいです。
それでは時空魔法をセットしてと。
「よし、ミカン、行くよ」
「わかったわ」
意気揚々とウェスフォーへと移動しピラミッドを目前にして、問題が発生しました。
「ここは立入禁止だ。立ち去れ」
ええ、そうなんですよ。このピラミッド、許可がないと入れないんです。まぁ、許可と言いつつ何かしらのクエストを受ければいいわけなので、難しいことではありませんが、今来た道を引き換えし、冒険者ギルドへと足を運びます。
さて、何のクエストを受けましょうか。受けても用事が終わったらキャンセルすればすぐに終わるので、何でもいいと言ってしまえばそうなのですが、メニューにあるクエストの成功率に影響が出るんですよねぇ。特に利点がないとはいえ、わざと下げる気にはなりませんし。
簡単なクエストは……。
おっと、ピラミッドの掃除ですか。ゴミを集めるという内容なので、恐らくは採取ポイントがあるのでしょう。あそこは警備のNPCのいる位置よりも中に入ってしまえばこちらのものなので、これにしましょう。
クエストを受け、ピラミッドの警備NPCの内側へと入り込むことに成功しました。空間接続の陣がある場所はわかっているので、通り道の採取ポイントからゴミ拾いながら進みましょう。
ゴミ拾い失敗ということはないようで、簡単に終わりそうです。
そして、目的地へと到着し、空間接続の陣を見付けました。
「ミカン、この魔法陣だよ」
「そう、これね。ちょっと待ってなさい」
ミカンがふらふらと飛んで床に描かれている魔法陣へと近付きました。あちらこちら飛び回り、触りながら確認しているようです。
しばらくして、ミカンが戻ってきました。
「完璧に理解したわ。見てなさい」
目の前に距離を保ってとどまっているミカンが手を伸ばしてきました。けれど、そこからでは私には届きません。そこから不敵な笑みを浮かべると――。
「ふぎゃ」
ダメージはありませんでしたが、おでこに痺れを感じました。これは攻撃を受けたようですね。うーん、おでこの辺りに何かあるような気がしますが、小さくて見えません。……おや?ミカンの肘付近から先が消えていますね。
「これが空間接続の効果よ。自分の体の一部を飛ばすのは、あんたには無理だけど、二ヵ所を繋ぐくらいなら出来るわ」
ふむふむ。ずっとなのか今はなのかはわかりませんが、今のところは二ヵ所を繋げることが出来ればそれで十分ですよ。
時空魔法を確認してみると、実際に空間接続が使えるようになっていました。使用には魔法を書き出す何かしらのスキルと魔石が必要なようです。繋ぐ場所の数と距離と陣の大きさに応じて必要な魔石の大きさや数が変わり、陣の大きさは運べるものの体積に影響するそうです。ポータルの様に使うのは難しそうですが、ポータルがあるのですから、そう使う必要はありませんね。
「ミカン、ありがとね」
「ふっふーん、私にかかればこの程度簡単なことよ」
よしよし、ここは撫でておきましょう。こういう時はおだてておくべきですから。
「ちなみに、描いた陣ってどうやって消すの? あと、陣を描くのに必要なものってあるの?」
「知らないわ」
「そう。じゃあ、心当たりがあるから、行こっか」
とその前に、シェリスさんにメッセージを送っておきましょう、細かい使い方はこれからですが。
残りのごみも拾い、クエストもちゃんと完了したので出発です。
「オババオババー」
「何じゃ小娘、騒がしいのう」
わからないことはオババに聞くのが一番です。
「ミカンのお陰で時空接続が使えるようになったので、詳しい使用方法を教えてください」
「ふむ、随分と強引な方法を使ったんじゃのう」
ばれましたか。まぁ、オババなら不思議はありませんね。
「教えちゃるから、奥で待っとれ」
「いえっさ」
奥の部屋でオババを待とうとした瞬間にオババがやって来ました。
最初に空間接続の詳しい説明を受けましたが、それはスキルから説明を見れば何となくわかる範囲でした。まぁ、基礎の確認は大事ですから。
「さて、そのうえで、何が知りたいんじゃ?」
「恒久的に残る陣を描くのに必要なものと、描いた陣を消す方法を知りたいです」
「魔石が魔力を供給している以上、一度描いた陣が消えることはない。じゃから、陣への魔力供給を止めれば、陣を消すことが出来るんじゃ」
ふむふむ。つまり、特に追加素材を用意する必要はないということですか。
「なるほど。ちなみに、陣の片方をインベントリに繋ぐことって出来ます?」
巨大な装備の大半を何処かへ置いておくにしても、距離も魔石の大きさに影響するのであれば、あまり遠出は出来ません。なら、自分のインベントリに繋げてしまえばいいだけです。
「その辺りは昔、北に住んどるやつが研究しとったのう」
おやおや? これはまさか……。
「オババは知らないんですか?」
「別の方法なら出来なくはないが、手間と必要な素材を考えると、実用性はないのう。じゃが、随分と昔のことじゃ、恐らくやつの技術自体は完成しとるじゃろ」
これは庄兵衛さんが見付けているかどうかということですね。まぁ、これは専門家に任せておきましょう。
ここではオババにいろいろと用意して貰い、練習するにとどまりました。
テロン!
――――フレンドメッセージが一通届きました。――――
クランハウスに戻りログアウトしようかと思っているとシェリスさんから返事がきました。
明日の午後に予定が空いているのであれば、また庄兵衛さんに付き合って欲しいそうです。報酬は前回を基準に考えていていいそうで、場合によっては増額するとか。
ふむ、参加するのでログインしたら連絡すると返信しました。
あれが実用的な大きさになって、いろいろと出来ることが増えたら面白そうですよね。
それでは、今日はここまでです。
1月7日、ええ、冬休み最後の日です。宿題なら何やら、明日の準備は終わっているので、心配はありません。それでは、午後のログインをしましょう。
ちなみに、葵は今日ログイン出来るか不明です。
「こんー」
定型文での挨拶をかわし、シェリスさんへログインしたことを伝えました。
連絡が来るまでは日課をこなしましょう。
「ねぇ、ハヅチは宿題終わりそう?」
「んー、必死に写してるから終わるんじゃない?」
「夏と違ってそこまでの量はないからちゃんとやっとけばいいのに」
「一緒にやった時に終わらせればよかったのにねぇ」
時雨と話していると何人かが顔を逸らしましたね。というか、あれは宿題用のシステムを起動していますね。ハヅチとは違い、リアルでないと出来ないのは先に終わらせているのでしょう。
テロン!
――――フレンドメッセージが一通届きました。――――
シェリスさんからの返信です。あちらも準備が出来たようなので、向かいましょう。
「待ってたよ」
昨日同様、シェリスさんに生産クランから案内してもらいました。迎え入れてくれた庄兵衛さんは昨日作った大量のガントレットに埋もれています。いえ、組み立てていない部品も大量にあるので、これから作るのもあるのでしょう。
「シェリスから便利なことが出来るようになったって聞いたよ」
「便利だとは思いますけど、連絡した通り、ちょっと足りないといいますか……」
「大丈夫だよ。連絡貰ってから師範に聞いて来たから」
「それならいいんですが」
「まずは新しい回路図だよ。説明はそれを描きながらね」
「りょーかいです」
昨日とは違うので手癖で描かない様に気を付けましょう。
えーと、あーしてこーしてと。
「あ、この印の所、空間接続の陣を描いてよ」
「……結構小さいですね。まぁ、刻印でいいのかな?」
「スキルで描けるのがあるなら、それでいいよ」
「それでは、【刻印】」
描く大きさを変更するとそれだけ多くのMPを消費するんですよね。まぁ、今のMP量なら作業に支障が出るほどではありませんが。
そう思っていたのですが、数が多いですね。これが本体部分だからなのかもしれませんが、一日に何個も作るのは大変そうです。
本体部分は終わり、次は他のパーツ部分に回路図を描きます。刻印を何度も行ったのでMPがかなり減ってはいますが、MPの回復待ちをする必要はなさそうです。
そして、時間はかかりましたが、全てに描き終わりました。
「終わったー」
「お疲れ様」
「いえいえ」
シェリスさんからお茶を貰ったので必死に組み立てている庄兵衛さんを眺めながら一休みしましょう。
「シェリスさんはどんなのを作る予定なんですか?」
「杖の先端で突いた瞬間に杭が飛び出るのとか面白そうだよね」
「パイルバンカーですね」
あれは夢のある武器ですよ。
「後は、出来ること次第かな。リーゼロッテは何か思いついてる?」
「思い浮かんでることはありますけど、庄兵衛さんがもう思いついてると思いますよ」
「そうかも知れないけど、教えてよ」
「いいですよ。例えば、スロットエンチャント用のオーブをはめ込む場所を付けて、付け替えて性能を変化させたり、消費して強化の数値を引き上げたり出来たら面白いですよね。後は、シェリスさんのを聞いて思いましたけど、パイルバンカーの杭の部分からいろいろと飛び出ると面白そうですよね。こう、体の内側からドバっと」
やはり内部攻撃は基本ですよね。体の内側は柔らかいというのはゲームの基本ですから。
「……随分と過激なことを」
「それ、採用だよ」
「ふぇっ? 内部攻撃ですか?」
庄兵衛さんも随分と過激なことをしたがるんですねぇ。
「違うよ。オーブを使う方だよ。私だと可変ギミックを中心に考えちゃうけど、違うプレイヤーの視点があると助かるよ」
私だと可変ギミックを思いつくのは大変ですから。
まぁ、今すぐに回路図が出てくるわけでもないので、いくつかオーブを渡し、後日ということになりました。今日はこの可変ギミック系を作るのが目的ですから。
そんなわけで、最終的に出来上がったガントレットは、プレイヤー自身のインベントリを1枠潰す仕様となりました。大事なのは、鞄やウェストポーチで追加したインベントリではなく、9枠しかないプレイヤー自身のインベントリの1枠を使うというところです。
所有権を移動するときに警告がでるわけですが、枠に空きがないと受け取ることすら出来ません。まぁ、元から入っているアイテムを一つ電子の藻屑にしないだけいいでしょう。
前回同様、試し殴りをしたのですが、動きもスムーズになっており、全体的によくなっています。
「これ、変形とかしません?」
「流石にそこまでは積み込めなかったよ。ドリルも付けられなかったし」
ふむ、ドリルですか。それは夢がありますね。
「ちなみに、靴系装備でジャンプ力を高めたり、キック力を増したりとか出来ますか?」
「スニーカーにダイヤル付けて強弱付けたりは出来ないよ」
流石にそこまでは求めていませんよ。というか、あれはキック力しか増してくれませんよ。
「リーゼロッテって取ってるスキルの幅広いから、もうちょっと吐かせる?」
「これ以上追加されると大変だから今度にするよ。シェリスとの約束もあるんだよ」
シェリスさんはこのギミック系の技術を教わるそうなので、杖に応用する時には何か作ってもらうとしましょう。
庄兵衛さんとフレンド登録をして、報酬を貰いました。
増額されそうになりましたが、他の部位を作るプレイヤーに教えた時に、装備の作成依頼の仲介をしてもらうことになったので、前回と同額になっています。
雰囲気の違う装備を用意するのもありですから、その時は手甲系のも作ってもらいましょう。
明日からは新学期ですから、夜は日課くらいにしておきましょうかね。
それでは、ログアウトです。
Hidden Talent Online ナート @na-to
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。Hidden Talent Onlineの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます