どうしてこうなった!
ユニバンス王国・王都貴族区内ハルムント邸
生々しい手術とか見たくないので別室でのんびり過ごすこととする。
僕的にはそのつもりで居たが常に叔母様が見つめて来るので……何か御用でしょうか? 北部ゲートの開発に一枚噛みたいと? あれは王国の国家事業でして、知っているから言い訳は要らないと? へいへい。ですがウチが強奪した権利なのでそこまで売れませんよ? 何より叔母様は僕に対して何を支払えるんですか?
ぶっちゃけお金なんてノイエが全力で楽しんで来るだけで増えるのでそれほど困っていません。
はい? 新しいメイドをウチに派遣する?
どうか許してください。これ以上メイドさんが増えるのは困るんです。ほら普通メイドさんって年頃になったら結婚相手を見つけて退職していくものじゃないですか? 不思議なことにウチのメイドさんたちはノイエとポーラに操を立てているので出て行かないんです。
それでも頑張って屋敷の警護に居る近衛騎士とくっ付けたりもしたんですが、結婚しても辞めないんです。最近は旦那になった騎士さんたちから『子作りが出来ないのですが……』というクレームが多数で困っているのです。
はい? それを解決するためにメイドさんを派遣する? 妊娠中は休ませて子育てが終わったら復帰するようにすればいいと? あ~産休か。その手があったか。
で、どうしてメイドさんをウチに? ハルムント家で育ったメイドさんは優秀で引く手数多だと聞いてますが? 優秀過ぎて雇える貴族がそうは居ない? 鍛えすぎるのも考え物?
叔母様。ぶっちゃけウチにはポーラとミネルバさんが居るので武力は十分なのですが?
治療? 間に合っています。
魔法? ウチには魔女を筆頭に揃っていますが?
問題は向こうから一方的にこっちに来るので常に居ないんですけどね。
今の舌打ちは何ですか? さては魔女の技術を盗もうとか企んでますか? 無駄ですよ。その辺は我が家の絶対的守護神であるノイエとポーラが許しませんから。
ノイエと敵対したいのであれば、無茶は止めませんが?
だったら普通のメイドさんを雇って欲しいと……普通のメイドさんってこの屋敷に居るんですか?
居るんだ。初めて知りました。
で、普通の範囲ってどの程度ですか? プロの暗殺者程度なら打ち負かすと……それのどこが普通なのですか? ここだと普通?
異常が普通のハルムント家理論を忘れていましたね。
まあ数人なら雇い入れますが……人選はポーラに一任で良いですか?
ウチのメイドさんを実質支配しているのはミネルバさんですけど、そのミネルバさんを支配しているのがポーラですから。
ポーラの前ではあのミネルバさんも借りて来た猫のようになるのです。
で、メイドさん数人をウチに吐きだして、一枚噛もうとして……何を企んでいますか? ふむふむ。食堂ですか? 酒と宿も提供する……そこで実地の訓練をさせると。悪くないですね。でしたらメイド服のまま営業しましょう。
落ち着いて聞いてください叔母様。メイドさんを雇えるのは一定の稼ぎがある裕福層な人たちです。ですから一般の人から見れば高値の花なのです。それもあの有名なハルムント家……ここはパパンに言って王家御用達のメイドと言う肩書を認めさせましょう。
陛下に持って行くと頷かないですから、前王に認めさせてなし崩しでお兄様を口説くのです。大丈夫。あのエロ爺ならメイドさんの尻を触らせてから叔母様が殴り込み……挨拶に出向いて失礼をちょっと追及すればあっさりと認めるはずです。未婚の女性のお尻を触れる大罪を叔母様が追及するだけです。
相手が認めたらこっちの勝ちです。一筆貰って義母さんに告げ口してやれば良いんです。あの夫婦は年甲斐もなく仲良しだからそれぐらいの出来事なんてちょっとした刺激にしかなりませんよ。
義母さんが暴れると鎮圧するのが面倒臭い? だったらエクレアを抱かせてから告げ口すれば良いんです。
ってどうしてその手があったかみたいな顔をしているんですか? 叔母様なら……子供を道具にするのは好きではないと?
意外と叔母様って……悪口じゃないですから。本当に良い人なんだなって思っただけですから。
話を戻して、王家御用達のメイドさんが居る宿屋兼酒場兼食堂として大々的に宣伝するんです。これは武器です。そして働くメイドさんたちに完璧な仕事をさせるのです。
理由ですか? 売り込みになります。ハルムント家のメイドさんが欲しい貴族はその店に行けばどんな人が居るのか、容姿から雰囲気から自分の目で確認できます。雇いたければ直接交渉すれば良いんです。最終的な決定権は叔母様でしょう? 向かわせたくない相手にはのらりくらりと言い訳をし、向かわせたい相手ならそりゃご自由に。
何より一般の人たちも働くメイドさんが見れるのでこれは武器になります。絶対に売り上げに貢献します。出来たら現在開発を進めている演芸区の方にも出店していただければと……同時だと資金が足らない? ゲートの方を優先したい? ご心配なく。出店して頂けるのでしたら無利子無担保で融通します。はい。ハルムント家のメイドさんは絶対に儲けを産みます。大丈夫です。
少し考えたい? 理由は? 派遣するメイドさんの選抜を行わないといけないから?
まあ建物も作らないといけないですしね。僕は構いません。良い返事を待ちしています。
握手で交渉が終わった。
実に素晴らしい時間が……あの暗殺っ子もウチで預かれと? ここでメイド見習いとして育成して欲しいんですけど? ミネルバさんとポーラがどんなメイドを育てるか興味がある?
ん~。ぶっちゃけ僕としては構わないんですけど、ミネルバさんとポーラの返事次第ですかね。
ミネルバさんはあっちで頷いているので構わないでしょうが、ポーラはほら……さっきあんなに怒っていましたしね。
もう懐いているから平気? それはポーラの返事を待って、聞いて来た? 構わない?
だったら良いかな……ただし見習いは1人までで。後は育ったメイドさんを派遣してください。
後ミネルバさん。結婚しているメイドさんたちに子作りを励むようにと。妊娠しても辞めろとは言わないから。
ちゃんと子育てしてから復帰できるように調整とか出来る? 流石です。
それと迷惑じゃなければ生まれた子供をウチの屋敷に連れて来て働いても良いように、子供用の離れを作ろう。
どうしてって? 子供が居ればノイエが喜ぶし、未婚のメイドさんたちも育児の機会を得て勉強できるでしょう? はい。ノイエが喜ぶと言う部分が僕の気持ちの大半ですね。
良いんです。ノイエが妊娠しにくいので少しでも気晴らしになってくれればと僕は思っています。だから叔母様、今メイドさんに耳打ちした『側室候補』は要りません。最悪ポーラに良い人を見つけてその人との間に子供が出来たら、そっちにドラグナイト家を継がせれば良いんですし……衛生兵! ミネルバさんが膝から崩れ落ちて動かなくなった!
そんなにショックか? でもポーラだって将来的には結婚して子供を産んだりするはずだから、
「私は兄様との間に子供を設けますので結婚はしません! 兄様が側室でも何でも良いので娶ってくれるなら結婚もしますが、出来ないならしません。私は兄様との子供を産みます」
扉が開いて飛び込んできた小さなメイドが……ポーラがはっきりとした口調でそう宣言すると、軽く一礼をして廊下に出て扉を閉じた。
ミネルバさんの容体が悪くなったのか、医療に長けたメイドさんたちが慌ただしく彼女を運んで行く。
「アルグスタ」
「はい」
叔母様に呼ばれ僕は自分でも引き攣っていると分かる顔を相手に向けた。
「幼子とは言え女にあそこまで言わせたのです。責任は取るべきだとわたくしは思います」
「……答えは保留してもうしばらく考えたいと思います」
「そうですか」
ニコリと笑う叔母様の目が全く笑っていないのですが?
「良い返事を聞けるものだと期待しています」
あれ? ノイエも承諾していて、叔母様からも圧力をかけられ……これってもう避けようが無いのか? 無いのか? 無いよね?
どうしてこうなった!
~あとがき~
説明回と言うか主人公が延々と語り続ける話になってしまった。
アルグスタとしてはメイド喫茶的な物を作りたいだけなんですけどね。
間違いなく客は入るはずですし、何より実地トレーニングにもなるはずです。
コロネはポーラの弟子として引き受けることになりました。どうしてこうなるの?
© 2022 甲斐八雲
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