おとぎ話ですね
大陸西部・サツキ村
「ん~」
「どうかしたんですか?」
「ん~」
案内役と言うか、僕らの世話役として一緒に居る変態負け犬の声に首を捻る。
モミジさんが悪いわけではない。ただこんな純和風なお屋敷で、畳張りの部屋で、朝食が蒸かした芋と自然の味を生かしたスープなのはどうだろうか? スープの味付けがマジで塩だけなんですけど?
「この環境だったら普通ご飯に焼き魚。そして味噌汁かな~と」
「そんな贅沢数年に一度ですから」
「マジで?」
「はい」
しんみりと頷くモミジさんの様子からマジだな。
「貧乏なのが全部悪いんですけどね」
「それは仕方あるまい。何より米はな~」
取れ高に難があるから仕方ない。
でも僕としては白米のおにぎりが食べたかった。シンプルに塩味で。味噌を塗ってもありだ。焼いても良いのよ? その時は醤油を塗ってね。
「おとぎ話ですね」
「マジか」
日本食がおとぎ話扱いされるとは……半ば諦めて芋を齧る。ジャーガと呼ばれるジャガイモだ。
「で、アーネス君は?」
「……ぐっすりと寝ています」
「ほう」
全力で顔を背ける馬鹿娘は……関わると僕が不幸になりそうだな。
村長宅でお手伝いをしている女の子が言うには、『帰って来てから毎晩です』とだけ教えてくれた。何を毎晩なのかは聞かない。聞いたら負けだ。ノイエが気にしても負けだ。
「ノイエは?」
「さあ? 先ほどポーラ様と一緒に」
視線を巡らせたらノイエを発見。
あの~ノイエさん? その背中に担いだモノは何ですか? 野生の動物? でしょうね。普通熊を引きずって帰って来るお嫁さんとか居ないと思います。
「ねえさま。こっちです」
「はい」
何やら焚火の準備をしていたポーラは……ちょっと待て。熊を串刺しにして何を作ろうとしている? 朝食? 量よりもお肉が無いのが許せない? と言うかそれは斬新すぎるだろう? どこの世に朝から熊の丸焼きを食べたがる人が居る?
ちょっとノイエさん。そんな綺麗に手を上げなくても良いですから。
知ってますから。貴女なら食べられると。
「ノイエ。上手に焼きな」
「はい」
で、庭で朝から酒を飲んでいるのがカミーラだ。
昨日の一戦はまたカミーラの勝利で終わった。
カエデさんも圧倒的な火力で攻め立てたのだけど、カミーラは化け物だ。笑いながら攻撃という攻撃を叩き落として自分のペースに持ち込んだ。今回は串刺しモードにすら突入せずの勝利だ。
それからカエデさんの姿を見ていない。時折遠い山から打撃音と崩落する音が響いて来るが……気にしたら負けだ。僕は常に勝ち組に居たい。
「おほほ……カエデは昔から負けず嫌いで、何かあれば直ぐに裏山に向かいまして」
「へ~」
だから裏山の話をするな。あの音の主がカエデさんだなんて知りたくないのだ。
「本当にお転婆が過ぎる娘でして」
それは仕方の無いことです。
カエデさんの妹をずっと見つめてきたら……お転婆で片付けてはいけない気がします。
「少なくともこの村を継ぐのですからもう少し大人しくなって欲しいのですが」
「構わんだろう」
スパーンと障子戸を開けて……残念3兄妹の父親が入って来た。
「女であれ男であれ無事に育ってくれさえすれば良いんだ」
もっともらしいことを言ってドカッと畳の上に座り込んだ。
「改めて挨拶を。自分がこの村の現村長である。名を32代目ジュウベイと申す」
ジュウベイ? ジュウベイだと? まさか……柳生家の! だがそれだと面白みに欠ける。むしろハチベイぐらいの方が笑えるんだが? うっかりなハチベイさんとかの方が僕的には好きだぞ?
「で、ジュウベイさんや……助さんと角さんは?」
「何の話だ?」
「こっちの話だね」
気にするな。ただ言ってみただけだ。
「で、風車の」
「アルグスタ殿?」
挫けない心でボケ続けたのだが効果が無かった。残念だ。
「真面目な挨拶は昨日済ましてますし、国からの書状は全てカエデさんに預けていますし……あとはただ部下の実家に遊びに来た貴族の当主とでも思ってください。畏まられるのも僕としては楽しくないんで」
「……そうですか」
正座していた足を崩してうっかりさんが胡坐に変化した。
「なら軽い感じで話し合うとしましょうか」
「ほいほい」
外から熊を焼く匂いが漂って来るけど……僕は本題に切り込む。
これからの僕らには神聖国の情報が必要なのだ。
~あとがき~
短くてごめんなさい。
仕事が忙しくて…急にあれ出せこれ出せと上司がね…もっと前に言えよ。
そもそもそれってオイラは関わってないよね? オイラが休みの日に起きたトラブルだよね? そっちは半年も前から訴え続けて来たトラブルの話だよね? それを今更全部提出しろって無理なんだよマジで~!
社会人の愚痴です。
学生さん…不条理なことは大人になっても無くならないんだぞ。
むしろ増えるから…マジで。
ストレスと寝不足と体調不良で…明日辺り流石に休むかも?
© 2022 甲斐八雲
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