4.カラマリバチの蜂蜜糖《食料》
カラマリバチは世界に広く分布している蜂だ。個体数も多い。
生命力と適応力が強く、地域によって羽の色や活動時間など、ある程度の特徴の差はあるが、基本的な生体は変わらない。
それぞれの地域の名前を取って、〇〇バチと呼ばれる事もある。
カラマリバチの蜂蜜は常温で固形化する。
巣内は高温で、表面は厚い層で覆われてとても頑丈であり、高温の熱が外に出る事無く、周囲の生態に影響を与える事も無い。
その為、カラマリバチの蜂蜜は、巣から取り出した途端固形となる。
煌めきながらポロポロと零れ落ちるその光景は、舌だけでなく目も楽しませる事だろう。
だから、カラマリバチの蜂蜜は、「蜂蜜糖」と呼ばれるのだ。
カラマリバチの作る蜂蜜糖はとても美味しい。基本的に安価で手に入れやすい甘味で、固形化しているので持ち運びや管理もしやすい。旅人が好んで携帯食にする事も多い。
その上、カラマリバチは人を襲う事がめったにない温厚な種なので、養蜂も盛んに行われている。
そして、カラマリバチが集める花の蜜によって蜂蜜の味だけでなく、色も変わってくる。固形化した際の形も違う。
上流階級では、蜂蜜糖を食べられる宝石として楽しまれいる。色が美しく、形が綺麗で、味も良い蜂蜜糖は、当然高値で取引される。
養蜂が盛んなのも、これが理由の一つだ。
花の蜜で出来栄えが変わるのだから、養蜂を営む者たちは、当然花の育成にも力を入れる。
だが、どうしても特定の地域でしか育たない花があった。
その花で造られた蜂蜜糖は、艶めかしい深紅の色をしており、既に加工・カットされた後のように形の整った宝石のような固形になる。
口に入れるとすぐ溶けてしまい、ドロリとした舌ざわりにコクのある強い甘み、そしてぽーっとしてとても幸せな気分になるのが特徴だ。この多幸感には、一種に中毒性がある、と指摘されている。
だが、どの花の蜂蜜糖よりも美味しく、美しい宝石なのだ。
一度口にすると、誰もがもう一度食べたくなってしまうだろう。
その蜂蜜糖の原料となっているのは、とある大木に咲いている深紅の花だ。
この大木は根のほとんどが地表に露出し、天高くそびえ立っている。
カラマリバチの巣はこの大木の枝にいくつかあるだけなので、蜂蜜糖が欲しいなら、この木を登っていかなければならない。
だが、この蜂蜜糖はとても希少だ。ここでしか手に入らない。
一攫千金を求める者たちが蜂蜜糖を手に入れようと群がり、他の者を蹴落とし、時には殺し、獲物を横取りし、そうしてできた死体の山は、大木が根を這わせ養分にしていく。
だから、この大木の根には無数の白骨が巻き込まれているのだ。
屍山血河の上に咲く、深紅の花から造られた深紅の蜂蜜糖。
それが最高級の美味しさと多幸感を与えるというのだから、皮肉なものである。
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