あの馬鹿自由が~!

『緊急だよ! ちゃんとみんな読もうね! 読まずに削除は後でお仕置きだからね!


 さあ、みんな大好き自由ちゃんが本日は特別にメールをカキカキしちゃったわけだ。

 その理由は? うん。とっても簡単だよ。どうも世界の壁に穴が開いてるっぽいんだ。そうじゃないととある話の辻褄が合わないんだよね。


 さあ大変だ! どうしよう?


 これこれ私たちよ。たぶん今頃このメールを読んでブチ切れたいることだろうが……そもそも私も被害者だ。だから私にクレームのメールはやめたまえ。いや本当にマジで。

 ちなみに“何の話~?”とか能天気なことを言っている私が居たらマジビンタだからね。あとで剣山を握りしめた私のハードなビンタをいっぱいプレゼントしてあ・げ・る。


 でもでもど忘れってあるよね?


 だから心優しい自由ちゃんはみんなに語ってあげるんだよ。


 この世界と他の世界には干渉を妨げる壁が存在している。


 これは過去の三大魔女わたしたちが研究した結果から導かれた結論。

 その壁が存在しているから私たちは地球に戻れない。と言うかあの壁は“人”が戻ることを想定していない。つまり一度こっちに来た人は本来ならば帰れない。


 でもうっかり自由ちゃんはとある案件をスコーンと忘れていました。


 ウチのお兄さまってば一度戻っているのよね? お姉さまもだけど……やっぱり専門外のことだとうっかりしがちよね。

 あの時は2人とも肉体が無かったから実行できたわけかもだけど……普通ならそれすら不可能なんだよね。いや~自由ちゃんうっかりうっかり。


 さあ問題だ。


 お兄さまもお姉さまも魂が尋常じゃなく頑強だ。

「頑強な魂なら誰でも異世界を渡れるのか?」と言うか“元”の世界に帰れるのか?


 答えは否だ。不可能だ。


 これは召喚の天才リーアの馬鹿が導き出した結論だ。

 あの召喚オタクにしてマニアしてクレージーが出した結論だからたぶん正解のはずだ。


 でもお兄様たちは一度元の世界に戻り、何故か母親の幽霊を連れてこっちに戻って来た。


 実の母親である鬼さんがこっちに来たのは、お姉さまの力が関与しているんだと思う。

 あの無意識チート様は、お兄さまを探していた時にその近しい人……つまりお兄さまの遺伝子の半分を持つ母親を呼び寄せて拉致って来たんだろうね。


 おまわりさ~ん。幽霊を拉致った罪ってどんな罪状が適用されますか?

 むしろ誉められそうだね。おっと脱線脱線。


 つまりその時点で間違いなく世界と世界を隔てる壁の存在が無くなっていたことになる。


 うんうん。みんな分かったかな?

 自由ちゃんが結構本気で頭を抱えている事態……つまり誰が世界の壁を壊したのか?


 うんうん。あはは……そんなことが出来るのはたぶん1人だけ。召喚の魔女だね。


 あの馬鹿は天空城にこれでもかってヤバい魔道具を詰め込んで旅立った。何処へ?


 この星を出て別の星へなら良かったんだけどね~。たぶん異世界へ強制的に転移したんだ。

 天空城を武装し、頑強な体を作り出して世界を隔てる壁を破壊して他の世界へ転移した。


 それは何故か? たぶん私と馬鹿な姉を探すためだ。


 あれの前から姿を消した私たちを探そうとして異世界へ飛んだのだろう。

 何でそんな結論を導き出したのかは……あのヤンデレちゃんの思考回路なんて私にも理解できないしね。うんうん。あれは本物のアレだからね。うん。


 まあそれ自体は今は問題じゃない。

 結構大きな問題だけど今はそれはどうでも良い。


 問題は世界と世界を隔てる壁をあの馬鹿が破壊したから、この世界に魔竜が召喚され世界を渡って来れたんだね。普通なら世界の壁に阻まれて渡ってこられなかったはずなのにね。


 あ~自由ちゃんも馬鹿だね~。

 つか平和ボケ? こんな簡単な大問題を見逃していただなんてね~。

 ホント自分の平和っぷりに反吐が出るよ。


 まあ反省だったら全部終わってからすれば良いんだけど、問題はこれからどうするかだね。


 うんうん。そんな面倒臭いことは統括に丸投げして自由ちゃんは自由を満喫する~!


 だから統括から対処を任された人! 頑張ってね!


 でわでわ、まったね~!』



「ふざっ……ふざけるなよっ! あの馬鹿自由が~!」


 統括から送られてきたメッセージに添付されていた物を見た彼女は激怒した。たぶん走れメ〇スのメ〇スぐらいに激怒した。今なら国王だって殴り飛ばしに行けそうだ。でも待って。大切な妹の結婚式が近いのにそんなことをしたらどうなるのかぐらいメ〇スは気づかないの? 馬鹿なの?


 そんな子供でも気づきそうなことをやっちゃったおかげで彼の友人は友人と言うだけで処刑手前の状態で放置プレイだ。つか関係ないのに処刑手前だ。

 メ〇スがバックレると思ってもおかしくないだろう? だって友人は全く全然関係ないのに処刑手前なんだから。


「つまり第三者が不幸だって話か~!」

「ふへ?」

「つまり○リリンのことか~!」


 怒り狂ったフード付きのローブ姿の人物は足元に転がっている存在に足を向ける。


 グリグリだ。爪先である部分をとっても強く刺激をしたら、ぐったりしていた人間が元気いっぱい飛び跳ねる。


「もう無理っ! 死んじゃうっ!」

「大丈夫! 人間は死にそうかと思ったところからがスタートラインだから!」

「そんなスタートなど、」

「煩い黙れ」

「あびび~」


 またフード付きのローブ姿の女性……刻印の魔女は爪先で相手の尻を刺激する。


「くう~!」


 全身をビクビクと引き攣らせ、1人の女性が床の上で大の字になる。


 全裸だ。色々とあって全裸だ。

 そしてその人物の体にはあちらこちらに長い針が打たれている。

 鍼灸で使われる針よりも長いがそれはとても細い。そんな物が女性の全身に打たれているのだ。


「お前がさっさと注文しているモノを作らないから私に新しい仕事が振られるのよ!」

「あびび、あびっ! もう無理……本当に死んじゃう」

「死に晒せっ! そして三途の川の向こう側で見ちゃいけない何かを見て来いっ!」

「あびびびび……」


 爪先で尻や太ももを押したり揺らしたりするだけで相手は口から泡を吹いて全身を震わせる。


 流石感度が100倍になる魔道具だ。たぶんそろそろチャクラ的な何かが開眼して見てはいけない何かをこの魔剣しか作れない人物に提供してくれるはずだ。


 さあ頑張れ! 無駄にエロい体をした引き籠りよ!


「そんなにエロい尻を震わせて男を誘う暇があるなら想像の斜め上を行き過ぎた魔剣を作り出せ~!」

「あひひ」

「そんでもって新しく増えた私の仕事が楽になる魔剣も作れ~!」

「あひ~ん」


 強すぎに刺激に彼女……エウリンカは大きくのけ反り全身を震わせる。

 その振動でまた感度良好な体には新たなる快楽の波が押し寄せるのだ。


「人間最後は快楽の向こう側に何かを見つけるのよ! さあ何かを見つけて目的の魔剣を生み出しなさいよねっ!」

「あふっ」


 艶のある声を上げてエウリンカはまた大きく体を震わせた。




「うわ~。人材不足だからって“折檻”に世界を隔てる壁の調査をさせるとか統括も無理をするわ~」


 思わず呟いて刻印の魔女はテーブルに肘をついて大きく息を吐いた。


 確か折檻は魔剣工房と呼ばれる人物に魔剣を作らせる任務に就いているはずだ。

 どんな、何の、どのような魔剣を作らせているのかは知らないが、あれが出向いて仕事をしているとなると、あの無駄に巨乳でエロいあれは今頃快楽の向こう側を見ていることだろう。


『壁を越えた向こうに何かがある』ってよく折檻が言っていた言葉だ。だから選ばれたのだろう。


 口は禍の元だと気付き刻印の魔女は苦笑した。


 壁の向こう側とかはたぶん言葉の綾のはずだ。

 折檻は性格的に難はあるが優秀だ。何せ自分だ。基本スペックは同じだ。

 ただその性格はSだ。サディスティックだ。刻印の魔女の攻撃的な一面が色濃い人格だ。


『あ~。あれに折檻されているあの無駄にエロも可哀想に……』


 テーブルに頬杖をついて刻印の魔女は息を吐く。


『そもそも何であれって折檻になったんだっけ?』


 折檻なんて普通に考えておかしい。何をどうしたらそんな風になる?


『まあこんな魔眼の中だからかな……』


 呆れつつ彼女はまた息を吐く。


 目の前では鬼と弟子が……何故か乳飲み子の扱いについて講習をしている。

 いつか抱けると信じている2人の妄想力が凄い。本当に凄い。


『さてと。外はどうなってるのかな?』




~あとがき~


 折檻が折檻と呼ばれるようになった理由?

 そんなの決まっています。誰かがそう呼んで周りが納得したから。で、言い出したのは?

 当たり前です。そんな自由に振る舞う人なんてね…。


 外はどうなっているのだろう? えっ? 結構重要な話が出ている?


 ん~。頑張れ刻印さんw




© 2024 甲斐八雲

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