赤い人を揉むから

 神聖国・都の郊外



「いやんお兄様。そんなに激しくグリグリされたらポーラ出ちゃう。まだお子様なのに何かいけないモノがいっぱい……出ちゃうから~!」

「……」


 無言で継続。


「本当出ちゃう! 上から下から中身が……今、何か熱いモノが喉元まで来たから~! 本当に出ちゃうから~!」

「ならお前の悪事を全て吐け」

「いやん。そんなこと……そこはダメ~! 出ちゃう! そこは……この齢で失禁とかしたらトラウマレベルっ!」

「案ずるな。兄はそれに近いことをして来た」

「マジで~! 知らない間にお兄様が別路線の大人の階段をっ! どっち! 受けたの? 攻めたの? 事細かに全てを私に話して聞かせな、そこはらめ~! ポーラの恥ずかしい何かが貴方の記憶に1ページ!」


 意味が分からんがとりあえず失禁は……流石にポーラに対して悪すぎるな。

 うん。トラウマになりかねないか。ならば少し上へと移動して。


「らめ~! ポーラのお口から色々出ちゃう~! 熱い何かがいっぱい出ちゃう~! 具体的には臓物が~!」

「内臓は出さなくて良いからお前の悪事を全部吐け」

「無理~!」

「ならば逝け」

「逝っちゃう~! ポーラ逝っちゃ、」


 エロエロと何かを吐き出し悪魔が逝った。

 ここまで抵抗するとは……どうやら本気であの召喚獣のことを知らないと見える。


「本気で困ったぞ?」


 第二形態に変化したカメワームをノイエが全力で殴り続けている。

 と言うかノイエって意外と蹴りより殴る方が好きなんだよね。割合で言えば8対2ぐらいか? 圧倒的に殴りが多い。これも全てカミューという悪しき存在が悪いのだろう。


「にいさま……」


 弱々しい声が僕の足元から。


 背中を踏みつけ前後に揺すぶり悪魔祓いをしていたポーラが正気に戻ったらしい。

 代償にエロエロをしてしまったが仕方ない。これが終わったら一緒にお風呂に入って……その前にリグを呼び出してポーラが怪我をしていないか確認して貰おう。

 無論怪我をしていれば治療もセットだ。


「……」

「にいさま?」


 弱々しく僕の方を見上げてくる妹と目が合った。


 うん。ちょっと落ち着け僕よ。現在ポーラが怪我をしているとしたらフロント部分だ。

 胸からお腹にかけてかな? それをリグが治療する……それは悪魔に対して何かを貢ぐような行為ではないだろうか?

 きっとあの悪魔は喜んで撮影をする。間違いなくする。


「ポーラよ」

「はい?」

「もう少し大人になってくれるとお兄ちゃんは嬉しい」


 しみじみと思う。ロリはな~と。


 ただポーラが激高した。腕立て伏せの原理で自分の体を持ち上げようと……意外と強烈な下からの押し上げに反射的にポーラの背中に乗せている足に力を籠める。

 今のポーラは野放しにしてはいけないと僕の中の何かが叫んでいるのだ。


「私はもう大人です! 兄さまが望めば子供だって……」


 ふおぉぉぉおお~! 下からの圧に耐えろ僕! 絶対に今のポーラを野放しにしてはいけない!


「兄様が望めば~!」

「でも挟めない」


 不意に目の前にノイエが姿を現した。


「小さいから無理」


 静かに妹に追い打ちを浴びせまたカメワームの元へ移動する。


 ノイエさんノイエさん。今のはちょっと……ほら? スルスルとポーラの両腕から力が抜けて行くよ?


「シクシク……やっぱり兄様は大きい方が好きなんですねっ!」

「決してそんなことは」

「なら小さくてもっ!」


 ふおっ! また下からとんでもない圧が!


 助けて~。ノイエさ~ん。


「掴めないとダメ」


 瞬間移動してきたノイエがまた容赦ない言葉を。

 ビクッと震えた。ポーラの動きが停止した。


「掌で掴める大きさは必要」

「はうあっ!」


 完全に脱力したポーラが地に伏した。


「圧勝」

「うん。そうだね」

「次はあっち」

「頑張れ」

「はい」


 僕にキスしてノイエがまたカメワームを殴りに行った。


 カメワームは甲羅を失ったがまだ頑張っている。具体的に言うと甲羅を失ったことで立ち上がれるようになって、ノイエを両の前足で押し潰そうと上からの攻撃をしつつ解けた首を鞭のように動かして……まあどんな攻撃でも今のノイエは何故か絶好調だ。

 戦えることがそんなに嬉しいのか?


「にいさま」

「はい?」


 ノイエの立ち回りを見つめていたら足元のポーラが涙ながらに僕を見ていた。


「どうしたら胸って大きくなりますか?」

「……今度リグにでも聞いたら?」

「そうします」


 あくまで医者に意見を求める感じだからね? あの胸を求めるのは無理だからね?


「あ~。僕がマッサージをすると大きくなるって言う都市伝説があったな」


 悪魔が言うには僕は天然でリンパなマッサージをしているとか。

 そのおかげでノイエの胸が大きくなったとか。


「なら兄様が私の胸を、むぎゅ」


 姿を現したノイエがポーラの頭を軽く踏んで黙らせた。


「ダメ」


 それほど立派な胸を持つノイエさんはそれ以上の成長は要らないでしょう?


「アルグ様はお姉ちゃん。赤い人を揉むから」

「……」


 えっとノイエさん? 何となくドヤってる感じがするけど……言っても良いんですかね?


 たぶん言わないとノイエが戦いに戻らなそうだしね。


「それってアイルローゼのこと?」

「赤い人」


 うん知ってる。


「ノイエは赤い人の胸をどう思っているの?」

「小さい」


 即答だ。きっと今頃アイルローゼが胸を押さえて……そして事実に気づいて絶望しているだろう。


「ギュッとされると痛い」

「抱きしめてくれた人のことを悪く言わないの」

「でも痛い」


 今度からギュッとではなく、キュッくらいにしてもらいなさい。


「ノイエ」

「なに?」


 ただここは夫としてちゃんとお嫁さんを叱っておこうと思います。


「お姉ちゃんの優しさは痛くても感受しなさい」

「でも痛い」

「ならもう抱きしめて貰わなくても良いの?」

「……」


 クルンクルンとアホ毛を回したノイエが……おお。アホ毛がシュンとなった。


「ごめんなさい」

「それは僕じゃなくてアイルローゼに伝えようね」

「はい」

「ならあれを殴って来なさい」

「はい」


 またノイエが姿を消して……連打からのアッパーか。そろそろあれも力尽きるんじゃないのか?


「にいさま……」

「はい?」


 視線を下げるとポーラが大きな水たまりを作っていた。


「私への配慮は?」


 君への配慮は……まずその舌足らずな口調を辞めてからじゃないかな?




「大丈夫よアイルローゼ」

「……」


 蹲り自分の胸に腕を押し付けた魔女がピクリとも動かない。


 妹の無垢で容赦のない声に姉へのダメージは絶大だ。下手をすればアイルローゼは自死すら考える。実行すら辞さない。

 それを知る歌姫は必死に魔女を慰める。


 人手不足のこの状況で、手負いとは言え魔女という戦力を失う訳にはいかない。

 座ったままの姿勢で軽く前のめりになった歌姫セシリーンは気づいた。


「平気よアイルローゼ。胸を大きくする方法があるわ」

「……」


 今にも自殺しそうな視線が歌姫を見た。

 何て弱々しい視線だろうか……ここまで胸とは罪な存在らしい。


「どう……やって?」

「お腹が大きくなってから胸の方も」


 少し頬を赤くしてセシリーンは両手で自分の胸を持ち上げるように下から支えた。

 実際確実に大きくなっている気がする。たぶん間違いない。


「貴女も妊娠すれば」

「でも前回」

「努力よ。もっとすれば妊娠するわ!」


 返事をしながら歌姫は思った。

 自分は一体何を口走っているのだろうと。



 それから外の彼がノイエから謝罪の言葉を口にさせ……魔女は隅で膝を抱える程度にまで復活した。




~あとがき~


 本当に知らないのよ~!

 と主張しても悪魔さんに対する信用が無いので…w


 久しぶりにアイルローゼの胸オチしてみました




© 2023 甲斐八雲

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