暴れた、方が、良い?
神聖国・迎賓館
「にゃあん」
「……」
逃げちゃダメだ。逃げちゃダメだ。逃げちゃダメだ……背中を見せたら最後だ。この猫は背後から襲い掛かって来る。なら正面で睨み合っていれば助かるのかと言えば答えは『NO』だ。
誰がそんな甘い対応で見逃してくれるといった? ウチの猫を舐めるな!
気持ちよさそうに顔を洗っている猫は、分かっている。そんな振りなどに騙される僕じゃない。チラチラとこっちの様子を視線の端で確認しているのだろう?
「ファシー」
「にゃん?」
ベッドの上でペタンと座って居るファシーは確かに可愛い。元々お嫁さんの体ですから可愛いのは間違いないんですが、それ以上に仕草が愛らしさを倍増させる。
やはりノイエは猫の姿も良く似合う。
今度はあれか? ワンワンではなくてニャンニャンプレイを実行するべきか?
ただしウチの猫は他所の猫を見ると機嫌を悪くするんだよな。
「今日はもう」
「シャーっ!」
お怒りだ。牙を剥いて怒って来た。
待ちたまえファシー君。今夜の僕はこれで三連戦目なのだよ?
最初のリグはまあ控えめだった。次のホリーから容赦が無くなった。もう打ち止めというところで君だ。君はもう何回僕を搾りましたか?
「にゃぁ~」
猫だから数なんて分からないと言いたげな視線を横に流すな。こっちを見ろ。
「にゃっ」
「怒っても凄んでもダメです。何回ですか?」
「まだ、片手」
単位がおかしいだろう!
片手って一瞬五回までかと思ったけど、折った指を伸ばしたりしたらカウント継続だよね? そうだよね? 何のことか分からないと言いたげに顔を横に向けない。
こっちを見るのこの猫!
「なぁ~」
どうして不満げなのだ? したよね? 嫌がる僕に馬乗りになって何回も搾ったよね? そろそろ僕の言葉に耳を傾けようか?
と言うか最近の君は猫に引っ張られ過ぎてもう猫です。人だった頃を思い出そうか?
「ひ、と?」
「そうそう」
猫が全て悪いとは言いません。
でもコミュニケーション的な観点からいつも猫なのはダメだと思います。
何よりファシーは可愛い女の子なんだから、
「くひひ。殺せば良いの? 夜が明けたらここに居る人たちを全員殺せば良いの?」
「わ~い。ウチの可愛い猫は猫だから最高に可愛いんだと思います。つまり猫最高です。猫が良いです」
「……なぁん」
猫に戻ったファシーがまた顔を洗い出した。たぶん照れ隠しだ。
そもそも猫だと会話が通じないのに人に戻った方がもっと会話が成立しないとかどんなイジメなんだろうか? どうしてこうなった?
悪魔がファシーに猫を模した服を着せたからだ。
だがあれは可愛い。つまり猫の衣服に罪はない。罪があるとすればあの悪魔だ。
「ファシー」
「にゃん?」
「マニカ……何でもないです」
猫って怒ると毛を逆なでるんだけど、ノイエの体でそれをされた僕としては素直に謝ることしか出来ない。ぶっちゃけ何かに恐怖したよ。
「絶対に、見つ、ける」
「そうだね~」
「手足を、もぐ」
「だね~」
「引きずり、出し、た、内臓で、首を絞めて……くひひひひひひひ~」
「ねぇこぉ~! ファシーは可愛い猫ですから~!」
目の前の話し相手が突然光の消えた瞳で笑い出す恐怖を知って欲しい。
マジで何かをチビってしまいそうでした。
「ほ~らファシー。こっちこっち」
「……」
警戒する猫に対して両手を広げて安全をアピール。
おいで~。何もしないよ~。僕は安全だよ~。
必死に目で訴えかけと、彼女はゆっくりと近づいて来て甘え始める。
今がチャンスだ。
「ふなぁっ」
「ここか? ここが良いのか?」
「なふっ」
「そうか。ここですか~」
ファシーの弱点を見つけ出して全力で撫でる。
ほ~らどんどん骨抜きになってきましたね? 良いんですよ~。そのまま骨抜きになって、くたくたになってしまえば良いんです。大丈夫です。たっぷり可愛がりますからね?
ただしエッチは無しです。今夜はもう疲れました。だからいっぱい撫でてあげます。
おやおやどうしてこんな場所を? もうファシーも何だかんだで大人なんだから~。
これでもかと撫で続けたらファシーがぐったりして動かなくなった。
相手の隙を突いて全力攻撃が功を成した感じか。
相手の頭を僕の太ももに乗せ、優しく頭を撫でてあげながら……視線を窓の外へ向ける。まだ大丈夫だ。明るんでいない。今から寝れば間に合うか?
「なん」
「どうかした?」
「……」
甘えだした猫が僕の太ももに顔を押し付ける。
あはは。可愛い奴め……だがそれ以上の上昇は許さないからな? どうしてズリズリと僕の下腹部へと移動しているのか理由を述べよ?
「にゃん」
必死に相手を制していたら顔を上げた猫が可愛らしく鳴いた。
そのひと鳴きで全てを誤魔化す気か?
何て恐ろしい……流石は猫だ。
「アルグ、スタ、様」
「ん?」
普段とは違い前髪で目元を隠していないファシーは何処か不安げだ。
何かあれば手で顔を拭うような仕草を見せる。
「私、必要? 暴れた、方が、良い?」
「今回は大丈夫のはずです」
「本当、に?」
「本当です」
と言うか皆殺しの予定は無いのでファシーに暴れて貰う予定はない。
僕としてはカミーラと誰かに出て貰い時間を稼いでもらっている隙にこの国のトップな人たちを懲らしめる予定だ。殺す気は今のところは無い。
「大丈夫。ファシーの力はこんな小さな場所に納まるような物じゃないから……そのうち全力で大暴れしてもらうからそれまで我慢してね」
「……は、い」
納得したのかしていないのか、それでも返事をしてファシーが甘えて来る。
本当に可愛らしい猫だな。
「母、さん」
「はい?」
「……歌姫?」
何故に疑問形?
「お腹が、大きく、なって、た」
「はい?」
「赤、ちゃん……育って、た」
「はい?」
~あとがき~
ほ~らパパだよ~w
歌姫さんの妊娠を何んとなくで受け入れていた主人公が遂にその事実を知る。
まさか無事に生育しているとは…想定外だったらしい。
そして中々明けない夜はようやく明けます。激動の…うん激動だな。
神聖国編のラストまで、これから作者は色々なモノとの戦いになります。
主な敵は表現かな? 次いで今週末に受けるコロナワクチンの接種による副反応かな?
たぶん残り30話ぐらいで神聖国編は終わると思っているんだけどね。無理だなw
その後はユニバンスでの休暇編です。それから番外編と言うか外伝と言うかスピンオフと言うか場外乱闘を少しやってからあれの復活です。敵は何度でも蘇るモノです。
後は大雑把に書くと大陸の北西部である辺境国編をしてからラストとなる大陸の北編かな?
途中で色々な話が挟まれますが、大きく分ければ残り三つか四つぐらいですね。そのどれもが150話ぐらいだとすると…あれ? 最低でも600話以上かかるの? ラストは300話以上になるとかいう噂もあったよね?
うん。しばらくは終わらんな。あと3年くらいは書き続けることを覚悟しようw
© 2022 甲斐八雲
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