アルグ様をいっぱい喜ばせる

 神聖国・都の郊外



「……ノイエさん?」

「むふ~」


 ウチのお嫁さんから聞いたことのない鼻息がっ!


 ノイエさん? 貴女はそんなに何に興奮しているのですか?


「大丈夫。半分は出来るから」


 残りの半分は?


「アルグ様が……大丈夫?」


 本当に僕はどうなっちゃうんですか? ノイエは優しい子だから僕を傷つけたりしないよね?


「はい」


 ですよね?


「はい」


 本当に?


「……」


 ノイエさん?


「大丈夫。アルグ様なら?」


 声が遠いんですけどお嫁さんっ! 僕の何に何をする気なの!


「アルグ様の『ピー』の『ピー』から『ピー』『ピー』のようなものを『ピー』で『ピー』『ピー』に動かすと『ピー』『ピー』がいっぱい?」


 お嫁さんの言葉に背筋が凍り付いたんですがっ!

 らめ~。ノイエさん。絶対にそんなことをしちゃらめ~!


「大丈夫」


 流石ノイエだ。ノイエの体の半分は、優しさで出来ているんだもんね。


「段階は踏む」


 残りの半分が馬鹿姉たちから学んだ鬼のようなスパルタ精神でしたっ!


「お姉ちゃんたちは馬鹿じゃない」


 大半が鬼畜でしょ?


「違う……えっと」


 言葉に困ったらしいノイエが僕の背中をポンポンと叩く。


 ただし片手でだ。もう片方の手はガッチリと僕が起き上がれないように固定している。

 おかげで顔面がずっとノイエの……これはこれで至福なのだろう。光が無くて眼福とまではいかないが。


「そう。自分に正直」


 それを僕は怖れているのですが?


「アルグ様はお姉ちゃんに厳しい」


 そうかな? 滅茶苦茶甘くて、甘すぎるせいで死にそうな感じになっている気がするんだけど?


「もっと頑張って」


 具体的に?


「……子だくさん?」


 おいお嫁さんよ。僕を何だと思っている?


「アルグ様が乗ってる大きな馬?」


 あんな雌馬を見れば圧し掛かる馬鹿なナガトと一緒にしないでくれたまえ。

 僕の心には『自制心』という文字が色濃くはっきりと。


「それ。気のせい」


 お嫁さんに全否定されたよ~!


「それに」


 はい?


「赤ちゃんが居れば家族が集まるから」


 そっか。そうだね。


「だから欲しい。沢山欲しい」


 ノイエは本当に欲張りだな。


「欲張り? それはダメなこと?」


 ダメじゃないよ。ノイエの欲を叶えるのが僕の使命ですから。


 ただし問題は方法なんだよね。セシリーンが妊娠したのってどうしてだっけ?


「……へい。お呼びですか?」

「呼んでないわ~!」


 体を起こそうとしたらノイエを動かす邪悪な悪魔が両手で防ぎに来た。


「邪魔をするな~!」

「するわよ馬鹿っ! あとでアンタのお嫁さんに怒られるでしょ!」

「お前なら死んでも構わん」

「構え~!」


 ゴスッと相手の肘が僕の延髄に……それは流石に色々とアウトだと思いますが?


「死ねっ! この変態っ!」

「マジで死んでしまうわ~!」


 何度かゴスゴスと延髄に肘を食らったので抵抗を諦めた。


「で、また遊びに来たのか?」

「ま~ね~」


 悪魔の返事が軽い軽い。


「やっぱり映像で見るよりも……凄くあれの臭いがあれなんですが?」

「鼻呼吸を諦めろ。そして我慢だ」

「何て拷問な」


 パチリと悪魔が指を鳴らすと臭いが漂って来なくなった。


「流石刻印の魔女~」

「本当に現金ねっ!」


 そう言うなって……俺とお前の仲やん。


「そんなに仲良くなった気はないけど……まあ良いわ」


 延髄にもうもう一度肘を落とされた。


 だからそれを止めなさい。目の前でキラキラと星が散ったわ。


「子供が欲しいのなら……まあ色々と調整すれば出来なくはないけど?」

「マジっすか?」

「ただ当たり前だけど、妊婦さんは戦えないからね。どうするのかは自分で考えなさい」

「……」


 あ~うん。それもそうか。


 セシリーンは戦いに向いてないから問題ないけど、人によっては色々と困るかな?


 ピンチの時に出て来て欲しい人とかは絶対に無理か。先生とか特にだな。

 ただ先生は余り戦わせたくないからな~。それならばありか?


「それか外に出したくない人材とかはどうかしら?」

「外に?」


 脳裏に1人の人物が浮かび上がる。ファナッテ一択なのはなぜだろう?


 一度落ち着け僕よ。よく考えよう……ファナッテだな。


 問題は彼女が妊娠した場合お腹の子供は大丈夫なのか?


「あの毒製造機の肉体は一般人よ」

「マジで?」

「ええ。だから妊娠は出来るし……」


 声が遠くなったぞ?


「出産の時までにきっとあのツンデレ魔女が何かしらの魔道具を作ってくれるわよ。それかあれの専属メイドに空気を浄化させれば良いのよ。ほら解決」

「しとらんわ~!」

「のがぁ~! 無駄な抵抗をっ! 食らえ!」


 だから延髄に肘は~!


 相手に制圧されてまた伏す。


「アンタのお嫁さんがお願いすれば、魔眼に居る大半の人たちが言うことを聞くんでしょう? ならどうにかするよ」

「不確定な」

「人生なんてそんなものよ」


 ケラケラと悪魔が笑う。


「さてと。そろそろあっちも終わりそうだし様子を見に行こうかしらね」

「あっちとは?」

「教えてあ~げない」


 笑う悪魔が静まり返った。ノイエに戻ったのかな?


「ノイエ」

「なに?」

「綺麗なお姉ちゃんはどう?」

「ん~」


 確りと僕の背中を押さえ込んでからノイエが考え込む。


「凄く奇麗」


 ふ~ん。


 やっぱりこっちで会話した方が楽だな。


「私も頑張る」


 何を?


「アルグ様をいっぱい喜ばせる」


 大丈夫。普段からいっぱい喜んでいるからね?


「足らない。私が」


 ノイエがか~い!


 変なスイッチが入ったノイエは……落ち着くことを願うばかりだ。


 で、マニカが終わっていないと言うなら悪魔は何処に行ったんだ?




~あとがき~


 一か所だけ違った意味の接近戦が…まあマニカですかw


 刻印さんは刹那の何かで生きているのでその真意は良く分かりませんね。

 物凄く深く考えているようで何も考えていない可能性の方が高いかも?


 あっちのバトルから片付きま~す




© 2023 甲斐八雲

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