33.カーバンクル《生物》

 カーバンクルは、成猫せいびょうくらいの大きさの四つ足の動物だ。

 長い耳と艶やかな毛並みのしっぽ、そして額の赤い宝石・アルマンディンが特徴的である。

 つぶらな瞳と人懐こい性格で、群れを作って生活する。木の実や花などを主食とし、基本的に温厚な生き物だ。

 また、賢いので人間の言葉を理解している節がある。

 同時に彼らは小さくとも魔族でもある。信頼関係を結べれば、下手な護衛よりも確実に主を護るだろう。


 毛色は白銀、黄金、赤銅、紺碧、新緑など多岐に渡る。中でも黄金は金と結び付けられ、貴族たちに人気の毛色だ。

 それ以外にも、白銀は死霊除け、赤銅は鍛冶や精製、紺碧は海、新緑は健康をもたらすと言われている。

 魔族の中でも、特に人間社会に近い場所に生きるものたちと言えるだろう。


 額の赤い宝石・アルマンディンは、別名を鉄礬柘榴石てつばんざくろいしというが、カーバンクルの宝石に限定しては、上記のように呼ばれている。


 アルマンディンは、富と名声、幸運を呼び込む宝石といわれ、上流階級が好む宝石だった。

 そのため、カーバンクルは一時期激しい乱獲に合い、数を減らしてしまった。

 最近では狩猟ではなく、犬、猫、鳥と同様に愛玩動物としてカーバンクルごと飼う者が多くなっているため、数を取り戻している。


 乱獲され続けた彼らが数を取り戻したのには理由がある。

 現金な話だが、額の宝石の価値が下がったからだ。

 その為、リスクを背負って彼らと戦い捕らえるよりも、彼らごと手元に置いた方がずっと効率が良い、という話である。


 毛皮は確かに艶やかで肌触りが良いが、小さな身体では量が少ない。

 宝石も同様に小さい。

 だが一匹一匹が並大抵の強さではなく、しかも群れを成している。

 あまりにも効率が悪いと言えるだろう。


 そんな歴史をたどり、今やカーバンクルや愛玩、野性問わず珍しくはない魔族となっている。


 他の魔族にも、こんな風に暮らせる日がくることはあるのだろうか――。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る