第17話

 グレアムの戦いは美しかった!

 巨躯にもかかわらず、舞うように双剣を振るい、殺される者すら見とれるほどの美しさだった。

 ザンピエ公爵家にも勇名をはせた騎士がいる。

 無名だが勇猛な騎士も数多くいた。


 王太子軍な相手なら、八面六臂の活躍をしただろう。

 だが全く歯が立たなかった。

 馬を駆けさせてザンピエ城に到着したグレアム軍は、奇襲を仕掛けて城門を突破した。


 一騎当千の傭兵達は、舞踏会の開催で混雑している城門を易々と突破したのだった。

 逃走路を断ったグレアムは、バルトロの魔法で城の奥深くに転移した。

 一騎当千の傭兵の中から、更に選び抜かれた八人が、グレアムとバルトロと共にザンピエ公爵の私室に押し入った!


 後は簡単だった。

 グレアムに敵を嬲るような悪趣味はない。

 ザンピエ公爵を一刀両断した後は、向かってくる敵を斬り殺すだけだった。

 シンデレラを苛め抜いた義母と義妹には、はらわたが煮えくり返るほど怒りを感じていたが、女子供を手にかける趣味はなかった。


 だがバルトロの考えは違った。

 ザンピエ公爵の血族を根絶やしにしなければ、シンデレラに害が及ぶ可能があると思っていた。

 だから八人の傭兵に、ザンピエ公爵の子供と兄弟は絶対殺すように、密かに指示を出していた。


 それはカロジェロ傭兵団長の考えでもあった。

 八人の傭兵は獅子奮迅の活躍をした。

 グレアムとカロジェロが選び抜いた八人だ。

 冷静沈着に的確な行動が出来る。

 服装と口調、僅かな立ち振る舞いで地位を判断して、ザンピエ公爵の血族を根絶やしにしていった。


 バルトロは単独行動をとった。

 実際にグレアムの戦いぶりを見て、自分が側にいなくても大丈夫だと判断したのだ。

 彼には絶対にやりたいことがあった。

 シンデレラを苛め抜いた義母と義妹の始末だった。

 彼女達だけは絶対に許せなかった。


 グレアムが殺せない事は分かっていたから、最初から自分が手を下す心算っだった。

 だがただ殺す心算はなかった。

 一瞬で楽にするなどとんでもなかった。

 シンデレラが苦しんだ時間以上に長く、永劫に苦しませる心算だった。


 バルトロは四人に呪いの魔法をかけた。

 人間から大きく醜い疣蛙に変えたのだ。

 四六時中汚く臭い油を流す疣蛙に変身させた。

 更に自殺も出来ず、少々では死なない呪いをかけた。

 何より悪質だったのは


「シンデレラを虐めた義母と義妹に呪いをかけた。

 今後もシンデレラに手を出す者には呪いをかける」

 と書置きをしたのだ。

 これでシンデレラに手を出す者はいなくなると考えたのだ。


★★★★


 ザンピエ公爵の血族は根絶やしになった。

 王太子は敵対した貴族を討伐するのに苦しみ、内戦を引き起こしてしまった。

 その隙に隣国が攻め込み、ヴェネツ王国存亡の危機を迎えていた。

 シンデレラの義母と義妹は、王太子によって見せしめにされ、国中を晒し者にされた。

 死なない事をいい事に、石をぶつけられ、剣で斬られ、槍で突かれ、人々に罵られ、憂さ晴らしの道具にされた。


 グレアムとシンデレラはヴェネツ王国を出て結婚した。

 グレアムは傭兵団を設立した。

 グレアムを慕い、ヴェネツ王国の将兵が多数傭兵団に参加した。

 グレアムは多くの傭兵団を束ねる傭兵王となった。

 その物語はまた別の機会に。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

シンデレラは婚約破棄させられるそうです。 克全 @dokatu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ