やっと謎が解けた!

ネコ エレクトゥス

第1話

 メジャーリーグ、アナハイム・エンジェルスの大谷翔平君が夏場大スランプに陥った。見ていてかわいそうになるくらいのスランプだった。まったくボールに当たる気がしない。テレビの解説者もそのことをずっと気にしていて原因探しを試みていた。結論は「よりボールを引き付けてキャッチャーサイドで打とうとしている。ただそれが空回りしている」ということだった。見ていてそれが正しいことはよくわかるのだが、それだけでは説明できない何かがあるように思えた(ちなみに僕の知り合いのある人は「アメリカに行って肉を食いすぎたことが原因じゃないか?」と言っていたが、どうなんだ?)。

 そんなことをやっているうちにシーズンが終わってしまった。


 先日シーズンが終わって大谷君の一年を振り返る特集をNHKのスポーツニュースでやっていた。そこで大谷君の攻略法をデータで分析するのコーナーがあったのだが、これが驚きだった。

 結論から言うならば、シーズンが深まるにつれ相手投手は大谷君にストライクゾーンで勝負しなくなった。つまり勝負を避け始めた。大谷君がただの優秀の選手の一人ではなく、リーグ最高峰の選手の一人と認められた証だった。野球ファンとして、一人の日本人としてこれほど嬉しいことはない。ただ大谷君がそのように評価されることがどうしてあの大スランプにつながったのか?自分に対してボール球が多くなっていることは当然本人が一番自覚していただろう。そこでいくつか理由が考えられる。

 まず野球選手というのはとにかく打ちたい人たちなんだということ。イチローさんもそうだった。四球で塁に出るよりはチャンスがあれば打ちたい。特にベテラン選手ならともかく大谷君のような若い選手ならなおのこと打ちたいのだろう。

 次に大谷君の前のバッターがリーグ最高の選手であるトラウトであることも関係がありそう。トラウトはまともに勝負してもらえないので四球が多い。そこで塁に出たトラウトを何とかホームに返したい。また大谷君がそういう場面で結果を残すことが増えれば当然相手はトラウトと勝負をして打ち取ることを考えていかなくてはならない。ただそうなるとトラウトのほうに分がある。

 最後に今シーズンのエンジェルスのチーム編成も影響がありそう。大谷君の後を打つバッターが全く安定しなかった。トラウトが四球で塁に出て大谷君も四球で続いても後が全く怖くない。なおのこと大谷君が結果を残さなくてはならない。

 これらのことを総合すると夏場のスランプの時期、大谷君の頭の中ではこんなことが起こっていたのではないか。


 ボールが投げられる。

「たぶんまたボールゾーンで勝負してくる。だから打っちゃいけない。絶対に打つな。見逃すんだ!でもストライクゾーンか?やっぱり振りたい!」

 空振り。三振。

 見ていて僕か感じていた違和感というのはつまり、大谷君は「打つためにボールをぎりぎりまで呼び込んでいた」だけでなく、「打ちたくないからボールを手前まで呼び込んでいた」のだった。


 来シーズン、エンジェルスは名将マドン監督が新しくチームを率いることになる。チームの問題がどこにあるかもわかっている。そうなると大谷君を取り巻く状況も変わるだろう。大谷君はどんな活躍を見せてくれるのだろうか。

 来シーズンが待ちどおしい!

 

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