3.呪いの封蝋《魔法道具》
強い効果を発揮する魔法道具という物は数多くあるが、大抵はとても貴重で数が少なく、そうそう市場にも出回らない。
どんな分野の魔法道具も、基本的に術者が使用し、使用者の手には渡らない。
そしてこういった物は、特定の術者しか所持していない事が多い。
術者が独自で研究・製作しているからだ。
そんな貴重な魔法道具の一つに、呪いの封蝋という物がある。
真珠のきらめきの中に金箔が混ざった封蝋で、数種類の色がある。封蝋をした際も上品かつ高級感のある仕上がりの為、上流階級で使用しても違和感がない。
むしろその効果の高さから、上流階級が呪術者に依頼して使用される事が多い。
この封蝋を使用した手紙を開封した者とその周囲には惨劇が起こる。
怪我や死ぬ程度では生ぬるいと言わんばかりの地獄が降りかかるのだ。血の断絶は確定と言っても過言ではない。
それほどの効果を発揮しながらも、この際の依頼料はそんなに高くはない。
何故なら、この封蝋は印璽した家紋の一族にも降りかかるからだ。
血が断絶はしないまでも、家は没落し、潰える事が多い。
代償が大きいからこそ、多用されないのだ。
ならば適当な人間の手に金を握らせ印璽を借りるなり、秘密裏に使用して共倒れを狙うなりする方法もある。実際にそれを思いつき、実行した貴族の依頼者がいた。
その依頼者は、とある下流貴族に目を付けた。
呪いの対象者に向けて仕事として手紙を出させ、自然なやりとりに見せかけたのだ。その際に依頼者の前で手紙を書かせ、呪術師に封蝋を担当させた。
依頼者にとってこれは一石二鳥だった。愛娘が、この下流貴族の後継ぎの少年に懸想していたからだ。
対象者の一族は途絶え、手紙を出した下流貴族の家はわけもわからないまま没落し、運の悪い事に戦争に巻き込まれてそのほとんどが命を落とした。
生き残ったのは後継ぎの少年だけだった。
少年は呪術者の元を訪れた。己の家紋の印璽を握りしめて。
彼が出した手紙の宛先は、依頼者の貴族の愛娘だった。
封蝋の色は、愛娘の好きな赤を使用した。
手紙を受け取った彼女は、手紙を読んだ直後に自ら命を絶った。
その後はまるでドミノ倒しの様に、依頼者の一族はあっと言う間に途絶えた。
その後、少年がどうなったかは誰も知らない。
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