38.建国の三王《人物》
世界最先端の技術を有するエクセリシア帝国は、賢王の指揮の下、今や学術を民衆に広める事にも力を入れている。
そのため、この国は他国に比べて識字率が高い。これからも発展していくことだろう。
エクセリシア帝国は、元々軍事大国だった。近隣の国としょっちゅう戦争をしていた。
王の方針により今は学問と研究に力を入れているが、軍事大国としての名残は色濃く残っている。
例えばそこらじゅうにいる警備の兵などだ。
自然と学問と研究に力を入れる方針となったのも、戦争は発明の母と言われるのも関係しているだろう。
そんなエクセリシア帝国は、千年の歴史を誇る古い国でもある。
国を興すのは、並大抵の苦労ではない。興したとしても、政治が立ち行かなくなったり、攻め滅ぼされたりして、すぐ潰れてしまうことも多いのだ。
そんな中、エクセリシア帝国が今なお栄華を誇っているのは、建国三代の帝王が極めて優秀だったからである。
初代は黄昏王と呼ばれている。
当時、彼が仕えていた国は内部から腐り、混迷を極めていた。
彼はその国の王の首を取り、自身が王となった。強行ではあったが善政を敷き、民の信頼を勝ち取った。
次に、周囲の国々を打ち倒し、吸収し、一つの国としてまとめあげた。
彼には息子が二人いた。
兄は病弱で、日の光の下に出ると肌が焼けただれるため、一日中部屋に閉じ籠っていた。
弟は利発で優秀だったが、黄昏王が老いてから儲けた子だったので、とても幼かった。
黄昏王が死した後、兄が王となった。
引きこもってばかりだった彼は、夜のみ精力的に活動するようになった。
聡明で美しく、迫力のある王だったという。
年の離れた弟とも仲が良く、よくあれこれと議論を交わしては笑い合っていたという。
彼は、
夜王は病弱だったため、早くに亡くなった。だが、その頃には弟も成人し、若くして父兄と遜色ないほどの威厳を備えていた。
兄の夜王が国の地盤を固めていたため、弟はそれを足掛かりに国を成長させていった。
彼は黎明王と呼ばれ、エクセリシア帝国において、建国最大の功労者と言われている。
この三王には、一つ興味深い噂がある。
夜王の正体は替え玉だったのではないか、というネタが、昔から出回っているのだ。
というのも、即位前後から彼の様子が目に見えて変わったとか、その頃から顔を合わせもしなかった弟とやく話すようになったとか。
子も残さず、亡くなったのは弟が即位ためのに十分成長した時期だった、とか。
本物の兄は病弱により既に亡くなっており、即位した夜王は、本当は吸血鬼だったのではないか、と言われている。
とはいえ、眉唾な話である。
一部のロマンチストな歴史家が夢想しているに過ぎない。
千年も前の事なのだ。人間には、知る由もない。
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