Ne.35『有休取りたいらしくて、閉幕くん』

根岸「なにこのセット……、テーブルと、正面に椅子って。面接?」


バタン


佐原「根岸、待たせたな!」


根岸「ああうん、まあいいけど」


佐原「ちょっと準備に手間取ってな。よく3日も待ってたな根岸」


根岸「まあよくなかったわ。3日も待たされてたのか!」


佐原「ふっ、そう怒るな、待ってたかいはあるぞ。そりゃもうアマゾンギフト券が500円分くらい当たったときの喜びのごとく!」


根岸「最高に微妙だな。嬉しいけど。――んで、何今日、面接でもすんの?」


佐原「そのまさかさ!」


根岸「まさかとは言ってないんだけどな」


佐原「春、それは新しい出会いの季節!」


根岸「大げさなポーズ決めてなんか語りだした」


佐原「新入生、新入社員、その他もろもろの新人があらゆる場所へとめり込む季節!」


根岸「めり込んだか」


佐原「サハネギにもめり込みます!」


根岸「めり込むのか」


佐原「新入サハネギの季節だからな」


根岸「語呂が悪い」


佐原「ついにこのグループも人が出たり入ったりするようになるわけだよ。アイドルグループみたいだな! 最終的には48人とかになる! サハネギ48!」


根岸「多すぎる」


佐原「47人はペンギン!」


根岸「人じゃない」


佐原「癒し要員」


根岸「必要?」


佐原「まあまあ、そういうわけで人を増やそうというわけだよ。このグループも新陳代謝が必要だということだな」


根岸「代替わりするコンビって聞いたことないぞ。っていうかグループじゃないだろ、俺とお前しかいないんだから、コンビだコンビ」


佐原「うわぁ……」


根岸「なにさ。なにその引ききった視線は」


佐原「イジメいくない」


根岸「いくない、って、いやいないだろ俺ら2人だけだろ」


佐原「閉幕くんもチームだよ」


根岸「閉幕くんは人じゃないだろうよ」


佐原「閉幕くんも含めてのサハネギだぞ。彼がいなけりゃ終わらないんだ。むしろ根岸より重要。根岸なんて爪楊枝の持つところの凹みくらいの存在だよ」


根岸「なんのためにあるんだかわからん部分じゃないか」


佐原「デザイン?」


根岸「なんかあるんだろう、知らんけど」


佐原「まあ、根岸にもなんかしら役割あるだろうけどさ、知らないけど」


根岸「いやいやいや」


佐原「どうもー、佐原と閉幕、2人合わせてサハネギです!」


根岸「ネギ消えてる」


佐原「幕が長ネギでできてるから大丈夫」


根岸「ネギくさそう」


佐原「ま、冗談はさておき、4人めの新人の面接をしたいと思ってね、今日はそのための日というわけさ」


根岸「閉幕が3人めなのは冗談じゃないのか」


佐原「入っていいよー」


暗転


根岸「暗くなった! 停電か!?」


佐原「彼が新人」


根岸「なにおう?」


佐原「暗転くん」


根岸「真っ暗じゃないか!」


佐原「場面の切り替えのときとかに活躍してくれる。輝く期待の新人さ!」


根岸「真っ暗だよ、輝いてないよ。とりあえず明かりつけよう」


佐原「あー」


根岸「なに」


佐原「明転くんは今日の面接は辞退してる」


根岸「え、暗いままなの?」


佐原「まあちょっとこのまま進行しよう」


根岸「漫画やアニメだったらえらいことだぞこれ! 放送事故か最強の手抜きだ!」


佐原「文字でよかった」


根岸「よくはない」


佐原「はいじゃあ暗転くん、引っ込んでていいよー」


根岸「お、明るくなった」


佐原「というわけで次の新人候補です」


根岸「まだいるのか」


佐原「入っていいよー」


バタン


根岸「……」


佐原「彼がバタンくん」


根岸「バタンくん!?」


佐原「ドアの開閉の擬音を担当してくれる。音響さんだな」


根岸「……じゃあ、最初から居たんじゃないか擬音くん? 最初、佐原が入ってきたときにバタンって擬音鳴ってたよな」


佐原「あれはドアを閉めた音」


根岸「……この子いらなくない!?」


佐原「うわ、根岸ひどい。ひどすぎる。面と向かってそういうの言うもんじゃないよ。ああほら泣いちゃった」


根岸「えぇ……、なんかごめん……」


佐原「よしよし、アメちゃんあげるからね。じゃあ引っ込んでいいよ。はい、はいはい、じゃあねー」


根岸「……必要?」


佐原「音響は必要だろ、どんな漫才コンビもコントユニットもお笑いエターナルも、舞台や番組を一緒に作り上げるスタッフあってのものだぞ」


根岸「お笑いエターナルって何」


佐原「というわけで、次の新入サハネギ候補生、どうぞー」




根岸「……」


佐原「……」


根岸「……」


佐原「……」


根岸「何、この間」


佐原「いや来てるからもう。空白くん」


根岸「空白くん……」


佐原「お笑いにおいて『間』の重要性というものは既に知っての通りだ」


根岸「うん……」


佐原「空白くんの『間力(まりょく)』は非常に高い。今回の新人候補の中でも最もステータスが高かった。使える間法も多岐に渡り、攻撃から補助まで多くの場面で活躍が見込めるだろう」


根岸「間力……」


佐原「難点があるとすれば、ちょっと居るのがわかりづらいことくらいだ」




根岸「ん?」


佐原「こら! 自己主張すると不自然な間ができるだろ!」


根岸「ああ上の空白は彼が自己主張したのか」


佐原「お前はあくまでもサポートなの! 裏方なの! そこをわきまえてないなら帰れ!」


根岸「帰らされた」


佐原「最近の空白はわかってないわ。俺の若い頃なんてなぁ!」


根岸「最近の空白って何だ」


佐原「いよいよ最後の新人候補となりました。4番、緞帳」


根岸「仮装大賞みたいになってる」


緞帳


佐原「あ終わる終わる! 待って待って」


根岸「幕じゃないか」


佐原「幕だけど、緞帳くんだよ」


根岸「幕との違いがいまいちわからん」


佐原「ああ、新人ってなんかみんな同じに見えるよね」


根岸「いやそういうことじゃなくて。……っていうか幕はもういるだろ、閉幕くんが」


佐原「いや有休取りたいらしくて、閉幕くん」


根岸「有休出るのか閉幕に!」


佐原「そりゃ労働者の権利だもん。出るよ有休は。しかも年5日は消化してもらわなきゃ俺たちが怒られるんだぞ」


根岸「雇われだったのか閉幕くん」


佐原「だから新人を募集する必要があったというわけだ」


根岸「暗転くんはともかく、バタンや空白は閉幕くんの変わりにはならないだろ」


佐原「そこは仕事覚えてもらうから。新人の頃なんてみんなそんなもんだよ」


根岸「そういう、もんか?」


佐原「試しにほら、彼らに戻ってきて終わらせてもらおう。根岸なんかうまいこと言って」


根岸「むちゃぶりが過ぎる!」


佐原「うまいこと言わないと終わらないでしょサハネギ」


根岸「割とそうでもないものが多い気がするけど……」


佐原「なんかじゃあほら、適当なツッコミでもいいから。いつものでもいいよ? シャンプーってリンスの味するのかよ! ってやつ」


根岸「言ったことない!」



バタン!



佐原「……あー」


根岸「なんか俺が怒って帰ったみたいになってない?」


佐原「なったね。――じゃあバタンくんは不採用と。はい次。根岸ツッコミはい」


根岸「またやるのか。というか空白くんのは先が見えたぞ」


佐原「すごい寒いこと言ったみたいになるなたぶん」


根岸「緞帳くんか暗転くんかでいいんじゃないか? というか閉幕くんは今日休みなの?」


閉幕「いますよ」


根岸「喋ったぁぁぁぁぁぁぁ!」




バタン

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会話シチュエーションコント『サハネギ』101~ サハネギの人 @sokobake

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