第16話
カロジェロの人望は厚かった。
短期間にもかかわらず、五百もの傭兵が集まった。
いや、カロジェロの人望だけで集まった訳ではない。
グレアムの勇名があったからだ。
忠勇無双、王国双璧と呼ばれたグレアムの勇名は、傭兵の間で評判だったのだ。
ザンピエ公爵の城では、勝利を祝う舞踏会が開かれていた。
王太子に勝てたわけではないが、シンデレラ嬢に汚名を着せて、廃嫡する事には成功した。
グレアム将軍が、国境の城から出奔したと言う報告も入っている。
味方に取り込めなかったのは痛いが、王太子の重要な戦力を削ぐことは出来た。
怒りに狂ったグレアムが襲撃してくる危険はあるが、幾ら忠勇無双のグレアムでも、単騎でザンピエ城に乗り込み、生きて帰ることは不可能だ。
グレアムは馬鹿ではないから、時間をかけてでも城外での奇襲を狙うだろう。
だから城から出ない限り襲って来る可能性は低い。
ザンピエ公爵はそう考えていた。
だからザンピエ公爵は急いで領地に戻り、身の安全を確保したのだ。
もちろん王太子対策でもあった。
王太子が王都公爵邸を取り囲むと言う事件があった。
殺し損ねたシンデレラの出奔があり、グレアムを味方に留めたい王太子の不手際もあり、攻撃されると言う最悪の事態は避けられた。
だが二度も幸運が続くはずがない。
王太子が二度も好機を逃すとも思えない。
そう考えたザンピエ公爵は、王都から逃げ出したのだ。
これは派閥力学から言えば大失態だった。
王太子の力を恐れて王都から逃げ出せば、多くの貴族から見放されるからだ。
だがここでグレアムの出奔が大逆転させることになった。
王太子は味方の家族を護り切れず、王国の剣とも言うべきグレアムを失ったのだ。
王家王国を護る掛け替えのない将軍から見限られたのだ。
これは貴族たちから見れば、見逃せない大失態だ。
王太子の為に戦いに出て行っている間に、一番大切な家族を失う。
それも王太子の失態でだ。
誰だって王太子に味方する事を躊躇うだろう。
ザンピエ公爵に逆らったら、一番大切な家族を殺されてしまうのだ。
ザンピエ公爵が悪辣非道なのは貴族の全てが知っている。
だが頼りになるのも確かだ。
血縁を依怙贔屓するが、それは王家も同じだ。
ザンピエ公爵の血縁を婿や嫁に迎えて、領地や爵位を得た貴族も多い。
全て派閥争いの一環だとは分かっていたが、それでも頼りなくてケチな王太子よりは、悪辣非道だが褒美をくれるザンピエ公爵の方に靡く貴族が増えるのは、仕方がない事だった。
そんな風に、王太子からザンピエ公爵に派閥を変える貴族が急増し、多くの貴族がザンピエ城にご機嫌伺いに集まった時に、グレアム達の奇襲が行われた!
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