世の中はおっぱいだけでは無いのです~!
ユニバンス王国・王都王城内アルグスタ執務室
「私は言いたいです~! 世の中はおっぱいだけでは無いのです~!」
ソファーの上に立ち拳を突き上げたチビ姫の言葉に貧乳同盟の面々が拍手を送っている。
どうやら盟主はチビ姫らしい。構成員はクレアにポーラにコロネだ。ただコロネはまだ本当に幼いのでいずれ裏切者になる可能性がある。
それをミネルバさんとチビ姫の専属メイドであるレイザさんの2人が生温かな目で見守っている。あれは保護者の目だ。
メイド服越しだから判断に悩むがミネルバさんの胸は平均サイズだ。
むしろ生身を晒しているレイザさんはあの同盟に加わることができるだろう。本人が胸のことなどまったく気にしていないっぽいが。
「アルグ様」
「ん?」
昨日ホリーにしてあげた膝の上抱っこを本日はノイエにしてあげている。
時折甘えてきたり、キスしてきたりと仕事に集中できない。でも僕から止めることは無い。何故ならノイエが可愛いからだ。
「巨乳なんて邪魔なだけです~!」
構成員たちからの拍手にチビ姫が調子に乗りまくりだ。
「あれ、なに?」
「ただの僻みだな」
事実だろう。だがその現実を受け入れられない者も多く居る。
まだ育つと自分に言い聞かせて……チビ姫たちが僕を睨んで来た。
「聞き捨てならないです~! 撤回を求めるです~!」
盟主様は激おこだ。
「ノイエ」
「はい」
ワンピース姿のノイエが僕から離れて床に降り立つ。スッと一瞬でチビ姫の元に移動して……チビ姫を谷間に埋めるようにして抱きしめた。
ジタバタと藻掻く盟主様も次第と静かになって、最後はすすり泣く声だけが響いて来る。無様だな。
「……それができると世の男性は結構喜びます。知っておくと良いよ」
追い打ちがてらそう言いながら、僕もうんうんと頷く。
あれは良い物だ。パフパフは世界を救うのだ。あとギャルのパンティーか。
「……がふっ」
ノイエの拘束から解き放たれたチビ姫がソファーの上に崩れ落ちた。
必死に手を動かし残り少ない気力で何やら文字を綴る。食べていた赤い木苺ケーキのソースでダイイングメッセージだ。白いお皿の上に『やわらかかった』と。
「王妃様~!」
ガクッと力尽きたチビ姫を年長者であるクレアが抱きしめ、涙ながらにノイエを見る。
「どうしてこんな酷いことを!」
「現実だから?」
「こんな酷い現実なら私は知りたくないっ!」
何故か寸劇が始まったので仕事の手を止めて眺める。
「胸の大きな人はいつもそう! 『重い』だの。『肩がこる』だの……そんなことを言われて体験したことのない私はどう返事をすれば良いんですか! 『軽い』とか『肩なんて仕事でしかこらないし』とか言えば良いんですか! それで納得してくれるんですか!」
涙ながらに物凄い心の声を吐き出している。
「知ってますから! 男の人は口では色々と言ってても、結局は胸を見るんです! イネルだって時折胸の大きな女性が居るとチラチラとそこを見るんです! 何なんですか! 巨乳って勝者の証なんですか!」
書類の束を抱えて戻って来たイネル君が回れ右して去って行った。
今はそれが良い。君の奥さんも色々と不満をため込んでいるっぽいから全部吐きださせた方が良い。
「私だって自分の腕で自分の胸を抱えてみたいです!」
「こう?」
「……はうっ!」
持ち上げるようにノイエが自分の胸を抱え込み、それを見たクレアが木苺のソースを吐血代わりに吐き出して崩れ落ちた。
ノイエさんの天然攻撃は本日も威力十分だな。
「ねえさま。あんまりです」
「むぅ」
同盟の仲間を半数喪い……違った。いつの間にかにコロネも静かに逝っていた。
きっと生々しい大人の会話に思考が付いてこなかったのだろう。
仮に全部理解していたら、僕はまだ後継問題で大荒れ状態のブルーグ家に乗り込んで、コロネに変なことを教えた者たちを全員殴る。
あれはリアクションが面白いから、悪魔と協力してツンキャラに育てていくと誓ったのだ。
必要なら精神支配系の魔法も辞さないとあの悪魔も言っている。本当に悪魔的な発言だけどな。
唯一の生き残りであるポーラが姉に食って掛かる。
「ねえさまにだってちいさなころはあったはずです!」
正論だ。誰しもスタートは無乳から始まるのだ。
「今はこの大きさ」
「ぐっ!」
過去を振り返らないノイエのカウンターにポーラは踏ん張った。これもまた正論だ。
ダメージが膝に出ているが流石はポーラだ。踏ん張っている。まだ戦える。
「失礼します」
「ん?」
その声に視線を動かすと、私服姿のおっぱい……ルッテが居た。
相変わらずばるんばるんと巨大な物を暴れさせて歩いている。
「先日のお礼に両親がアルグスタ様に旬の果実をと」
「お~」
大きな藤の籠にこれでもかと果実を入れてルッテは運んできた様子だ。
果実の類はいくらあっても困らない。ノイエを果樹園に放したら全て平らげるかもしれないと恐怖するほどのデザート好きだ。一番の好物はお肉だけれど。
「で、どうかしたんですか? 視線が」
両手で籠を持っている都合ルッテは僕らの視線から逃れられない。
全員が左右の腕によって中央に寄せられた巨大な脂肪の塊を見ている。あれはもう凶器だ。
「ルッテさんや」
「はい?」
「君って人は本当に酷い女だね」
「唐突に何ですかっ!」
怒るな怒るな。ただタイミングが悪かっただけだよ。
貧乳同盟の生き残り……ポーラもついに崩れ落ちた。もうダメだ。完全に腰から砕けて泣いている。
「本当にどうかしたんですか?」
何も分かっていないルッテは惨劇に目を向け小さく首を傾げた。
「私も子供の頃は小さかったんですよ?」
余り物のケーキを食べながらおっぱいさんが当たり前のことを言っている。
そりゃそうだ。子供の頃から爆乳していたら恐怖だ。リグみたいにアンバランスな感じも悪くないがあれはあれでやはり怖い。楽しむ分には最高だが。
「王都に来てから色々と美味しい物がいっぱいあって、たくさん食べたらちょっと太ってしまって」
照れながらルッテはケーキを3つほど食す。
今日の君はお昼ご飯とか食べてないの? 食べたの? 食後のデザートでケーキ3つとか食べすぎでしょう? デザートも別に食べたの? ならそれは何? 話ついでに軽く摘まんでいるだけ?
対抗できるのはノイエだけな気がするのでフードファイトはお嫁さんに任せる。
ノイエはホールケーキをあっさりと退治して今は焼き菓子をポリポリと食べていた。甘いのとちょっと甘いのを交互に食べるのが良いらしい。
「それに祝福持ちって大食漢じゃないですか?」
「まあね」
確かに納得だ。
ルッテの場合は消耗が激しい祝福らしく使用すると常に何か食べ続ける。祝福を2つ持っているノイエに至っては普段からバクバクと食べまくりだ。
意外と小食なのはポーラと僕か。僕らの場合は常に祝福を使わないから……気づいて視線をコロネに向ける。あれも祝福持ちだ。
「コロネって普段からたくさん食べるの?」
「たべません」
腰砕けになっているポーラをミネルバさんが後ろから支えていた。
優しい先輩に支えられているポーラは気づいていない。先輩の今の表情は他所で公表できません。お巡りさん案件です。
「その子も祝福持ってるんですか?」
「あ~」
ルッテの問いに僕の視線が泳ぐ。
いつも通りに発言してしまったが、コロネの祝福は秘密事項だったな。
この場に居る部外者は……おっぱいとレイザさんか。
「悪魔~」
「……この借りは大きいわよ?」
瞳に模様を浮かべたポーラが宙に指先を動かし、それを両手で挟むようにしてパンと叩いた。
ピリッと耳の奥が痛んだがそれだけだ。特に変わった様子はない。
「……それに祝福持ちって大食漢じゃないですか?」
「そうだね」
ルッテがまた同じことを質問して来る。
別に時間が戻ったわけではない。最新の記憶を悪魔が消してしまったのだ。本当に恐ろしい。
さて。次はミスらないようにしないと。
「でも僕もポーラも少食なんだよね」
「そうなんですか?」
レイザさんが切り分けて来た果物にルッテが手を伸ばす。
半分以上はノイエの前だ。嬉しそうにアホ毛を揺らして食べている。
「僕なんて普通だよ。一番食べるのは……あれ?」
「どうかしましたか?」
洋ナシっぽい果実を抓むルッテの言葉を無視してちょっと考える。
僕が一番食べる時って……『滅竜』を使ったあとでは無い。たぶんの夜の営みの後だ。
「あれれ?」
~あとがき~
着実にメンバーを増やす貧乳同盟w
つかアルグスタの執務室って本当に何する場所なんでしょうね?
おっぱいさんの言葉でアルグスタはある事実に気づきます。
実はこの主人公…一番食べるのは夜の営みの後なんですよね。
その理由は? 次回に続く?
© 2022 甲斐八雲
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