17.アペイロンハーブ《薬草》
治療薬の研究中に偶然生まれたのが、このアペイロンハーブである。
紫から水色にグラデーションのかかった葉で、これを食むと、多方面で個人の限界値を越えた爆発的な力を発揮できる。
そのまま食べることが可能で嵩張らないので、持ち運びも容易だ。味は柑橘系の爽やかな酸っぱさと甘味があり、一口噛めば強い清涼感が口から喉へと流れ込む。そのまま葉を飲み込むと、胃から身体全体へとこの清涼感が広がり、頭と身体の感覚が鮮明に、普段の生活とは比べられないほど過敏になる。指先までこの感覚が広がった頃には、身体の奥から力が漲り、万能感を得る。
ただし、この効果は一時的なものであり、効果が切れた時に限界を越えた反動が起こり、数日は動けなくなる。もしも弱っていた場合などは、最悪の場合死に至る。
元は弱った者に体力をつけさせるための薬草の研究だったが、副作用が強すぎるため治療には使えなかった。
だが、この薬草は戦場で活躍した。
年中戦争ばかりしているとある強国では、兵達にこの薬草の使用を推奨した。
特に、死を覚悟した場合や負傷した場合には、この薬草を使用し、命を懸けて敵に一矢報いよ、と命令が下されていた。
国の命令には絶対服従である。民は国のものであり、国のために民は死ぬもの、というのが、この国での常識だった。
アペイロンハーブのおかげでこの国は快進撃を続けたが、若き王の統治が始まってからは、国内でのこの薬草の使用が禁止されるようになった。
直に、この国は戦争を控えるようになっていった。強力な軍隊で国を守護してはいるものの、今では平和な国の一つとなっている。
さて、使用を禁止されたアペイロンハーブはどうなったかについてだが、今ではより危険な使用をされている。
強国にとって敵だった国に渡ったこの薬草は研究が続けられ、特殊な調合により強力な幻覚剤として密かに広まっている。
一時的に力を得、反動はかなり抑えられるようになった。しかし、使用中に攻撃的な性格になり、幻覚作用もあって同士討ちを始めかねない。使用後も幻覚症状が残ることがある。
かつての敵国は、この幻覚剤で強国の民の一網打尽を狙った。だが、新たな若き王はそれを決して許さず、ならばと自国の民に使用した。
人体実験だった。調合を調整しながら、戦力の増強を図ったのだ。
しかし、この幻覚剤には強い中毒性もある。繰り返し止揚するうちに攻撃的な性格がそのまま残留するようになり、反動は大きくなっていった。最後には、発狂して死に至るのである。
ある時、錯乱した被験者がこの幻覚剤を持って逃亡し、その後の行方がわからなくなった。
だが、それから国内でこの幻覚剤が蔓延するようになった。
「アペラム」と呼ばれるようになったその幻覚剤は瞬く間に国を衰退させ、今ではまともに機能していない。
アペラムと貧困と犯罪の蔓延る地となり、無法地帯と化している。
だからこそ、犯罪者や秘密組織などにとって身を隠すのに最適な場所となり、下手に足を踏み入れようものなら命の保証はできない。
世界中の国々の中で、最も危険な国となってしまっている。
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