25.魂の呪印《知識》
善い人がいるように、世界には悪い人もいる。
そういった悪い人は、しばしば他者を傷つける。
盗み、詐欺、殺人、それ以上の何か――。
それでも、世界の営み、歴史となる以上、それらは“理不尽”として世界に許容されている。
被害者が許さなくても、世界がそれを許している。
例えば、とある国の王がその傲慢ゆえに自国の民、他国の民を何百、何千、何万と殺そうが、世界はそれを歴史の一つとして見向きもされない。
被害者の人々の怨念が残るのみだ。
しかし、時として世界が許さぬ事がある。
倫理を大きく逸脱した者。世界のルールを破った者。森羅万象の理を捻じ曲げようとした者。そういった者を、世界は許さない。
生命は死ぬと冥界に行き、そこで魂の休息をとった後、またこの世界に生れ落ちる。
いわゆる転生だ。
許されなかった者は死した際、魂に呪印を刻まれる。
一つとして同じ模様はなく、転生すると、体のどこかにこの呪印が浮かび上がる。
そして、彼らの魂は冥界での休息無く、即座に転生させられる。
休息も無しに生れ落ちる魂は、少しずつ摩耗していく。それはその者の精神を蝕み、病ませていく。
呪印を持つ者は、当然周囲から迫害を受ける。世界が許さぬほどの罪を背負った者として、周囲の目はとても厳しい。
例え本人にその記憶がなくても、その罰は止むことがない。
例えその被害者がどれだけその者を許すと主張しても、世界が許さない限り、呪印が消えることはない。
世界が許す日がくるのかすら、誰にもわからない。
この場所を守護する大地の大魔術師の左手に、この呪印を見たという者がいる。
大魔術師となった者は、ほとんどが不老不死となる。
この大地の大魔術師も、不老不死である。
呪印の噂が事実かは不明だ。
だがもしこの大魔術師に呪印が刻まれているのならば、それはいつの事だろうか。
生まれる前と考えるのが妥当だが、もし、もしもこの大魔術師が今世で呪印を刻まれるに至る何かを起こしてしまったのだとしたらどうだろうか。
不死となった者が呪印を刻まれる時期がいつかはわからない。
だが、世界はこの者を許さない。
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