42.魔法使い料理《食料》

「魔法使い料理」とは、とある食材を用いて作られた料理の総称である。

 東の大陸、常秋の山に常にかかる霞に晒された山の幸全般がそれにあたる。


 常秋の山にかかる霞は、高濃度の魔力を帯びている。それに晒されて育った山の幸は、何かしらの魔力的効果を持つようになった。

 それは種類によって様々であり、例えばとある木の実は一時的に魔力量を高め、別の木の実は治癒力を高める。

 キノコを食べれば一定時間、魔術的干渉を全て拒絶する効果を得るし、ある山菜には運動能力を飛躍的に高める。

 生魚を食べれば、永続的に少しだけ賢くなるし、湧水は飲むだけで気力・体力が回復する。


 こんな貴重な効果があるから乱獲されそうなものだが、この常秋の山は昔からある東の強国の王の所有物という名目の下、の厳重な管理下にある。

 許可さえあれば同行者付きで観光もできる、よく整備された地区なのだ。

 当然、王の所有物なので許可なく立ち入った者は問答無用で殺される。密猟者も然りである。


 そんな常秋の山の幸は、そのままでも美味しいのだが、料理にすると絶品になるそうだ。

 どうも、山の幸の美味しさが他の食材にも移るらしい。


 魔法のような効果を得られる絶品料理、ということで、「魔法使い料理」と呼ばれている。

 この世界では、魔力を操作することで何かしらの結果を発生させる者は魔術師と呼ぶ。

 魔法使い、という呼び方はお伽噺の中にしか存在しないのだ。


 つまりこの料理は、「お伽噺かと思うくらいにおいしい料理」という事である。


 山の幸が持つ効果は、基本的には微々たるものだったり、一時的なものに限定される。

 食べ過ぎて悪いことが起きるわけでもなく――だが、魔力を多く含むので魔力酔いする者は注意が必要――名物料理として親しまれている。

 この国に来たら、是非ともご賞味いただきたい。

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