37.日没の大地の創世《伝説》

 世界にはいくつかの大陸があり、おおまかに東西南北の大陸と中央の比較的小さな大陸に分けられる。

 どこも一部が繋がっていたり、巨大な橋がかけられていたり、下島が連なっていたりして、現在では完全に独立した大陸はない。


 西の大陸は、「日の没する大陸」と呼ばれている。

 五つの大陸のうち、最後にできた地と言われ、西の大地と諸国の事をまとめて「オクシデント」と呼ぶこともある。


 オクシデントは、古来より争いの絶えない地であった。

 国が乱立し、血が流れ、滅び、また新たな国が建つ。

 血で血を洗うこの大地には、いつしか死霊が跋扈ばっこするようになっていた。

 そして、よりオクシデントは荒れていった。

 この死霊は、北西の島国にも飛び火した。


 だが、この大陸を統一した王がいた。

 全ての国をくだし、一国にまとめあげたのだ。

 大陸全土に生活の基盤を敷き、傷ついた民をおもんぱかり、制度を整えていった、賢王である。


 そして何より、この王は強かった。

 すさまじい強さを持って、他国を降した後は、大陸に蔓延はびこる死霊を駆逐していった。

 その姿は、まるで彼自身も死霊のように凄絶であったという。


 彼の持つ剣は、対死霊の効果を持つ逸品だった。

 それは、剣と言いながら剣の姿をしていなかったと伝えられている。



 こうして西の大地には平和が訪れた。


 だが、その平和も長くは続かなかった。


 彼の王が死した後、至るところで死霊が出現し、民を襲った。

 平和は崩れ去り、人心は荒れ、国はあっという間に瓦解していった。

 それ以降、この大陸が再び統一されたという記録はない。

 彼の王が携えた剣も、戦乱の果てに失われてしまった。


 日の没する、黄昏の印象が強いこの大地では、いつも戦争が繰り広げられ、荒れ果て死霊が跋扈ばっこしている。


 宵闇に溶け込むように、この国はいつの時代も死霊の影がついて回る。

 いつしか、西の大陸は、オクシデントは死霊術師の巣窟だと噂されるようになっていった。

 かつて大陸を統一した王は、死霊術師の親玉を倒したから、平和をもたらしたのだと、憶測を飛ばしている。


 事実がどうかはわからないが、西の大陸では死霊術師が多い。

 人々を襲う死霊を抑えるため、死霊術師となって戦う者たちがいるのだ。



 かつての王は、この大陸の現状に何を思うのだろうか。

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