責任は貴女が取ってね?

 神聖国・都の郊外



「アンタって奴はどうしてここでスルー出来るのよ!」

「……何となく?」

「これが三途の川の渡し賃だ~!」

「あうちっ!」


『ちょっと待ったコール』からの流れるようなドロップキックを食らった。


 酷い。酷すぎる……親父にもぶたれたこともないのにっ!


 まあ実の父親は他界してますしね。今の父親はメイドの尻でも撫でているはずですしね。


 無様に地面に、ではなく薄い氷の上に倒れた僕は蛇と目が合った。


「あっどうも」


 挨拶したのに噛みついて来ようとするのは礼儀作法としてどうなんでしょうか?

 ただ噛みつかれる前にカミーラの棒が蛇の頭を潰して終えた。南無南無である。


「教えなさいよっ! あんたの秘密を包み隠さず全てっ!」

「ちょっと」


 蛇とボトルを両手に持つパーパシは、服を掴んで懇願して来る悪魔の揺さぶり攻撃から逃れることができない。

 グワングワンと大きく体を揺すられ……ため息1つ吐いて僕は立ち上がると、パーパシの元へ向かって馬鹿なことをしている悪魔の頭に手刀を振り下ろした。


「止まれって」

「止まれるか~! さあ吐けっ! その性癖を……みなまで語るが良いっ!」

「……」


 威力倍増でもう一発手刀を振り下ろした。

 流石に僕の愛情いっぱいの手刀こえが届いたのか悪魔は頭を抱えて蹲った。


「本当にお前は好奇心だけで生きているな? パーパシさんのような真面目な人が性癖とか」

「えっと……普通だと思います」

「「答えたっ!」」


 余りのことで悪魔と同時に驚いてしまったよ。


「好きな異性はっ!」


 これこれ悪魔さん。だから調子に、


「年下の男性が……危なっかしい人を見守るのが好きみたいで」

「「真面目かっ!」」


 アカン。この人実はかなり危ない人だ。


 察した僕は悪魔を確保しその口を塞ぐ。


 腕の中で暴れるな悪魔よ。掌を舐めるな。爪先を踵で踏むな。


「それでパーパシさん。その祝福って?」

「はい? ええっと」


 会話をしつつ蛇の毒抜きを続ける彼女は少しだけ首を傾げてから口を開いた。


「博士が言うには……」


 具体的な説明を受けて僕は納得した。


 そして悪魔の抵抗が……あれ? いつの間にかにポーラに戻っている?


 これこれ妹よ。どうして君は僕の掌を舐めているのか説明を求めるよ?


 だが敢えて聞かん。フラグ神が君の背後に見えたから聞かんぞ。




「ん~」


 それはゴロリと寝がえりをうった。

 たっぷりと寝てそれなりに体力と言うべきなのか、何かしらの何かが回復したような気がする。


 起き上がり活動を再開しても良い気がするが……はて?


 自分が何をしていたのか忘れていた彼女は首を傾げて思い出す。やはり休み過ぎも良くはない。


「思い出した。ドラゴンだ」


 そうドラゴンだ。ドラゴンを探し出して彼の前に連れて行けば未知の祝福が見れるのだ。


 未知……何と甘美な響きだろうか。それを追い求めるだけで人生が楽しめるのだから。


「ドラゴン100匹ぐらい確保する方法を考えないとな」

「それだったら手を貸すからちょっと話を聞かせて貰える?」


 動き出す方向性が決まり『人材確保』と考えたそれは、自分の背後から聞こえてきた声に振り返る。

 フード付きのローブで顔を隠した人物が居た。


「えっと」

「私は刻印の魔女。話しぐらいは聞いているでしょう?」

「ああ」


 小柄だが基本偉そうな彼女……ランリットは相手の存在を知り僅かに警戒した。

 この場所では自分の『祝福』は使えない。


「と言うよりも攻撃自体できないから」

「そうなのか?」

「ええ。だって私は魔眼の支配者ですもの」

「……」


 相手の言葉に懐疑的なランリットだが、ただ頭ごなしにそれを否定できない。


 伝説の三大魔女の1人。それが刻印の魔女だ。


「それで自分に何が聞きたい?」

「ええ。あのパーパシ……ちょっと待って」


 話しかけていた魔女は片手を耳にあてると何度か頷いた。


「……問題解決したから話を聞かなくてもよくなったみたい」

「はい?」

「なら私はもう帰るから……放してくれる?」


 さっさと帰って『研究の続き~』と考えていた魔女は、タックル気味で腰に抱き着いて来た相手に冷ややかな目を向けた。


「断る。何でもいい。聞いてくれ」

「えっと……どうして?」


 懇願して来る相手に魔女は軽く引く。正直怖い。


「自分にはドラゴン100匹が必要なのだっ!」

「うっわ~」


 自分の好奇心の為なら無茶を言うその様子に魔女は自分のことを棚に上げて呆れた。


「人としてどうかと思うわよ?」

「何と呼ばれても構わない。自分は知りたいのだっ!」

「うっわ~」


 悟った。魔女は悟った。

 これは完全に自分側の人間であると。

 つまり手を貸さなければ永遠に追いかけて来る。


「分かったから。手を貸すから」

「本当だな?」

「約束するわよ。たった100匹で良いんでしょう?」

「……もっと多くても構わない」

「貴女、中々の鬼畜ね」


『だが嫌いではない』と内心でほくそ笑んだ魔女は、緊急で自分の統括へと思考を飛ばす。


 返事は直ぐだった。流石自分だ良く分かっている。


「了承されたから手伝ってあげる」

「本当か?」

「ええ」


 相手に自分の顔を認識させない魔女は、口元だけで笑みを浮かべる。


「ただし責任は貴女が取ってね?」




~あとがき~


 ほぼ徹夜明けで燃え尽きてしまっているので短めです。

 眠いんだパトラ〇シュ。とにかくベッドが恋しいんだ。


 久しぶりのランリットです。

 祝福の為なら…悪魔に魂を売り渡したなw




© 2023 甲斐八雲

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