10.碧岩病《知識》
碧岩病(ヘキガンビョウ)は、「人」のみが罹患する病気である。
足や指先の爪・皮膚から始まり、身体が徐々に緑色の岩のように硬く変化し、激痛を伴う。
最終的には死に至るか、生き残っても変化の酷かった部分は再起不能か切除され、特に目まで回ってしまった場合は視力の回復は見込めない。
死んだ場合、徐々に腐敗していくわけだが、碧岩化した部分は普段よりも特に臭いが酷い。死体は炎で焼かれ灰にされた。
原因はヘキガンダケという、碧色の岩のような傘を持った食用キノコが、ある特殊な魔術と反応し突然変異したものを摂取する事によるものだ。
反応する魔術は複数存在し、今も研究が進められている。
この病気は空気感染し、子供や老人よりも、体力が有り余っている大人がかかりやすい。
その為、一度碧岩病が流行ると、治まった後の国力の疲弊がすさまじい。戦争の後よりもひどいとすら言われている。
度々猛威を振るっては、大量の死者が出る。
これらの理由から、ヘキガンダケを食べてはいけない。というのは世界共通の認識となっているが、それでもどこからか感染者が出ては、大量の死者を出す。
故にヘキガンダケは憎しみの目で見られるようになり、とある国では「ヘキガンダケ一つにつき銅貨3枚(食事一回分程度の額)」を支払い、根絶させようとした。
最初の発症者に心当たりが無い場合もあり、敵国が自国を弱らせるために仕掛けたのだ、という噂が立つ事もある。
碧岩病が猛威を振るったため、滅んでしまった国がある。
無事だった人々は国を捨て他国へと渡り、病で亡くなった者たちを弔う者はなく、死体の溢れたその国と地域一帯は、長い間死の土地として誰もが踏み入る事を躊躇った。
その国にも、もちろん治癒術師はいた。各国を旅し、人々から代金は取らず、多くの人々を治療し救った実力のある治癒術師だ。
その人はここでも苦しむ人々を助けるために尽力したが、結果はこの通り。
当の治癒術師がどうなったか知る者はいないが、恐らく死んでいるだろう。
最後にこの治癒術師を見た者はこう語ったという。
「頑張っても頑張っても嘲笑うようにバタバタ人が死んでいくもんだから、あの治癒術師はとうとう狂っちまった。」
この話は、碧岩病の酷さを語り継ぐ上でよく出てくる決まり文句となった。
清廉潔癖な治癒術師をも狂わせる、死の病気、と。
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