今こそ君のその美しいパロを完成させるのだっ!

 神聖国・都の郊外



 そうそう。ノイエさん上手ですね~。凄いですね~。才能の塊ですね~。


「もっと褒めて」

「むぎょ~!」


 機嫌を良くしたノイエのアホ毛が止まらない。そして何かが吠えているが気にしない。

 頑張れポーラのボディよ。


 現在ウチのお嫁さんは、僕の指示に従いノイエが悪魔にパロなスペシャルを仕掛けている。

 レニーラの指導で柔軟体操を適度に行っているノイエの体は比較的柔らかい。そして何故か柔軟体操だけはサボり気味なポーラの関節は硬いままだ。つまりパロがとってもよく決まって拷問と化している。ところでパロって何だろう?


「はいノイエ。そのまま両腕を少し上に」

「褒めて」

「何をやってもお上手なノイエさんならそのまま両腕を、もう本当に上手。天才。僕は今、天才の所業を見ているぅ~!」

「んふっ」


 機嫌良さげにアホ毛を振るい、ノイエが無表情で悪魔に完璧に決めた。決め切った。

 流石の悪魔も声を出せずにいる。顔面を真っ赤にして声なき叫びを上げている。


「で、悪魔よ」

「……」

「あの雲の中身は何だ?」


 僕の肩に乗っている卑猥が言うには天界に住まうゴミの様な悪感情らしいが。


「言う! 言うからっ!」


 パロが頑なに閉じていた悪魔の口を開いた。凄いよパロよ。だからパロってナンデスカ?


「あれは雷帝よ!」

「偉いノイエさ~ん」

「んふっ」

「途中だからっ!」


 ノイエがノリノリで悪魔の両腕を上げようとしてブレーキを踏んだ。


 その絶妙な匙加減が天才的だよノイエさん。でもあまりサド気質な何かに目覚めたりしないで欲しい。あっでも女王様スタイルでノイエに罵倒されるのも……どっちだ? あの無表情はどっちが似合う? これは真面目に考える必要があるような気がするぞ? 論文を書いて学会に発表するべきか?


「きけ~! 私の腕が逝く前にっ!」

「必死だな悪魔よ」

「痛いのよっ!」


 そりゃそうだ。痛いことをしているんだから痛いに決まっている。

 それで痛くないなら君の何かが壊れている。大至急医者を呼ぶべきだ。


 あの超乳医者で問題無いのか?


 脱臼の類が発生しそうな気がするからあの医者で大丈夫だな。


 リグの専門がたまに何なのか怪しくなる時がある。外科で良いのか?


 傷口に塩を塗るような激痛を与えて治すという特殊魔法の持ち主であるが。


「で、あれは?」

「だから雷帝よ! イヴァン雷帝よ!」

「はい?」


 あ~ノイエさん。ちょっと腕を下げていただいて良いですか? 天才ノイエなら簡単でしょう? そうそう。本当にノイエってば天才なんだから~。


「で、オタクよ。皆まで語るが良い」

「……分かったわよ」




 全部語ると長くなるから簡単に語るけど、あれは私たち3人+馬鹿弟子で飲み会をしていた時にね……何よ? 昔は仲が良かったから一緒にお酒を飲むこともあったのよ。


 女性4人も集まればお酒ぐらい飲みながら自分の性癖暴露大会ぐらいするでしょう? 私の性癖? 言う訳ないでしょう? 


 いつも馬鹿弟子が一番手で性癖を暴露させてから、後は黙秘というのがお約束の流れだったのよ。


 あん? 弟子が可哀想?


 弟子なんて言う生物は師匠のオモチャにされる宿命なのよ。だから色々と社会勉強をさせてあげたというのに、あの馬鹿は何の不満を抱いて私に歯向かったのかが謎だわ。


 普通なら歯向かう?


 またまた~。ただの教育よ? 弟子への躾よ? それで歯向かうとか根性なさすぎでしょう?


 私への尊敬の念が無いからあれは馬鹿弟子のままなのよ。

 まあその話はこっちに置いておいて、そんな飲み会も終盤に差し掛かり、確か3日目の昼ぐらいに……飲み会って言うぐらいだから3日4日は普通飲むでしょう?


 何よりこの世界の酒精は弱いから酔うのに時間がかかるのよ。だ

 からいつも最終的にお腹がタポタポになったら終了なんだけどね。


 で、そんな終わりかけに誰かが言ったのよ。

『誰が一番邪悪な感じの魔法を生み出せるか?』ってね。


 私たちは全力でやる気を出して作ったわ。作ったのよ。もう見た感じ邪悪な魔法を!

 結果優勝は私の雷帝よ! 全ての弟子たちを集めて投票で決めたから間違いないわ!


 被害?


 あ~。うん。私たちってば些細な被害に対しては全力で目を瞑るって決めていたから問題無しよ。


 問題無いの! たかが国が何個か滅亡したぐらいよ!


 いらい。ねえさまごめんなない。


 ……こほん。それで優勝した私だけどあの魔法は本当に危ないと思って石像に封印して隠したのよ。ただ隠しただけだといずれ誰かが発見するかもしれない。だからある一定の条件を付けたのよ。安全対策としてね。


 その条件?


 あ~。うん。私の記憶が確かなら……同性の年下の子供をこよなく愛するある一定の水準の才能を持つ魔法使いが石像に触れると解放されるようにしたはずよ。


 何故消さなかったのか? 決まっているでしょう? クリエイターが自分の作品を消すだなんてできないのよ! たとえそれがどんな黒歴史だとしても消すことは無いのよ! だから机や箪笥の奥に封印して、いつの日か発掘されて悶絶するものなのよ! 分かれ!


 で、結局あの雲が何なのかって?


 だからイヴァンよ。イヴァン雷帝。帝政ロシアで残虐の限りを尽くした皇帝よ。

 ただイヴァンって響きが良くてそれに関する何かを思いながら魔法を作っていたら偶然あれを召喚できたのよ。ぶっちゃけ私も詳しい正体は知らなかったんだけどね。詳しいのが貴方の肩の上に乗っているから聞けば良いわ。もう聞いた? なら解決ね。


 さあお姉さま。もう私を解放して、




「ノイエ。そのままちょっと強めに締め上げてあげて」

「はい」

「のがぁ~! 騙したわね~!」


 人聞きの悪い。誰が全てを話したら解放すると言った?

 君の勝手な思い込みだよ。


 で、卑猥の話を統合すると……あら不思議。何故だかこの馬鹿な悪魔を叩きたくなって来た。


「ノイエ。そのまま固定で」

「はい」

「何を? 待って……ここで大型ハリセンは流石に酷いと思う訳です。ありがとうございますっ!」


 悪魔の頭を襲った大型ハリセンを消して少し考える。


 つまりあの雲は悪意の塊ということだ。その認識で間違っていないよね?


「正解だと思います」


 素直に頷く悪魔も認めた。


 なるほどなるほど。ならば確かにノイエが頑張ればどうにかなるな。たぶんなるな。


「問題はあれを祓わなかった場合はどうなる? こっちを見ろ悪魔。顔を向けて目を閉じるな。もう一発ハリセンボンバーを食らいたいらしいな?」


 通常サイズのハリセンを呼び出し、今度は下から上への軌道でスイングする。試打は大切だ。


「ちょっとお兄さまっ! その角度と位置だとハリセンがポーラのポーラにクラッシュするんですけどっ!」

「大丈夫。野郎なら禁じ手だが女性ならセーフだろう?」

「アウトだからっ!」


 それは知らなんだ。


「なら食らいたくなければこっちを見て最後まで説明しろ。何を隠している?」

「……」


『沈黙は金。雄弁は銀』と言うがそれで良いのだな?


 スッとハリセンを相手の股間の下へと運び準備する。試打は大切だよ?


「分かった! 言うからっ!」

「素直で宜しい」

「さっきも言ったけどあれは発動した人物の魔力を吸い上げて落雷を落とし続けるのよ!」

「で?」


 それで終わりだなんてことは無いよね?君と僕との付き合いだ。絶対に何か隠していることぐらいお見通しだよ。さあ言え。


「おにいちゃん。おこらない?」

「……」

「おこらないならいう」


 子供っぽい口調で悪魔がそんなことを言うのです。


「まあポーラの体に傷を負わせるのはノイエが悲しむからね。分かった。怒らないであげよう」

「本当に?」

「ああ。約束だ」

「なら言うわ!」


 笑顔になった悪魔が口を開く。


「さっきも言ったけどあれってばイヴァン雷帝なのよ。その卑猥の言葉から想像するに、本来であれば天界から堕ちた悪意は人に憑依して死んで消えるはずな気がするの。でも消えなかった。何故なら私の魔法が死んであの世に行く前のイヴァンに干渉してしまったから! つまりあれは純粋な悪意の塊! 最強の暴君なのよ!」

「そっか~」


 納得だ。


「ノイエ」

「はい」

「今こそ君のその美しいパロを完成させるのだっ!」

「裏切ったわね~!」


 失礼な。僕はしていない。やるのはノイエです。


「それを詭弁というのよ~! みぎゃ~!」


 悪魔よ。お前はそろそろ滅んでしまえ。




~あとがき~


 過去の刻印さんは…かなり無茶をしていましたのでw

 ブラックなことも数多しなのです。

 ただ説明が足りていないことを主人公は気づくのだろうか?


 久しぶりに真面目に家事をしていたら時間が無くなったぞ? 何故だぁ~!

 せめて1本でもストックを作っておきたいのだぁ~!




© 2023 甲斐八雲

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