30.禁秘オークション《文化》

 世界にはいろいろな物質や生き物が存在するので、珍しい事や物が発生することがある。

 その中でも珍しい物が大好きで、大金をはたいてもそれ――一般人にはガラクタに等しい物――を手に入れたがる蒐集家コレクターという変人奇人たちがいる。


 四年に一度、そんな蒐集家コレクターたちが勇み足でつどうオークションが、世界最大の商業ギルド本部で行われる。

 秘密裏に行われるこのオークションを、人は禁秘きんぴオークションと呼ぶ。

 主催は当然この商業ギルドである。


 というのが建前で、表だって噂される内容だ。

 上流階級が、躊躇いもなく大金を動かすオークション。それが世間の通説である。


 実際の禁秘きんぴオークションは、もっと秘匿で、危険で、下手な闇オークションよりたちの悪い祭典だ。


 まず主催。一応、最大級ギルドが仕切っていることになっているが、実際は半ばやらされているに等しい。会場も本部ではなく、そこを経由して毎回違う場所が会場となる。

 この時点で、やっかい事の気配が見え隠れしている。

 これを楽しめるくらいしたたかでないと、禁秘きんぴオークションへの参加は荷が重いだろう。


 貴族から研究者、国に関わる者たちまで、最上級の警戒のもと、熱狂と緊張の中行われるこのオークションは、一種の狂典だ。

 完全招待制。参加者たちは仮面を着け、身分も名前を隠して競りをする事になる。

 ここであった事は、外部には絶対に話してはならない。


 そして事件もなんだかんだで起きるのだ。

 それこそ、一国の存亡を懸けた出来事が――なんて事も、あったりなかったりするらしい。


 何が出品されているのか。

 どんな取引がなされているのか。


 知りたければ実際に参加してみると良い。

 ただし、生きて帰ってこられる保証はない。

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