47.珊瑚鉱石《素材》

 前回は泡貝あわがいと、彼らが生み出す泡沫うたかた鉱石を紹介した。その魔力による影響も。

 その影響は、付近に生息する珊瑚礁にも波及する。

 枝分かれした珊瑚の先っぽに、まるで水晶が生えるように鉱石が作られるのだ。

 これは、珊瑚鉱石と呼ばれている。


 珊瑚鉱石も例に漏れず宝石のようだが、本来宝石として扱われる珊瑚とは違うものだ。

 宝石としての珊瑚は、珊瑚礁を作らない。海のもっと深い所に生息する珊瑚そのものが、宝石として扱われる。


 逆に珊瑚鉱石は、泡貝あわがいが多く生息し、泡沫うたかた鉱石が存在する珊瑚礁に発生する。

 小指の爪程度の大きさで、発色は珊瑚の色に依存する。そこそこ数はあるが、魔力量が少ないため、価値はそれほど高くない。宝石として扱われる場合も、宝石の珊瑚に比べるとずっと安い。


 そんな価値は低めの珊瑚鉱石だが、とにかく見た目か美しい。

 たたでさえ美しいエメラルドグリーンの海に、華やかな色の珊瑚礁というだけで、心奪われる光景だ。

 そこに泡貝あわがいの気泡と、珊瑚鉱石の小さな煌めきか混ざるとなれば、とても幻想的だろう。

 ここでは、底をガラス張りにした船に観光客を乗せ、海中の珊瑚礁を覗いて回るのが人気の観光名所となっている。


 また、観光客向けの催しとして、こんなものもある。

 恋人たちの片方が素潜りをして、珊瑚鉱石を採ってくるというものだ。

 泡貝あわがいと違ってピンきりが少なく、息が続けば好きな色、形のものを手に入れる事ができる。

 恋人が採ってきた珊瑚鉱石は、その場でアクセサリーに加工される。二つに割ってお揃いのネックレスやペアリングにするのが定番だ。

 そして魔術師に任意の魔術をかけてもらう。

 魔力量が少ないとはいえ、物は鉱石だ。ちゃんとした魔術師の手にかかれば、それなりの効果も発揮する。

 例えば、末長く幸せでいられますように――。


 これもまた、大人気の観光名所である。

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