11.人狼の結婚《文化》

 魔族・人狼。

「人外」に定義される彼らは、「人」よりもずっと長い寿命と、比べ物にならないほどの膂力を持ち、人の姿と狼の姿を持つ種族である。

 人の姿の時は狼の耳と尾、脚先が狼のままで、一般的な狼の獣人と大して変わらない。一方、狼の姿は一般的な狼よりもずっと大きく、群れの長ともなると成人男性と目線が同じ高さになるほどである。

 彼らは群れで生活し、「人」と同じく集落を作る。但し、そうそう「人」が入り込めないほどの山奥を縄張りとしており、人の姿で過ごせる程度の集落を複数作り、季節ごとにそこを移動しながら生活する。


 人狼の寿命は二~三百年ほどだが、その枠を越えて長く生きた人狼は身体が巨大化し、狼王となる。同胞からは畏敬の念を持って崇められる存在だ。


 満月の夜に魔力が強まるのも特徴だ。強まりすぎて人の姿を保てないため、「人」の社会に紛れて生活している人狼は、満月の夜は人目を避けて遠くに出掛けるか、部屋に引きこもる。


「人」と大差ない社会と文化を持つ人狼は、結婚の際の慣習がとても興味深い。

 男性の人狼は、幼い頃から獲物の骨や、旅の途中で見つけた石などを集め、装飾品をたくさん作る。

 手作りで、当然出来が良い方がいい。

 そして伴侶となる女性といざ結婚という時、新郎は質素な衣装の上から今まで作った装飾品を身に着ける。

 新婦の方は質素なドレスのみで、二人は皆の前に並ぶ。

 そして、他の群れの者らが、新郎の装飾品を外し、一つずつ新婦に付け替えていく。

 それらの装飾品は、全て新婦の物となる。


 こうすることで、男性の人狼が女性の人狼を一生守り続けるという誓いの証となり、群れの者らからも婚姻を認められるのだ。


 人狼は比較的「人」に近い種族なので、「人」と共に生活している者も稀にいる。

 人狼と人間・獣人が結婚することももちろんある。

 その際の結婚式は、人狼式のものを執り行う事が多い。

 参列した者を始め、通りがかった人々もこの付け替えに参加することができる。

 見かけることがあったら、二人の新な門出の祝いに是非とも祝福を送ってほしい。

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