これでも毎月ちゃんと!
神聖国・都の郊外
「兄さま~。姉さま~。こっちよ~」
全身を使い僕らを呼ぶ悪魔を発見。
「くたばれこの悪魔!」
「情け無用っ!」
特大のハリセンを悪魔に向かい放って満足する。
お願いだから著作権的に色々とアウトな物で遊ぶな。
ん? 異世界に来たら普通作るだろう?
気持ちは分かるがお前は知らないな。著作権は異世界をも越えるんだぞ?
「マジで!」
「マジマジ」
復活した悪魔と合流し……とりあえず悪魔。そこに正座。
重りはその辺の石で良いか?
「良くないわよっ!」
黙れこの腐れ外道がっ!
「むがぁ~!」
全力の重力魔法で悪魔を地面に釘付けさ。
「あん? お前……僕をあの暗闇に投げたよな?」
「あは~。そんなこともあったとか無かったとか~」
「マシマシで」
「いやぁ~! ポーラの両足が大変なことに~!」
「だが許さん」
「鬼かっ!」
あん? 決まっておろう?
目には目を、歯には歯をの精神が僕には宿っているのだよ。
「何処のハムラビ法典っ!」
気にするな。君が嫌う天空高くに投げることはしない。つかく空腹で目を回しているからノイエにも頼めないしな。
「セーフ。私セーフ」
「否。アウトである」
ポキポキと指を鳴らして軽く首も鳴らす。
お前にかける優しさなど微塵も無い。
「いやん。優しくして……ポーラ初めてなの」
正座の姿勢で重力を食らっていても股を広げてスカートをたくし上げようとする悪魔の根性は素晴らしい。実に素晴らしいよ。
「確かこの辺だっけ?」
「はい?」
ミニハリセンを作り出し、針の穴を通すコントールでそれを悪魔へと投げつける。
「のほっ! 下腹部へのダイレクトアタック!」
「ほれほれ悪魔よ」
またミニハリセンを作る。
「お前はこのハリセンを何個くらい耐えることが出来るかな?」
「ふっ……その程度の攻撃なんて、あれ?」
何個か纏めてピンポイントで悪魔の下腹部を狙う。
全弾悪魔の下腹部……膀胱を狙った攻撃である。
「らめぇ~! それ以上の刺激はポーラのグラスハートにトラウマレベルの大打撃がっ!」
「はん……知らんな」
追加でまた投げる。
「あは~ん。刺激がっ! ポーラのポーラから大変恥ずかしい何かが溢れちゃう!」
「逝ってしまえ」
「らめぇ~!」
必死に耐える悪魔が……まあ本当に粗相をさせるはずもないのでこれぐらいで許してやろう。
「アルグ様」
「はい?」
青猫の頭上でグッタリしているノイエが顔を上げた。
「お腹空いた」
「うむ」
忘れていたよ。
「これ悪魔よ」
「らめ……何か生まれちゃうっ」
顔色を悪くした悪魔がプルプルと震え……そっちはダメだ。色々とアウトだ。
魔法を解除したら悪魔は脱力して地面の上で横になった
「シクシク……ポーラ、汚れちゃったよ」
「うん。お前は基本汚れだしな」
「ちょっと待った! 誰が汚れよ?」
「悪魔」
「マジで泣かせる」
あ~。これこれ今の僕は股間に大ダメージが入っているからあまり君とは遊べないのだよ。
とりあえず追い打ちの重力魔法で悪魔の動きを鈍らせておく。
「何かズルい」
知らんよ。
「で、ノイエの空腹問題が発生しているわけだが?」
「うふふ。そんな時はこれ」
悪魔が笑いエプロン裏側に両手を入れてモゾモゾと漁りだす。
「ペガサスのまるやき~」
何故か青猫が声を発してポケットからペガサスの丸焼きを取り出していた。
って、フェイントかっ!
「うふふ。その猫型はポケットは四次元オーブンなのだ~!」
「うわ~。全力で技術の無駄遣い」
「チッチッチッ。違うは兄さま。これがロマンと言うものよ」
立てた指を振りつつ悪魔が異世界の言語を放って来る。
そんなロマンなど知らない。出来たら僕はロマンよりマロンの方が良いな。
「そんな訳で姉さま。それを食べて」
「おかわり」
「……」
悪魔の目が点になっていた。
それはそうだろう。猫型がポケットから取り出し頭上に掲げたペガサスの丸焼きが、会話をしている隙に無くなっていたのだ。
もうこれはフードファイトとか言うレベルではない。ノイエの胃袋はブラックホールか?
「悪魔追加」
「あ、うん」
僕の声にカクカクと頷いた悪魔が命令し、猫型がまたポケットからペガサスの丸焼きを取り出す。と同時にノイエが齧り付いてモグモグと食べていく。
何だろう? 一応お肉だよね?
それをおにぎりでも頬張る感覚でノイエが食して行く。
恐ろしい速度だ。それでいて確実に骨は避ける。
「おかわり」
「もう無いから~!」
悪魔が絶叫した。
あ~。確かに回収したペガサスは2頭だったな。それをノイエは物の数分で食べてしまった。
ノイエ……本当に恐ろしい子。
「う~」
不満げにお腹を摩ったノイエが青猫から降りる。
地面の上に立った彼女は軽く背伸びをして……大きく欠伸をした。
「アルグ様」
「はい?」
「眠い」
こらこら食べてからすぐに寝ると良くないよ? まずちゃんと消化させてから寝ようね?
「ノイエ」
ただ僕が口を開く前に少し厳しめの口調でその声が響いた。
発したのは地面に座るノーフェさんだ。
「む~」
だがノイエは頬を膨らませると僕の背後へ移動する。
これこれノイエさん。僕を盾にするでない。僕の強度なんて段ボール以下だよ?
「アルグ様。頑張れ」
「無理っしょ?」
あの姉に勝つとか結構絶望的な気がするよ?
「……」
ただノーフェさんは額に手を当て頭を振っている。
ノイエの我が儘に手を焼く姉のような姿に……彼女の場合はそのものである。
「説得は君に任せるわ」
「はい?」
何故かノーフェさんが真っ直ぐ僕を見つめて来る。
「どんな手を使っても良いからノイエを光らせてくれるかしら?」
「うん。無理です」
我が儘モードのノイエを説得するだなんて無理なんですってば。
「世界が滅ぶらしいけど……それでも?」
「はい?」
何の話ですかそれは?
「そこの魔女が言うにはそうらしいわ」
「……」
僕の視線に逃げ出そうとしていた魔女がビクッと全身を震わせた。
「あはは……あはは」
「とりあえず重力」
「ありがとうございますっ!」
地面に磔になった悪魔への罰は後回しで良いか? 前の方が良いのか? 何よりあっちで座っているマニカは何を持っている? あれはキノコか?
そんなキノコ一本ではノイエの空腹は満ちないな。何よりノイエ的にはキノコは野菜だから食べたがらないしな。『食べるとピリピリするから嫌い』とか恐ろしいことを言っていたから僕としてもあまり食べさせたくない。
「で、悪魔よ」
「あははは」
全力で笑って誤魔化そうとしている。つまり義姉さんの言葉は事実らしい。
「お前……そのトラブルを持って来る体質を改善しろ」
「善処します」
返事だけは良いんだよな。この馬鹿は。
「……で、ノイエが光らないと危ないの?」
「あはは~」
また笑って誤魔化そうとしていたので膀胱に向けてミニハリセンを、
「危ないのっ! ポーラの膀胱と同じぐらい危険なのっ!」
必死に叫ぶ悪魔の様子からどうやら事実らしいな。
「で、ノイエに光れと?」
「お願いしますお兄さまっ!」
ガバッと正座からの土下座で……必死かよ。
「最終手段が無くもない」
「マジで?」
何その驚愕の目は?
悪魔くん。君は少し僕のことを軽んじていない……姉さんも同じ表情だと!
「ただそれにはポーラの協力が」
「……兄さま」
瞳から模様を消したポーラが土下座の姿勢で顔を上げて僕を見ていた。
本当に必至だな……つまりそれほどヤバいってことか?
「ポーラ」
「はい」
彼女を拘束している魔法を解いて、座っているポーラを立たせる。
僕の前に居るポーラを見つめ……気が重いが仕方がない。
「子供の親になってくれ」
「っ!」
僕の言葉にポーラが驚き両眼を見開いた。
「ポーラだとまだ若すぎる気もするが」
「平気です。問題無いです!」
何故かウチの妹さんが必死なんですが?
でもな~。ポーラが人の親とかな~。
「あれか? それとも帰国してからミネルバさんを説得して貰う方が」
「……」
何故かポーラの表情が絶望に染まった。何故に?
「……どうして?」
「そりゃ~。ミネルバさんが大人だから?」
うん。それにあの人なら人の親とか確り務めてくれそうな……ポーラさん?
膝から崩れ落ちたポーラが四つん這いになった。
「どうしてっ! こんなにも兄さまを慕っているのにっ!」
「あ~。その辺の感情は抜きかな」
「抜きでっ!」
うん。これに関しては要らないよな? 人の親になるのに必要なのはたぶん覚悟だろうし。
「覚悟なら出来てます! 任せてください!」
「だからポーラはまだ幼いんだって」
必死か? 妹よ?
「大丈夫です。これでも毎月ちゃんと!」
「はい?」
君は何を言っているのですか?
最近妹の言っていることが分からないお兄ちゃんです。
~あとがき~
主人公とポーラとの会話が噛み合っていませんが…まあお約束ですね。
と言うか刻印さんが遊びすぎるから1話で収まらなかっただと? ネタばらしは次回ってことで!
あとはあれしてこれしてそれすれば神聖国は終われる…あれ? 何か忘れているような?
© 2023 甲斐八雲
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます