姉妹でじゃれてる感じ?
神聖国・都の郊外
「ム〇カ大佐よ~! オラに元気を~!」
「つまり視力を失って死ぬ運命が良いと?」
「そんな未来は嫌すぎる~!」
チカチカと光が弾ける僕の視界はまだ使い物にならない。
だから地面に寝そべっているわけだけど……本当にこの目は大丈夫なのだろうか?
「悪魔よ」
「何よ?」
「だから僕の膝に」
「実はノーパン」
「座るな」
「動揺しないだと?」
僕の膝の上で悪魔が狼狽えた。
何を驚く? ノイエではポーラであろう?
「馬鹿かね君は? ポーラの裸ぐらいで動じる僕とでも?」
「うっわ~。人として、むしろ成人男性としてどうかなって思う言葉をありがとう。おまわりさ~ん。ここにロリが居ます」
「ロリちゃうわ」
「ただの変態が居ま~す」
「誉め言葉だね」
「認めるとかっ!」
悪魔が普通に驚いた。
「で、悪魔よ」
「何よ?」
「うむ。僕ほどの変態見学者になるとだね」
「どんなマニアよ?」
「主に君のような変態をだね、ぐふっ」
悪魔の爪先が僕の鳩尾に。
「誰が変態よ?」
プンスコ怒っている感じで悪魔の爪先が僕の鳩尾をグリグリと。
「鳩尾はいかん」
「うっさいボケ」
「はいはい。で、悪魔よ」
「だから何?」
しいて言うなれば僕ではなくて君だろう?
「どうした? 病気か?」
どこかこうノリが悪い。
いつも通りノリは軽いんだけど全体的に重い感じだ。意味が分からないけどそんな風に感じる。
「この体はいつも元気よ」
「ならあの日か?」
自称ポーラの体は大人らしいから、
「ダブル爪先アタック!」
「芸術点が加算されますっ!」
鳩尾の上に両方の爪先を置いて立ち上がった悪魔を全力で追い払う。
死んでしまうわ!
「死ねば良いのよ」
「へいへい」
いい加減な返事をしながら体を起こす。
チカチカしていた視界が薄っすらと色づきだしてきた。このまま待てば目が見えるようになるのか?
「自分の回復力にビックリ」
「……そうね。本当にビックリよね?」
「めっちゃ投げやり!」
酷いや悪魔さん。ボケを殺すだなんて。
「まあ姉さまの“魔法”と生まれ持った特殊能力のおかげよね。変だと思ったの……姉さまの力を封じた時に死んだアンタが生き返るとか、普通に考えればあり得ない訳だし」
「ん?」
何か聞き流してはいけないハードなパワーワードを投げつけられたような気が?
「死んでるの?」
「……」
沈黙だ。めっちゃ沈黙だ。キーンと耳が痛くなるほどの沈黙だ。
少し耳を澄ませるとノーフェさんの絶望じみた声が聞こえて来るけど、今は静かなものだ。
「悪魔よ?」
「お掛けになった電話は、」
「お前の尻に自然薯を突き刺すぞ?」
「いや~! 絶対にかぶれちゃうからっ! ポーラのお尻がかぶれて大変なことにっ!」
大声を上げて地面の上をのたうち回る悪魔が……ピタッと動きを止めた様子だ。そんな感じがする。
「事故だったからセーフ」
「アウトだろう?」
誤魔化す気なしか?
「……生き返ったからセーフ」
「だからアウトだって」
事実を認めたか?
「記憶は改ざんしてあるから……セーフ?」
「聞くなと言いたい。つかアウトだって」
「そんな~」
膝から崩れ落ちたのであろう音を発する悪魔が僕の傍に居ます。
「そもそも殺すなって」
「うん事故」
「事故だかったら人を殺してもいいとか言うつもりか?」
「ん~。生き返っているからセーフ?」
「おひ」
「あはは~」
意外と笑い声が近い。耳元と言うか吐息が降りかかる距離だ。
「いや~。死んだかなって思ったんだけど、直ぐに蘇生したからセーフよね?」
「それを聞く限りお前ってば何もしてないよな?」
「あは~」
笑い声がめっちゃ近い。
この野郎……こっちの目が死んでいるからって遊んでやがるな?
「この辺かっ!」
「にゃん」
適当に手を伸ばしたら悪魔の確保に成功した。
そのまま抱き寄せると、
「そんな兄さま。ポーラの胸に顔を埋めて何をする気?」
「胸だったの? てっきり幼児体型なお腹かと」
「妹からの本気クレームな膝っ!」
「顎がっ!」
下から上へと相手の膝が僕の顎を穿った。
大きく顔が仰け反り、ワシッと小さな手が僕の顔を左右から挟む。
「あん? 誰のお腹がポッコリだと?」
「お前本当に悪魔か?」
「弟子への暴言を笑って許せるほど人間腐ってないのよ」
「お前は腐り果てた腐女子だろう?」
「思わずの二発目っ!」
「ガッチリ顔をガードしてっ!」
喋り終え確り口を閉じてから顎を蹴られる。これぞお約束と言うものだ。喋っている最中に蹴るのはマナー違反だ。それはガチ勢がすれば良い。僕らはお笑い枠なのでちゃんとルールは守る。
「胸よ胸! 柔らかくてプニッとしているでしょう?」
「へこっと」
「まだ言うかっ!」
驚きの三発目は、咄嗟に手を動かしてガードする。
甘いな悪魔よ? そう何度も膝を受ける兄だと思った、
「膝はもう片方あるのだよ」
「そうでしたっ!」
ガードしている手に体重を乗せてもう片方の膝が来た。
つか本当にポーラの身体能力は無駄に高性能だ。お前はサーカス団の団員か? それともダンサーか?
掴まれていた頭を放され、僕はまた地面へと倒れ込む。
「ん~。発散した」
「おひ」
これこれ悪魔よ。僕を蹴ってストレス発散するでない。
「いや~これでも少しは罪悪感とかあったのよ?」
「本当かよ?」
「マジマジマジ……」
「かるっ」
言葉が軽すぎて誠意を感じない。
「でもどっかの馬鹿は新しく得た祝福が……これはまだ秘密にした方が良いかな? 記憶を消して良い?」
「消すなよ」
「え~。だってこれを知られるとポーラ困っちゃう~」
「ポーラはその体であってお前は悪魔だろう?」
「え~。だってポーラ、それを知ったらお兄さまを襲っちゃうかも? それもかなり全力で」
「止めれ~」
実際ポーラに襲われたら僕ってば勝てない気がします。
「なら弟子の記憶を消しとく」
「そっちなら」
うん。ポーラが知らなければ問題あるまい。
「ちなみにどんな力なの?」
「……よ」
「はい?」
聞こえませんでしたが?
「あれ? ……よ。どう?」
「言えよ」
「あ~。たぶんあれの妨害かな」
ん?
「性悪ノイエの自称姉?」
「かな~」
「どうして邪魔をする?」
「都合が悪いからでしょう」
そう告げてきてから、パチッと指の鳴る音がした。
「……いや~これでも少しは罪悪感とかあったのよ?」
「本当かよ?」
「マジマジマジ……」
「かるっ」
相手の言葉が軽すぎて誠意を全く感じない。
ん? 何かさっきも似たような会話をしたような……これがデジャヴか?
「違和感なく生活できているんだから問題無いでしょう? 何より死んだと言っても数秒間心臓が停止していたぐらいだしね」
「それって死んだことになるの?」
「医学的にはなるわよ? 1分近く……数十秒単位なら!」
「おい待て。今何を誤魔化した?」
「え~。ポーラ知らな~い」
この悪魔……僕が死んでいた時間を誤魔化そうとしているな?
「覚えていろ? 色々終わったらお前を泣かせる」
「はいはい。お詫びを込めてあの貧乳魔女の恥ずかしい映像を無修正でたっぷりと見せてあげるわよ」
「ゴチになりますっ!」
その権利は前からの約束で得ているが、
「フルサイズで?」
「フルサイズで」
「ゴチになりますっ!」
ならば許そう。大いに許そう。
「で、悪魔よ」
「何よ?」
いつも通りの声のトーンだ。
「気は紛れたか?」
「……余計なお世話よこの変態」
起こった感じで悪魔の足音が近づいて来る。
ヤバい。こっちの目はまだ回復していない。遠距離攻撃でもされたら、
「……やはりボリュームが」
「殺すわよ?」
正面から抱きしめられても嬉しさが少ない。
ノイエの大きさになれてしまうと普通の大きさなんかじゃ満足できない。
少なくとも胸で満足させたいのであれば、レニーラやホリークラスを、
「悪意を感じているからヘッドロック」
「ギブギブギブギブ」
相手の手をタップする。
頭を絞めるのはヘッドロック……正解か。
「で、余裕こいてるけどあっちはどうなの?」
目がまだ不調なので見えんとです。
「ん~」
だが相手の返事は若干渋い?
「姉妹でじゃれてる感じ?」
あっちもか……そうするとこっちもじゃれていることになってしまうな。
~あとがき~
記念すべき2000話なのにいつも通りのダラッとした感じ…これがこの物語の基本ですw
不調の刻印さんは…まあ色々と思うこともあるのでしょう。
過去のあれは目の前に居て…そう言えばあっちもどうなってるんだ?
まずヒロイン姉妹のじゃれ合いからです
© 2024 甲斐八雲
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