第6話 苦しみの花 ~アロエ~

玄関で突っ立っていると、いきなり髪をおもいっきり掴まれ、私はバランスが崩れ、倒れた。

目の前を見るとあの男がいる。

「さやかぁー、こんなところで何してる」 

そう睨みながら低い声で私に聞いてくる。

「何もしてない…です…」

どうしよう、『決まり』を破った…!

男はしゃがみ、目線を合わせるとにっこり笑い

「なぁ、帰って来たらどうするんだったか忘れたか?」

笑顔を張り付けたような顔で私を見る。

「は、裸で部屋にいないといけない、です…」

「そうだよな、じゃあなんで居ないんだ?」

「それは…」

「チッ!いい加減にしろよ!どいつもこいつも!」

そう怒り狂ったように男は何度も私のお腹を蹴ってくる。痛くて、蹴られるたびに吐いてしまいそうで気持ち悪い。だんだん意識がもうろうとしてきた。


ピンポーン


唐突に呼び鈴が鳴った。

男はすぐさまドアの方に視線をやる。

一瞬シーンと静まりかえるとすぐ私の方に視線を戻して、再び蹴り始める。


ピンポーン


二度目の呼び鈴が鳴る。

男は私を蹴るのをやめ、ドスドスと玄関の方に行き、ドアを開けた。

「はーい、どちら様」

男はさっきの態度とは変わって、優しい声になる。

「あ、えっと、こんにちは…」

私はその声に聞き覚えがあった。

「あの、ここに桜井 さやかさんは居ませんか…?」

少し緊張したような声で私の名前を呼んだことに驚き、顔をあげる。

男の後ろ姿の先に見えたのは…。



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ユリの花が咲く頃に~美しき二輪の花~ 苺色 アリア @Itigoiromaria

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