まさかのお赤飯っ!

 神聖国・大荒野上空



「皆に集まって貰ったのは他でもない」

「アルグ様寒い」

「はいはい」


 ギュッとノイエを抱きしめて暖を取る。

 と言うかノイエさん? 貴女ってば暑さ寒さを感じても我慢できる女の子では?


「寒いと言えばアルグ様がギュッとしてくれる」

「計算の上かっ」


 ノイエってば本当に恐ろしい子。しかし僕はお嫁さんが望めば頑張る夫なのです。

 そんな訳でノイエの胸を背後から鷲掴みしながら会話を続ける。


 この肉まんサイズの胸が本当に暖かい。

 ただ揉むのは危険。ノイエのスイッチが入る。


「僕はあの集落で重要なネタを掴んだ」

「祝福の件でしょ?」

「あくま~」


 あっさりとネタはバラシをした悪魔が寝そべった姿で尻を掻いている。

 だからポーラの姿でそんなことをするな。別にノイエでも許可はしない。どっちかを選べと言うならポーラでお願いします。


 若干妹様が涙目になったがスルーする。


「神聖国が広く祝福持ちを集めているのは間違いない。どうして?」

「知らないわよ馬鹿」


 悪魔の機嫌が悪いのか言葉遣いが荒い。


「これこれ悪魔よ。私は妹にそのような言葉遣いなど許していません」

「うっさい絶〇野郎。この全自動腰振りマシーンが」

「心を抉られまくって僕ってば本気で泣きそう!」


 ノイエさん。妹さんが冷たいんです。

 ノイエのアホ毛が良し良しと頭を撫でてくれた。


「アルグ様が悪い」

「何故に?」


 まさかのお嫁さんまで僕を裏切るの?


「小さい子、病気」

「はい?」

「だから病気」


 ノイエの声に顔を向けると確かにいつも白いポーラの顔色が……違いが分からない男。それが僕です。


「あそこから血が」

「ねえさまっ!」


 慌てて起きだしたポーラがノイエの口を塞いだ。


 血? あそこから?


「まさかのお赤飯っ! 誰か赤飯をっ!」


 何故赤飯なのかは知らないけど、そういうものだと言うことは知っている。


「……結構前からだし」


 また横になったポーラがぐれた。


 何だと……?


「いつの間にっ!」

「成長は止められないから」

「僕は知りませんっ!」

「いやーん。妹のそんなことまで管理する気?」


 その気はないけどね。


「そっか~」


 そう考えるとポーラが我が家に来てから随分経つんだな。


 こうして瞼を閉じると……走馬灯のようにポーラの列伝が。あれ? どこでこの子の育成を間違えたんだろう?


「で、祝福は?」

「そうでした」


 ポーラの月一に驚いていて話の本筋を忘れていたよ。


 神聖国が祝福持ちを集めているのは間違いない。間違いないんだけど……何でか腑に落ちない。


「ノイエ」

「はい」

「青い人は?」

「……」


 クルンクルンとノイエがアホ毛を回す。


「誰?」

「ホリーお姉ちゃん」

「青い人は……元気?」


 質問を質問で返さないの。


「猫と青髪巨乳は魔眼内を徘徊しているから呼んでも無駄よ」

「ちっ……まだマニカを仕留めていないのか?」


 アイルローゼが返り討ちにあったと聞くが?


「なら先生は?」

「出ようとしてその場に居る人に押さえつけられているわ」

「なら出してよ」

「良いのね?」


『その念押しは何ですか?』と首を傾げる僕に対して、ツンツンと悪魔が横になっている絨毯を指さした。


「あれがこれを調べだして魔力供給が途切れたら墜落するけど?」

「押さえているのは誰?」

「黄色と爆乳」

「頑張れシュシュとリグ。先生を阻止し続けたら褒美は自由だ!」


 これで安全は確保されたはずだ。


 ふぅ~。どうしてウチにはこう身内に敵が多いのだ? 危ない危ない。


「つまり相談相手が居ない?」

「姉を頼りにする考えを捨てなさい」

「確かに」


 でも便利なのよね。各分野に精通している人たちだし。


「そうそう悪魔」

「何よ?」

「エウリンカって何してる? 溶けてる?」


 あの変人は基本溶けている印象がある。


「……溶けてるわね」

「やっぱりか」

「隣に毒娘を置いて」

「それって永遠に溶け続けない?」

「毒娘が復帰して移動すれば大丈夫よ」


 それはそれで僕の身が危ない。


 具体的に言うとファナッテは純粋すぎる。純粋に殺すことに迷いと抵抗が無い。僕の為ならどこまでも毒を使ってしまう。そして甘えだすと際限なく甘えて来る。

 あれはあれで悪くはない。基本あの子は従順だから支配欲をくすぐって来る。


「する?」

「今は話し合いの時間です」

「むぅ」


 危ない。ついついノイエの胸を揉んでいた。


「で、あの変人に何の用よ?」

「それね」


 若干辛そうな感じで悪魔が顔を顰めている。


「ポーラに魔剣と言うか魔槍と言うかそんな感じの物を作って貰おうかと思ったんだけどね」


 先日ポーラが見せた死神の鎌っぽい武器は良かった。実に良かった。

 あんな風な武器を作れれば、


「あれが素直に作るとでも?」

「ですよね~」


 唯一の問題はあの変人が趣味の人だと言うことだ。

 こっちが包丁を頼んだらチェーンソーを作って渡してくる感じの人だ。頼むだけ無駄か?


「それにあれは今……まあ良いわ」


 コロンと横を向いて悪魔が仰向けになった。


「それで祝福の件は?」

「それな~」


 ぶっちゃけ祝福って当たり外れが多いからな。用心してもどうにもならない。

 最悪一回ユニバンスに戻って……あれ?


「あれれ?」

「どうかしたの? 姉様の手でその気に?」

「必死に防いでいる僕の苦労を感じて」


 ノイエの手がずっと僕の股間を狙っているのです。


「祝福って確かその国ごとに見つけることの出来る魔道具みたいな物があって、それを使えば見つけられるんだよね?」

「そうね」

「なら神聖国がしてることっておかしくない?」


 大食漢な子供を集めて……やり方としては間違っていないのか?

 効率が良いのか悪いのか分からんけど。


「おかしくはないわよ。効率で言えばね」

「そっか~」


 理数系じゃない僕には良く分からない話なのです。


「ただもう1つの可能性もあるけどね」


 静かにその言葉を告げ悪魔が白い息を吐いた。


「お腹痛いから寝る」

「ちょいちょいちょい」




~あとがき~


 ポーラも大人になった物です。実は結構遅いんですけどね。

 ずっと酷い生活を送りようやく落ち着いて成長の促進が…これから身長とか伸びる予定です。


 で、刻印さんが言うもう1つの可能性って?




© 2022 甲斐八雲

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