ビックリでどっきりなあれ~な何かっ!
神聖国・都の郊外
「何じゃこれは~!」
膝から崩れ落ちてお約束の言葉を叫ぶ。自分満足しました。
鈴の音が響いたらまた体から力が抜けだした。
魔力が……僕の体から魔力が出て行くよ。
「死にたくない……死にたくないよ……」
真似たポーラが……おい悪魔。ウチの妹に要らないことを吹き込んでいるっぽいな? あん?
「何よ? 何か文句あるの?」
「文句しかないわっ!」
「あん?」
ガクガクと全身を震わせながら悪魔が凄んで来る。
だがこちらも負けない。こっちも全身を震わせつつ……迎え撃ってやろうじゃないか!
相手を掴んでやろうと思うが、ちょっと遠くないですか? 悪魔さんもう少し前へ。
どうして諦める。もっと頑張れよ。お前はやれば出来る子だから。
見なさいノイエを。前のめりで地面にキスして……それで良いのかお嫁さんよ?
「ちょっとそっちから来なさいよ」
「あん? 甘えてんじゃない」
「何が?」
「そっちの方が年上なんだから頑張れよ」
事実を告げたら悪魔が何故か自分の口に指を運んでしゃぶりだした。
「……わたちポーラ。まだ3しゃい」
「300歳の間違いだろう? この寄生虫」
「よ~し決めた。お前を泣かす」
地面に伏してビクビクと痙攣しながら……気のせいか、女王の住まいでやられたよりもこっちの方が鈴の効果が強くない?
「へいへい悪魔。めっちゃ辛いんですけど?」
「あん? それはアンタが腰抜けだからよ」
「よ~し。その喧嘩買った。もう3馬身程度こっちに来いや」
「何故に馬身?」
君と僕との距離は、ミニチュアホースならそれぐらいでしょう?
「そう来たかっ! ポーラちゃんもビックリだ!」
「ウチの妹の名を語るな。この糞悪魔」
「あん? そんな舐めた口を効いていると、ここでその妹様のストリップショーを開催するわよ」
「はん。そんな色気の無いボディに誰が興奮などするっ!」
「平気よ。きっと何人かはロリコンが居て大興奮間違いなしよ!」
「これだから悪魔は……ロリコンは幼ければ何でも良いわけじゃないんだぞっ!」
「なっ……何だって~!」
驚愕の表情を浮かべて悪魔が……もう少しこっちに来い。
「ロリコンなんて幼ければ赤子にだって興奮するって!」
「そんな訳なかろう!」
君は何も分かっていない。
「生まれたての猫を見て君は本当に可愛いと思えか?」
「……思うわよ」
こっちを見ろ。
「生まれたての犬を見て君は本当に可愛いと思うか?」
「……思えるはずよ」
だからこっちを見ろ。
「ならば生まれたての赤ちゃんを見て、君は『あっ猿だわ~』とか思っても上っ面だけで『可愛いですね』とか愛想笑いを浮かべたりしないだろうなっ!」
「あ~も~! 私が悪かったわよ!」
遂に悪魔が自分の罪を認めた。
「産まれたては卑怯よ! あんなの猿でしょ!」
「だが君の理論ではあの状態の全裸を手もロリは喜ぶと言うのだ!」
「……無理があるわね」
その通りだっ!
「あの手の人種は声を大にしてこう言うのだ。『成長過程が大切なのだ!』と」
「でもでもこの体だって!」
「……」
「何よ! その生温かな視線はっ!」
言っても良いのか? ならば言おうか?
「ポーラはもう……成長期が……」
「終わっていないわよ! 貴方も妹だと言うのであれば、その妹の成長を信じてあげなさいよ!」
「無理じゃない?」
「大丈夫よ!」
何故か地面に仰向けになって悪魔が踏ん反り返った。
「この私がずっと何もしないと思っているの?」
「……発言を続けて」
悪い予感しかしないけど。
「ふっ……魔改造の準備は終わっているわ!」
「死して塵になれ!」
「ありがとうございますっ!」
無理して投擲したハリセンが悪魔の顔面を見事に捉えた。
そして僕の中からごそっと……前にもこんなことがあったような気がする。
「ポーラを弄ぶなっ!」
「弄んでなんていないわっ!」
「ならばどんなつもりで?」
「決まっているわ! そっちの方が面白いからよ!」
「死して冥府に帰還しろっ!」
「まさかのストライクっ!」
色々な都合で小型のハリセンを投擲したら、悪魔の股間を直撃した。
「おおう……妹の体に何て酷いことを……」
「野郎じゃないから大丈夫でしょう?」
「アンタは女性の体を分かっていない!」
何故か股間を押さえた悪魔に叱られた。
「この子の魔改造はずっと前から始まっているんだから、」
「やはりくたばれ!」
うがぁ~! ハリセンが出ない! 何故このハリセンは魔力対応なんだ! 祝福にしてくれ!
僕の心の叫びに……奇跡が舞い降りた。
ノイエのアホ毛がニョロっと伸びて来て、悪魔の額をペシペシと叩いたのだ。
流石ノイエだ……ノイエさん?
視線を向けたらお嫁さんはまだ顔面から地面と熱い口づけを継続していた。
「ムカつく~! 何で私が一方的にっ!」
憤慨する悪魔に対し、僕としてはとても冷静に指摘したくなる。
どう考えてもお前が悪いだろうと。
「何度も言うけど人間なんて素養が無いと腐ったりしないのよ!」
「突然どうした? 頭は大丈夫か?」
悪くて馬鹿なのは前々から知っているけど。
「弟子もキャンキャンと騒いで全く……良い? 素養が無ければそもそも発酵しないのよ! 腐るのよ! それが腐らないってことはその人に素養があるからよ! つまりこの弟子には元々腐る要素が、」
「ノイエ~」
「それはちょっと! もがっ!」
騒ぐ悪魔の口に残っていた乾パンが押し込められて沈黙した。
やはり悪魔は倒されるべき存在なのだろう。
さて……現実逃避もこれぐらいにして、そろそろ現実と向き合うことにしよう。
ゆっくりとだがカメワームが地面に埋まった部分を引き抜いている。
気のせいか元気になりつつある。何処から魔力を……まさか?
「おい悪魔」
「もごご」
乾パンを喉に詰まらせた悪魔が悶えている。
「何でお前はこんな時にっ!」
全く使えない悪魔だ。
「ノイエ~」
スルスルとノイエのアホ毛が伸びて悪魔の口の中に。
大丈夫か? ビジュアル的に色々と……きっとダメだな。
悪魔の口から生々しい嗚咽が響いてノイエのアホ毛が乾パンを掴んで出て来た。
「……新感覚……」
意外と大丈夫そうだ。
恍惚とした様子の悪魔を見て心からそう思った。
「で、悪魔」
「情け容赦ないわね」
気のせいだ。お前に対してだけだから安心しろ。
「あのワームが首を引き抜こうとしているんだが?」
「まあ! とても太くて立派なモノがっ! ムクムクとっ!」
君は下ネタに持って行かないとダメな呪いでも掛けられているのかね?
「で、あのカメの魔力の供給源って?」
「……まあ間違いないでしょうね」
悪魔が両足を持ち上げ、勢いを付けて振り下ろし……立ち上がった。
君は何処のダンサーですか?
「お姉さまが居るからたくさんご飯を得られているんでしょね」
「不味くない?」
「あら? お姉さまの魔力だったら美味しいかもしれないわよ?」
そうかもしれないけどさ。
「出来れば僕が独占したいかな」
「全く……独占力の強い男は嫌われるわよ?」
「束縛はしてないけど?」
「それが唯一の救いよね」
軽く首をパキバキと鳴らし、立ち上がった悪魔がニヤリと笑った。
「なら今週の~」
「はい?」
どうした? そんな大声を上げて?
「ビックリでどっきりなあれ~な何かっ!」
版権ギリギリか?
「ウェルカムっ!」
悪魔が元気よく指をパチッと鳴らした。
~あとがき~
作者さんの中だとこれが神聖国編200話目らしいです。終わらんな~w
後何話書かなきゃダメなんだろう? 考えるのはよそう。
厳密に言うとカメワームの魔力供給は鈴だけでは無いんですが、ただノイエが居るおかげで大幅に魔力供給が行えている事実はあります。
で、その対応策として…ここからは真面目に話が進むはず?
© 2023 甲斐八雲
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