41.人魚《生物》

 人魚は、海に住む魔族である。

 海中に住み、海底に国を作って暮らす、極めて高度な知性と社会性を持った生物だ。

 上半身が人間、下半身が魚の姿をしており、見目麗しい者ばかりである。

 生息地は主に南の大陸周辺の海だ。

 鱗が美しく、魔法道具の触媒や核として使われることが多い。装飾品としての機能も兼ね備えるため、人魚の鱗を使用した物はどれも高価だ。


 魔力量も多いため、その肉を食べると不老不死になると言われている。

 実際は、吸血鬼の血と同様、若返りと暫くの間の不老効果を得る。

 だが、それは人魚にとっても同じ事。


 人魚は、人間の美男美女をその歌声や姿で海に誘い、口づけをして海に引きずり込んで食らうのだ。

 と言っても、人魚にとっても老いを遅延させる程度の効果しかない。だが、実際にそれを追い求める人魚もいるということだ。


 人魚の歌は、地上に生きる者に強い酩酊感をもたらし、その口づけは強い催眠効果がある。

 最近は人間を襲う人魚も減ってきたが、油断はできない。

 船乗りたちは人魚除けの宝石や魔法道具を積んで航海に出るのだ。


 南の大陸では、海沿いの国と人魚の国で、長い間争いが続いていた。地上と海中による不毛な戦いは、派手な戦争にはならずとも、お互いの生活に多大な影響を及ぼした。

 それも数百年前に協定が結ばれる運びとなった。


 だが、最近は一部の人魚に怪しい動きがある。

 人魚の下半身――魚の身体を一時的に人間にする魔術が生まれたとい噂がある。その魔術を使用して地上に人魚たちを招き、よからぬ事を企む者たちがいるのだとか……。


 もし人魚が海中のみならず地上をも制することができたら、彼らの存在は大きな脅威となるだろう。

 どうか南の大陸の平和が、末永く続く事を願う。

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