お茶が美味しいです
大陸西部・サツキ村
「お~い。種馬魔法使い」
「……」
返事が無い。ただの屍……おお。少しだけ動いたな。
「君は何しにこの村に来たのかと聞きたい」
「……」
また返事は無い。根性で少しだけ顔を上げたか。だがアーネス君の根性はこんな物か。
一晩ぐらいお嫁さんの猛攻を受け止められなくてどうする? えっ? この村に来てから毎晩なの? あの話って本当だったの?
「ノイエさん」
「はい」
「そこの馬鹿娘を手近な川にでも投げ込んで来て」
「ちょぉ~」
変態負け犬が何かを言っていたが消えた。
そしてノイエは何もなかったかのように戻って来る。軽い足取りだ。
「捨てて来た」
「宜しい」
あのアホ娘は少し冷静さを……チラリとノイエを見てしまったのは僕の弱さだ。彼女は悪くない。僕が毎晩戦える男であれば問題無いのだ。
ポーラがお茶の準備をしてくれたので、のんびりとそれを飲んでアーネス君が復活するのを待つ。
このお茶は何ですか? ドクダミっぽい味がするんですが? 中身は知らない。ただこの村で愛飲されている茶葉だと。ふむ。飲めなくは無いから飲むけど……で、カミーラは? もう帰ったの?
本当にあの姐さんは自由人だな。
「で、アーネス君や」
復活まで時間が掛かりそうなのでこっちから一方的に話し掛けることにした。
「ちょっとユニバンスに戻るけど留守中宜しくね」
そうすることにしました。
ユニバンス王国・王都郊外ノイエ小隊待機場
「はぁ~。平和です」
のんびりと紅茶を味わいながら留守番であるルッテは空を眺めていた。
もう完全に雨期だ。雲は分厚く雨が止まらない。
雲のおかげで祝福を使うのが色々と面倒ではあるが、その分追加で食料が届くので文句はない。
ただワンパターンの干し肉には飽き飽きだ。
「はふ~。お茶が美味しいです」
だから現実から目を背ける。
王都郊外の北に位置する場所で大騒ぎとなっているが無視だ。
また色々とあの夫婦がやらかしているように見えるが無視だ。無視するに限る。
西部に行ったはずなのにどうしてこんな簡単に戻って来るのか本当に分からない。だから無視だ。
「今夜は早く帰ってメッツェさんと……えへへ」
そう。帰りにデートの約束をしているからルッテは現実など見たくないのだ。
自分が不幸になるような未来は見たくない。
王都北部・ゲート区
「……お腹空いた」
亡者のようにノイエが出店に向かい突き進んでいく。
ヘイ親父。ちょっとそこに売っている物を全て寄こしな。金だと? これで良いか? 足らないのであれば屋敷からいくらでも運ばせよう。
十分すぎる? おつりが出ない? だったら隣の屋台も込みで。三軒隣りまで家族なの? 親戚なのね。ならば喧嘩が起こるような状況は優しくないな。
ノイエが食べるならもう一軒制覇してたよっ!
「おかわり」
ノイエさん。おかわりって……ノイエが歩いて隣の屋台に襲い掛かっていた。バクバクと恐ろしい速度で食べている。もう止まらない。バクバクとノイエが両手とアホ毛まで駆使して……三軒ぐらいじゃ無理があったかもしれない。あっという間に二軒目も制覇だ。
「まあ無事に帰って来れたな。うん」
~あとがき~
短いけれどどうにか書きました。
明日からはどうにか元のペースに戻した。
戻したいけど…まずは眠らせて
© 2022 甲斐八雲
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