26.精霊たちのタルト《食料》
精霊とは、世界中の魔力の源――マナを生み出す存在だ。
あらゆる自然に宿り、マナを生み出すことで自然を豊かにしている。
呪いや死霊などの、自然の流れを乱すものに弱く、それらに触れられると傷付いてしまう。
精霊が傷付いた場所は荒廃しやすい。
精霊は、大抵の場合は人には見えない。小さな光の玉が浮遊しているように見えることはあるが、基本的に意志の疎通や交流は不可能だ。
だが、ごくごく稀にだが、人であるにも関わらず精霊と交流できる者がいる。こういった者は、
逆に、人外は持ち合わせる魔力量が多く、その源を生み出す精霊たちとは比較的縁が深い。
そのため、精霊たちから接触しようとしてくれれば、意思の疎通が可能である。この場合、魔力量が多い者ほど、はっきりと交流ができるという。
そんな精霊たちに深く関わっているのが、精霊教会だ。
文字通り、世界そのものとも言える精霊たちを崇め、感謝の意を表す宗教である。
この精霊教会で、主に聖水や聖水瓶が作成されており、商業流通との関わりも深い。
ごくごく稀に生まれる
そんな精霊教会を始めとした精霊信仰は、世界各地で見られる。
信仰の薄い地域でも、年に一度の秋の豊穣祭は、精霊への感謝を込めて行われる行事だが、そこで必ず出されるのが、精霊たちのタルトである。
精霊たちの、とは「精霊たちに捧げる」という意味だ。各家庭がこのタルトを焼いて祭りで持ち寄り、捧げものとして備えるのだ。
最終的にはみんなで食べ、精霊たちと共に食を共にするのが目的である。
タルトの具は、基本的にその地の実りをふんだんに使ったものだ。ナッツのタルトが主流だが、果物はもちろん、トマト、ニンジン、カボチャなどの野菜がある。珍しいところでは、プディングやチーズを使ったものもある。
この祭りは、どの地域、どの国でも重要視されている。
兵士たちが対峙する戦地でさえも、豊穣祭の日だけは停戦し、敵国の兵士たちと精霊たちのタルトを共に食べるのだとか。
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