綺麗な足をスリスリしたい気分なんです

 ユニバンス王国・王都王城内アルグスタ執務室



「……ん?」


 一瞬ボウっとしてしまった。

 ケーキの甘い匂いが鼻の奥にまで香って来たおかげで目が覚めたよ。


「どうかしましたか?」


 香りの原因は目の前のおっぱいらしい。

 バクバクと良くもそんなに食べられるものだね。


「それに私も子供の頃は小さかったんですよ?」


 余り物のケーキを食べながら、おっぱいさんが当たり前のことを言っている。

 そりゃそうだ。子供の頃から爆乳していたら恐怖だ。リグみたいにアンバランスな感じも悪くないがあれはあれでやはり怖い。楽しむ分には最高だが。


「王都に来てから色々と美味しい物がいっぱいあって、たくさん食べたらちょっと太ってしまって」


 照れながらルッテはケーキを3つほど食す。


 今日の君はお昼ご飯とか食べてないの? 食べたの? 食後のデザートでケーキ3つとか食べすぎでしょう? デザートも別に食べたの? ならそれは何? 話ついでに軽く摘まんでいるだけ?


 対抗できるのはノイエだけな気がするのでフードファイトはお嫁さんに任せる。

 ノイエはホールケーキをあっさりと退治して今は焼き菓子をポリポリと食べていた。甘いのとちょっと甘いのを交互に食べるのが良いらしい。


 両方甘いって……とかツッコミは入れない。それがノイエの夫としての務めだ。


「それに胸の大きい人って全体的に大きいじゃないですか?」

「発言に気を付けなさい」


 ウチのノイエのような例外だって居ます。ホリーとかも例外です。レニーラは踊っているからかくびれている。と言うかリグが大きいか? 大きいが小さいぞ?


「つまりおっぱいが大きい人は胸に脂肪を集める才能があるって人だ。君の場合は身長の方にも才能ありまくりだけどね」

「身長のことは言わないでくださいっ!」


 ルッテが涙目でフォークを咥えて唸った。


 そして始まる愚痴タイム。何でもこのおっぱいさんはメッツェ君とデートに出かけると『仲のいい姉弟ですね』と言われるとか。メッツェ君の方が年上なんですけどね。でもルッテの方が身長が……こればかりは仕方ない。


「それにこの国の男の人たちは言葉が悪すぎますっ!」


 おっぱいさんの愚痴が止まらない。


 婚約が知られるようになってからは『あんなに小さな相手で満足できるのか?』とか言われるそうだ。『何の話?』と問えばルッテは顔を真っ赤にして『アルグスタ様たちが毎晩していることのです……』とか消え入りそうな声を発して来た。

 流石に毎晩は……しているな。ただほぼだ。結婚してからずっと毎晩しているってことは無い。休みだってある。ホントウダヨ?


 それにこの国の野郎共の言葉使いが悪いのには原因がある。過去の大戦だ。

 戦争で荒れくれた野郎共が自分の子供たちに荒い口調で会話を交わす。それが子供に移ったのだ。結果として今の良い大人たちは子供の頃の口調が残り言葉使いが荒い。


 流石に仕事の相手などには気を付けもするが、気心の知れた仲だと緊張感が薄れる。

 僕からすればそれほどルッテが周りに馴染んでいる証拠だとも思うけど……だからって下ネタばかり振られるのは少々酷か。


「君のそのおっぱいが悪い」

「今日は色々と露骨ですね!」


 一件落着したはずなのにルッテが怒って両腕で自分の胸を隠した。

 節々から溢れ出る脂肪は流石としか言えないな。


「僕としてはそろそろおっぱいよりも綺麗な足が見たい気分なんです」

「足ですか?」


 本日のルッテは私服なのでスカートだ。

 まさかこの後メッツェ君とデートか? こっちを見ろルッテ。そんなに頬を赤くして……まだ新婚気分か? 結婚して無いから新婚ですらない? 正論だな全く。


 軽くスカートを抓んでルッテは自分の脛を見る。

 で、何かに触発されたノイエがスカートを巻くって太ももまで晒している。白くて細いいい足である。だが先生の足には若干及ばない。あれは芸術作品だ。


「綺麗な足をスリスリしたい気分なんです」

「アルグスタ様?」


 だからそんな蔑むような目を向けて来るなって。


 はっきり言おう。男は誰しも性癖持っている生き物だ。君の旦那(仮)とて同じだ。もしメッツェ君が君を調教したいとか思っている人物だったらどうする? 四つん這いにして尻を叩きながら『豚ならブーと鳴け』とか言い出すかもしれないぞ? そんなモミジさんのようなことは無い?

 あれは自分でもブーと鳴くし相手もブーと鳴かせる変態だからな。


「……旦那様が求めるなら……」


 ただ目の前のおっぱいさんは意外と乙女でした。

 モジモジとして嫌がる素振りを見せていないだと? まさかルッテさん。君ってそっちの趣味が? 違う? あくまでメッツェ君が求めてきたら我慢してやると?

 ふっ……これだから素人は困る。良いかよく聞け?


 その最初の我慢が後々に要らない誤解となって夫婦の不仲に繋がるのだ!

 出来ないことは最初にきっぱりと相手に伝えることが大切だ。そしてその欲求を外のお店で発散して貰うことも大切なのだ!


 娼館はダメ? だったら自分が全部する? 愚か者! そんなことをすればルッテばかり不満が溜まるだろう? その不満をどう発散する気だ!

 えっ? 弓矢に乗せてドラゴンを狙い撃つ? あれほど良い的は無い? 殺した分だけ褒められるから……誰かこのおっぱいさんにお医者さんを。


 で、ノイエさん。そっちでこっそり頷いてない。それと捲し上げたスカートは戻しなさい。今夜帰ったら膝枕してね。


「そうです。思い出しました」


 唐突におっぱいが何かを思い出して胸の前で手を打った。


「この胸が大きくなり出した頃から私、毎日100射をフレア先輩から命じられて」


 嬉々としてルッテが語る。


 折角の祝福があるのだからとフレアさんがルッテに遠距離からの狙撃を強く勧めたらしい。

 結果として毎日のように的を射抜き続け、気づけばおっぱいさんのおっぱいはおっぱいなことになったとか。


「あ~。何か聞いたことがあるな。胸を大きくするならその部分の筋肉をってヤツでしょう? でもそれって胸筋が肥大化しているだけで胸は大きくなってないよね?」

「ですね」


 ルッテも素直に認めた。

 あっちの死体安置所で安置されている貧乳共が一瞬動き出したけど気のせいだったっぽい。

 そんな簡単に胸は大きくならないのです。


「それはそうとアルグスタ様」

「ほい?」


 何かずっとおっぱいな話ばかりをしている。

 最近はおっぱいと猫ばかりだからか? 猫もおっぱいも悪くは無いんだけど、そろそろ美脚が欲しい。それかまだ見ぬ新しい養分が欲しいかな?


「いつから西部に行くんですか?」

「それな」


 忘れているわけではない。待機中なだけだ。


「それな、じゃなくて決めてくださいよ~」

「何で?」

「だって隊長もモミジさんも居なくなるんですよね?」


 確かにその通りだ。だからこの雨期に行くしかない。問題は気温は下がって来たがまだ雨が少ないのが今年の雨期の特徴だ。

 これだと晴れたりすればドラゴンが湧く。アイツらはボウフラか? タケノコか?


「小隊の方だって色々と休みの手配をしないといけませんし」

「まあ最悪はお前が居るから大丈夫?」

「だから私の場合は固定砲台なので無理ですって」


 その固定砲台を使用すると小型ドラゴンまで倒せるようになったルッテを『ドラゴンスレイヤーに認定しよう』と一部貴族たちが騒いでいるらしい。

 現状この国に所属しているドラゴンスレイヤーは僕とノイエだ。モミジさんとオーガさんは友好国のドラゴンスレイヤーであり、何かあれば所属国の方が優先される。


「それにドラゴンスレイヤーって中型を1人で倒せる人物が得られる称号のはずなんだけどね~」


 僕は大型ですら倒せるけどね。何せドラゴン相手にだけは最強の祝福ですから。


「貴族の人たちはそのくくりを捻じ曲げて」

「いつもの手段か」


 欲に目が眩み……でもルッテって一応馬鹿兄貴が後見人だよな?


「お前をドラゴンスレイヤーにして何を企むんだ?」

「えっと……第二小隊です」

「うわ~」


 本当に貴族は馬鹿ばかりか?


「分かった。馬鹿兄貴と組んでその話は潰しておくよ」

「助かります」


 ペコペコとルッテが頭を下げて来る。


 本人曰く、監視の仕事が忙しいから隊長などしたくないそうだ。

 それにノイエからドラゴンを奪えば……僕も気づきお嫁さんを見る。


 ぶっちゃけそれは自殺行為だ。

 ドラゴン退治を楽しみにしているノイエからそれを奪う? 下手したら爆発するよ?




~あとがき~


 さらっと主人公が巻き戻っています。

 何がどうしてこうなったのかは…やった人物しか分かりませんけどね。


 ルッテと主人公のおっぱいトークだけの回でした。実は…気力と体力の限界です(泣)

 この手の馬鹿話を書き出した時は作者が死にかけていると思ってください。

 馬鹿話って脊髄反射で書けるから…苦し紛れなんです。


 今週仕事がトラブル続きで…睡眠時間をどれほど削れるか生活に突入しています。

 そろそろ投稿落とすかも? 現状毎日が綱渡りなので…




© 2022 甲斐八雲

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